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要するに平和なんだな

小説吉田学校を読んでいる。
こどものころ書店に並んでいるのを見て興味が湧いた。
理由はわからない。
クラスで流行っていた、「たぬき学校」に通じるもの、と思い込んだのかもしれない。
古本屋の店先に並んでいたのを見つけて、八冊セットの文庫本を購入したのは、20年くらい前だろうか。
細川政権のころだった。
職場で意見を求めるときに、ペンで人を指すのが流行っていた。

購入して、すぐに読みはじめた。
吉田茂が失脚しそうになり、自由党の幹部会で田中角栄が、そりゃおかしい、と発言して再起するくだりから始まる。
なるほど、こうして田中角栄は名を上げるのか、と思ったものの、なかなか総裁にならない。
自由党吉田政権から自民党田中政権まで、こと細かく描かれ、時間が進まず佐藤首相で足ぶみする観がある。

購入した直後も、このあたりまでは読み進めた。
ペンでこちらを指す後輩に感想を聞かれ、なかなか佐藤が辞めない、と答えた覚えがある。
なかなか辞めない佐藤に嫌気するのか、この先は読まずに家の本棚に並べたままになっていた。

このところ、時間に余裕がある。
ふところに、余裕はないが。

もともと、新刊を買う習慣はほとんどないが、文庫版も新品を買うゆとりがない。
買ったものの読まずに置いておいた書籍もない、小説吉田学校を除いては。
ではちゃんと読んでみようかと手にとったのは、ちょうど安倍晋三の弔いが終わったころだった。

いうまでもなく、安倍晋三が撃たれたために、政局は混乱し始めた。
誰がどこからカネを集めようが、混乱する社会を整頓してもらえればよいと、個人的には思うけれど、なにか小事をほじくりかえしては、人をかやの外に押し出すことを繰り返しているだけに思える。

それなりの大人であれば、吉田茂が国会で馬鹿野郎と発言したことが発端で総辞職したことは知っている。
けれど、それが何期目だったか、まで覚えている人は少数だと思う。

読んでいても記憶に残らないのは、ぼくだけかもしれないが、当の吉田茂にとっても小事に過ぎない。
吉田首相は日米講和が重要課題であったし、交戦国と平和条約を締結し国際舞台に日本国を復帰させることが、歴代首相の命題だったと読み取れる。
少なくとも鳩山一郎は、そういう描かれ方をしている。

かたや現在。
もちろんドイツに勝ったことは賞賛されることだとは思う。
けれども、連日連夜そればかり注目していてよいはずがない。
宗教団体から支持を集めたら問題だ?ヒトが動くにも、人を動かすにもカネは要るんだよ、と居直るヤツが一人くらい現れてもいいと思う。

無理なんだろうな、大衆迎合社会だもの。

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