私の昭和歌謡92 愛の化石 1969
期待して女優の歌を聴きたればルリ子は語るひたすら語るw
浅丘ルリ子。
目がぱっちりで、唇がぽっちゃり厚ぼったい、それはそれはの美人女優だった。カトリーヌ・ドヌーヴと並んだって負けない。日本人なのに。
当時、見るたびにほれぼれでしたよ。
「愛の化石」という歌謡曲にはものすごく期待感があった。どんな声で、どんなにチャーミングに歌うんだろうって。
だからこそ、失敗だ、と、落胆した。なに!この曲は!と衝撃を受けた。
曲のほとんどが「語り」
女優の歌う歌謡曲だからって、一風変わった歌に仕立ててヒットさせようっていう魂胆が嫌だった。
そりゃあ、ルリ子さんが「愛するって耐えることなの」と口にすれば、誰もが心を動かすだろうが、それは歌じゃない。
そして、この曲全体は、メロドラマの主題歌だ。それをBGMにして、ルリ子さんは語る。
「海の風の中で 耳をかたむけながら
小さくうずくまっていた 愛の化石」
この語りは、艶のある声で響く。それに反して歌声の方は、一枚扉の向こうで、そう、お風呂で歌っているような、くぐもった響きなんだ。
わざと低音ばかり響かせるように作曲したような、わざと独り言を歌うように作曲したような、もうめちゃめちゃ欲求不満になるような歌だった。
一回歌番組で聴いてから、この思い出を書くために聴くまで、一度も思い出したことはない。だから、聴いた途端、あの頃の感想が蘇ったw
さて、この曲をテーマに映画ができたという。観ていない。もし、それを観ていたら、寅さんのリリーまで嫌いになっていたかもしれない。
あんなに可憐なルリ子さんは、寅さんシリーズでは、気さくな歌手リリーの役で数回出演している。私は、「愛の化石」のルリ子さんより、リリーのルリ子さんが好きだ。
この前でも、この後でもなく、私のルリ子像は、リリーで止まっている。華麗な女優ではなく、流れもののリリーが一番好きだ。
婆さんになったルリ子さんのことは、全く知らない。知りたくない。銀幕のリリーだけで十分。
最後に、もう一度。「愛の化石」は失敗作だと思う。
【参考資料】
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