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獣の柱 Jun.9 [東京楽]

イキウメ『獣の柱』東京千穐楽。

散らかってる物を片付けて、家具を動かして、机を並べて、だんだんみんなが加わってくる。胸が熱くなったよ。
その間に桜と元旦那が交わしてる視線とかその変化とか。

「今でもその物語は必要なの?」
「だって答えのない問題ばかり」

「なんで?なんでなの?」
「分からない」
「分かろうとしてない」
「考えてる」

「できることを」
「できないと思うこともすべてやるの!」

「やっぱり、みんなと一緒に暮らすことはできないの?」

「帰りなさい。もうあなた方の役目は終わったんです。」

うーん…細部に渡って注意深く聴いてると突き刺さってくる言葉、他にもあったよなぁ…上演台本とDVD出たら買うわ。

あ!台詞じゃないけど一つ思い出した。
隠れ家で和夫と母の遣り取りを聴いていた望が、涙を流したよね。「君、泣けるんだ」とか島に言われてた。「いや、反応だ」みたいに応えてたけど。
『散歩する侵略者』のことも少し思い出してしまったけど。

桜は柱が見える人になったはずだ。望に変化を促されて。
島が一度、佐久間にそれを試みようとしてた?いや、あれは、目を見開く隕石モード発動の仕草をしようとしてたんだな。幸せにしてあげようと。

部長と佐久間に共通する、とにかく前へ進もうとする力。しんぺーさんの佐久間の苦悩の表情も垣間見えたよ。

冒頭&ラストシーンの音楽もいいけど、みんなで建設してる時の音楽が泣ける。オリジナルらしい。弦楽四重奏。

何もしないということを痛烈に批判されている。苦しい。
『獣の柱』と『木の上の軍隊』にはだいぶやられてる。
いや、でも『獣の柱』に関して言えば、何かができるとか奢ったことを思うなとも言われてる。苦しい。

冒頭の望の言葉、今までで一番強かったように思う。真正面で喰らったからかなぁ。
「閉じ込められてしまった」と言って、2001年の物語が始まる。
つまりここが本当のラストシーン。
「閉じ込められてしまった」…だから?どうする?…ここからが、観客に委ねられた、この物語のその後。
望たち…隕石の人たちは「伝えたいこと」を通訳して人類に伝える人。

やっぱね、演劇の人は隕石関係者だと改めて思う。コミュニケーションを必死に試みてるんだ。
こういうのが好きなんだろ?って投げつけられるエンタメだけに目を奪われている場合ではないのだ。
望は何か口から吐き出してそれを桜に取り込ませ「変化を促した」けど、私にはそこに "光る球体" が見えた気がして。
"光る球体" を桜はやっぱり口から呑み込んだように記憶してるんだけど、これには "言霊" みたいなイメージがあるからかもしれない。私の脳がそのように補正して記憶してるのかもしれない…なんて。

望が恐竜のフィギュアを見て慄く様子、よりハッキリと出すようになってた。その直後に泣き崩れたりしてたかな。
そこで「お兄ちゃん!」と呼び掛けられて再び立ち上がり、桜に「変化を促す」行動をとる望。それから部長たちへ向けカッと目を見開いて隕石モードを発動した瞬間があった。
「私たちは家族。だから、大丈夫。」
あの状況で、望が帰って来た、ってただ素直に喜べるのは、妹である桜と、友人である部長だから。また3人でここに居ることが奇跡だって、すごく嬉しそうで幸せな空気がそこにはあった。理屈じゃない繋がりってあるんだよな。

カテコで浜田さんの笑顔が見れて良かった。
サードコール、スタンディングできて良かった。

あー2年前『プレイヤー』の記事で前川さんこんなこと言ってる…
「お客様には、フィクションが描き出す“現実を揺さぶる力”のようなものを想像し、感じて、楽しんでいただければ幸いです」

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