クール

60年代生まれ。上海→23年帰国。サラリーマンのようなもの。中国語ヘタ。映画、演劇、本…

クール

60年代生まれ。上海→23年帰国。サラリーマンのようなもの。中国語ヘタ。映画、演劇、本、音楽、グルメ等、人より多少詳しいジャンルがあります。

最近の記事

「ラブリセット 30日後、離婚します」の多幸感を邦画はもっと学ぶべきなのだ。

そりゃ韓国映画のほうが信用できるんだよ。 この映画でまず、へえと思ったのは「ブルックリンでオペラを」と同じ楽天×松竹映画だということ。公式サイトの作り方が同じなので、発注先はきっと社内なんでしょか。洋画メジャーが苦戦してる中、いろんな座組で輸入が行われてるね。 「ラブリセット」なんてのは、韓流ドラマにありそうなタイトルだが、原題は「30일」。英語題は「LOVE RESET」。くっつけてそのままな邦題やん。 カン・ハヌルとチョン・ソミンのカップルが劇的な結婚をするも関係は

    • エログロナンセンスで記憶に焼き付いて離れない「インフィニティ・プール」。

      「インフィニティ・プール」はエログロに加えてアホなテイストがそろった、“最近こういうのなかったよね”なホラー映画。 監督がクローネンバーグの息子ブランドンで、血は争えないことを証明してら。 「アンチヴァイラル」「ポゼッサー」など独自の世界観を持つ作品でカルト的人気を集める鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作。旧作見てないや、ごめん。 架空の小国・リゾート地の島にやってきた売れない作家ジェームズと金持ち家庭出身の妻エムは退屈な休暇を過ごしていた。ある日ジェーム

      • 「パスト ライブス/再会」は監督の自己愛が強くて、ちょっと受け入れがたかったこと。

        現代アメリカ映画界の信頼ブランドA24。だが、ここの作る映画が毎回傑作ってわけじゃないんだってことを、「パスト ライブス/再会」はばらしてしまった。 表向きは「初恋の相手と24年後に再会する」→「お互いの心はどう動くか」→「もしあの時こうしていたら…という誰にでもある経験が引き出される」→メロメロな話である。 ま、それはそれでいいんですけど。 だが少し裏読みをすると… 「韓国からトロントに移民した監督の実体験を基にして」→「彼女の一方的な思いを物語にした」ものだ。主人公の

        • 「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」がぶっ刺さって泣いた(60歳です)。

          「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」を観にテアトル新宿へ。見回すと、同年代のおじいさんばっかりだ。 若松プロ黎明期を描いた「止められるか、俺たちを」の続編で、今度はシネマスコーレの設立と運営にスポットを当てた。若松孝二に引き寄せられる木全純治、井上淳一らの悪戦苦闘の青春群像が主軸だ。 時は1982年…あ、もうこれだけで、僕はタイムスリップさせられる。冒頭から…こう…なんというか、胸キュンなのだ。気持ち悪くてすみませんが、ほんとにキュンキュンしたんだよ。18~9歳の一

        「ラブリセット 30日後、離婚します」の多幸感を邦画はもっと学ぶべきなのだ。

        • エログロナンセンスで記憶に焼き付いて離れない「インフィニティ・プール」。

        • 「パスト ライブス/再会」は監督の自己愛が強くて、ちょっと受け入れがたかったこと。

        • 「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」がぶっ刺さって泣いた(60歳です)。

          「落下の解剖学」を観た後で慌ててジュスティーヌ・トリエ「愛欲のセラピー」を追いかける。これがまた面白くてさ。

          ジュスティーヌ・トリエの「愛欲のセラピー」(2019)は「落下の解剖学」の前作にあたる。「落下の解剖学」と同じく夫アルチュール・アラリとの共同脚本だ。この夫婦、家ではどんな感じで仕事してるんだろ。 作家で精神科医の主人公シビルは、カウンセラーとして多くの顧客を持っていた。シビルはしばらく小説を書いていなかったが、患者の話をモデルに執筆を開始。そのためにカウンセリングをやめてしまう。しかし、患者の一人、女優マルゴはメンヘラ気味で、どうしてもシビルに診てほしいと懇願する。やむな

          「落下の解剖学」を観た後で慌ててジュスティーヌ・トリエ「愛欲のセラピー」を追いかける。これがまた面白くてさ。

          Netflix版「三体」が高濃度でスタート。中国SF事情を踏まえることで、この企画の面白さが見える。

          Netflix版「三体」がようやく登場。 とりあえず開けてみたら…なんとも驚きのクオリティで、一気見してしまいました。 とはいえ「三体」はだいぶ前の本だ。急に注目浴びてもナー、と言うのが本音だよ。 そもそも劉慈欣の小説が中国で本になったのが2008年。ケン・リュウによる英訳が2014年で、シリーズを含めバラク・オバマが愛読してるって話が2017年。そこから「なんかすごいSFが中国にあるらしい」と世に響いた。日本語訳は2019年にようやく出て、僕もこの時初めて読んだ。この頃

          Netflix版「三体」が高濃度でスタート。中国SF事情を踏まえることで、この企画の面白さが見える。

          「Dune: Part Two」初見で思っちゃったのは内容より上映フォーマットのことだった。

          「Dune: Part Two」(デューン 砂の惑星PART2)を観た。 邦高洋低アニメ独走の現代興行からすると、SF大作洋画がドーンと公開されるのはうれしい。 でもさ、この映画には「上映サイズ」にまつわるモヤモヤがある。正解出にくいので難しいのね。 本作のアスペクト比は劇場によって分別されていて、最も制作者の思いが伝わる(と想像する)のは1.43 : 1のIMAX GT Laserだ。昔のテレビのような四角い画面サイズってことだ。で、これがスクリーンいっぱいに広がる劇場

          「Dune: Part Two」初見で思っちゃったのは内容より上映フォーマットのことだった。

          「落下の解剖学」のとんでもない面白さに興奮を隠せない。

          今年は面白い映画が続々公開されてて興奮しまくっているのだが、2月にしてベストに出会ってしまったよ。 「落下の解剖学」。これも劇場が少なくて、調布までいきました。シアタスは駅前で手頃だけれど、ちょっと狭すぎるな。 公開週末、土曜の夜の回で、100席弱のスクリーンが7割くらい埋まってた。 フランスの雪に囲まれた山間の山荘で暮らす親子。両親はともに作家。息子は視覚障害があり、はっきりとは見えない(らしい)。ある日、父親が三階から落ちて死亡しているのが発見される。自殺か事故か他殺か

          「落下の解剖学」のとんでもない面白さに興奮を隠せない。

          イ・ジョンジェの「ハント」をひと足早く観たら奥さんが不機嫌になったこと。

          機内で韓国映画「ハント」を見つけてラッキー。 イ・ジョンジェが脚本監督した2022年公開作品。カンヌでも上映された話題作だ。日本では9月公開だそうだ。奥さんが観たくてたまらん、と言ってたのを思い出す。 冒頭、「これはフィクションです」と断ってから、いきなりワシントンで韓国大統領襲撃のあり得ない大立ち回り。この事件を機に、80年代、旧KCIAの安全企画部で、海外班と国内班では互いに北のスパイがいると密告される。こりゃ大変、組織の全員がスパイ容疑者かもしれないと、猛烈な監視合

          イ・ジョンジェの「ハント」をひと足早く観たら奥さんが不機嫌になったこと。

          男の花道映画なんだから拍手で送ってやろうよ「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(文句はあるけど…)

          「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(Indiana Jones and the Dial of Destiny)」を観る。 なかなか複雑な気持ちの残る映画であった。 ネタばれ配慮せずに書いてるんで、ごかんべん。 そもそもそんなに期待していたわけではないでしょ。だって凡作「クリスタル・スカル」で一旦終わったと思ってたじゃん(これ以上作らないでほしい、晩節を汚さないでほしいって)。 それでもなお企業側は、80歳を超えたハリソン・フォードを「先輩、これで最後にしますんで」「

          男の花道映画なんだから拍手で送ってやろうよ「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(文句はあるけど…)

          「キネマの神様」に違和感を感じたのは僕だけだろうか。これはコロナ禍で映画業界が受けた問題作なのではないか。

          「キネマの神様」から受けためまいのような感覚は、いったいなんなのだろう。未だに引っかかってる。これは近年稀な不思議な体験だった。 フィクションとは何なのか、映画とは何なのか。作り手はこれをどこまで考えていたのか、そもそも狙っていたのか。空中分解しそうなプロジェクトをメタ構造にしたことで、なんとか形は整った。 でも、これって松竹100周年の記念映画なんだよな。 企画段階は華やかだ。①山田洋次監督作品②蒲田撮影所を舞台③映画を愛する人たちへの讃歌④人気作家原田マハの小説が原案⑤

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          ドキュメンタリー「キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性」が、僕のハリウッド感を変える。

          WOWOWで放映していた「キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性」を観る。2022年に日本公開されたが、製作自体は2012年。なので、インタビューを受ける面々に物故者が多いのがちょっと悲しい。あと、パージされる前のウッディ・アレンがすごく元気に語ってる。 原題は“Casting By”だ。タイトル表示時にCasting Directorと表記して、わざわざ訂正するところに、本作のテーマがあるのがわかる。 配役という仕事。その先駆者(というか革命的行動力の

          ドキュメンタリー「キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性」が、僕のハリウッド感を変える。

          ノーマスクのパーティ形式「エミー賞」授賞式を見ながら、アメリカはコロナに勝ったらしいことを知る。

          9月13日の午前中、第74回エミー賞授賞式をU-NEXTで。同時通訳も一生懸命やってくれてるけど、固有名詞の言い間違えを聴くのが苦手なので、週末に字幕がついたら再見しよう。やるね、U-NEXT。 授賞式はLAのマイクロソフト・シアター。3年ぶりのパーティスタイルでノーマスクなのがすごい。アメリカはコロナに打ち勝ったんだ。いや、ほんとすごい。一応出席するにはワクチン接種や陰性証明をしなくちゃいけなかったらしい。それでも、一人だけビル・へイダーがマスクをしているのが目立つ。彼は

          ノーマスクのパーティ形式「エミー賞」授賞式を見ながら、アメリカはコロナに勝ったらしいことを知る。

          「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」がアメリカ映画の好きなおっちゃんに刺さりまくる理由

          「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」を10話一気見。やるね、U-NEXT。 僕のやってる商売目線で言うと、「ゴッドファーザー」公開50周年のアニバーサリー企画の一環だ。生存するスタッフ・キャストが集まってのセレモニーや、4K化で劇場公開やパッケージ発売に加え、4月にパラマウント+でこの製作裏話リミテッドシリーズが配信された。 主役はプロデューサーのアルバート・ラディ。ドラマのクレジットではAlbert S.Ruddy's experience of makin

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          大ヒット「トップガン マーヴェリック」はノスタルジアビジネスの最高峰だった。ついでに、テンセントピクチャーズ降板の影響も考える。

          “前作”「トップガン」は1986年の公開。ブラットパックのひとりだったトム・クルーズが、世界的大スターに上り詰めた出世作だ。MTV全盛の映像&流行歌と、シンプルかつアメリカ最高なノリは、かぶれやすい日本にも輸入され、87年の正月映画として大ヒットした。かくいう僕も新宿プラザ劇場で爆音を体感し、“かっちょいい”と感じたクチだ。当時は完全無欠なデートムービーでもあった。 「トップガン」はパラマウント映画の記録的ブロックバスターとなり、ビデオソフトもバカ売れ、いまだに愛され続けて

          大ヒット「トップガン マーヴェリック」はノスタルジアビジネスの最高峰だった。ついでに、テンセントピクチャーズ降板の影響も考える。

          旧正月映画「这个杀手不太冷静」は三谷幸喜「ザ・マジックアワー」のリメイク。

          旧正月映画「这个杀手不太冷静」(Too Cool To Kill)を観る。 大ヒットである。公開2週間で21.5億元(390億円)を超えたっていうんだもん。びっくりだ。興収が1億元超えるたびにキービジュアルが更新されるえげつないプロモーションもやってる。(添付参照)。このアイデアは真似してもいいんじゃないか? 今年の正月映画は、もう1本うわ手があり、戦記物「长津湖之水门桥」(朝鮮戦争が舞台)は35億元(630億円)の特大ヒットだ。こっちはまだ見れてないや。 で、今回の「这个

          旧正月映画「这个杀手不太冷静」は三谷幸喜「ザ・マジックアワー」のリメイク。