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#あたりまえポエム はコピーライターの教科書だと思う気がするかもしれない。

今売れてます!

あたりまえである。売れてないものを棚に置かれても消費者は買うことができない。なるほど。「売れてる」というのは「たくさんの人に買われてる人気商品だよ」ということなのか。でも1度疑問に思うと、POPに書かれた「今売れてます!」がヘンなヤツに思えてくる。

ドンキホーテ渋谷店に並んでいるお菓子を見ながら、キャッチコピーについて考える。ドンキホーテ、正確にはドン.キホーテらしいが、このお店のキャッチコピーをおぼえている人は多いだろう。

激安の殿堂

上京し、生まれて初めてドンキホーテに行ったときに見たこの言葉を強烈に覚えている。だからいまだに打ち合わせで「…それただのダジャレですよね」と言われてしまうくらい激しく安い言葉をつぶやいてしまうのだろう。ぜんぶドンキホーテのせいだ。でも、ドンキホーテのキャッチコピーが、

驚安の殿堂

に変わったことに気づいている人がどれだけいるのだろう?小説ドンキホーテの作者セルバンテスでさえ気づかないと言っても過言ではない。

「どうやったらカッコいいコピーがつくれるんですか?」

早稲田大学でコピー講座をやっているときに質問された。こういうよくある質問は、聞かれるたびにちがう回答をするようにしている。「セブンイレブンに行くことですね」「女の子にフラれることですね」それっぽいことはいくらでも言える。そのときの回答はこうだった。

「言葉のおしりに“だと思う”をつければいいんですよ。これはマジです。あと未来とかカッコイイ言葉を入れるとそれっぽくなります。早稲田大学は未来だと思う。ほら、っぽいでしょ?“だと思う”以外に、“気がする”とか“かもしれない”とかでもいけますよ」

どの学生も冗談だと思って笑ってたけど、よく考えるとマジメに言ってた気がする。言葉の仕事を崇高な職業だと思いすぎなのではないか。風車を大きな怪物とカン違いしたドンキホーテのように。

このぼくの回答をとなりで聞いていたのが『あたりまえポエム』という本の著者、氏田雄介氏である。

僕の隣に
君がいるとき
必ず
君の隣に僕がいた


(『あたりまえポエム』より)

氏田氏は、何を思いながら、ぼくのふざけた回答を聞いていたのだろうか。誤解を恐れて言いますが、ぼくは、コピーライターをたいした仕事だと思ってません。「いま何してる?」と聞かれて「いま生きてる」と答える小学生のノリを大切にいまも生きている。「100円あげる」と言って100円玉を上にあげるノリで気分をあげるのが仕事である。悪ふざけだと思われることもあるが、本人はユーモアのつもりである。

「この1行しかない。これが本物のコピーだ。」と思って、言葉を提案したことはない。(うわっ、それっぽいこと書いて、何かエラそうなこと言ってる)とじぶんでじぶんにツッコミながら言葉を提案している。でもそのくらいの距離感があるほうが、幅広い言葉の提案ができるのではないかと思う。『あたりまえポエム』は、「言葉ってたいしたことないからね。でもおもしろいよね」と語りかけてくれる。

あとがきの最初だけ引用します。

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「ここで立ち止まらないでください」

通勤で毎日利用する横浜駅のエスカレーターを降りると、
こんな注意書きが目に入ります。
事故を防ぐために掲示された何の変哲もない注意書きですが、
私はいつもこの言葉に背中を押されています。

「ここで立ち止まらないでください。君はここで終わるような人間じゃない」

そんな風に言ってくれている気がするのです。

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株式会社ユーモアという社名を考えたことがある。でもこれは、まじめなコピーライターが考えた社名なのだ。氏田氏に社名を考えてもらったら、こんな社名になった。

「噂の長谷川ですw」こっちのほうがユーモアがある。これは言葉にたいして距離をとれるからこそ思いついた発想だと思う。だからもし、株式会社ユーモアではなく、株式会社噂を提案できる人になりたかったら、

「あたりまえポエム」を読めばいいと思う。ちなみに、噂は英語でrumor。humor(ユーモア)とスペルが似ているらしい。

日曜日に出版記念イベントをやります。

君が来てくれたら、僕はそこにいる。
君の言う君は僕で、僕の言う僕は、君にとっての君なんだ。
たとえ世界が滅びても変わらないこの真実を確認しに来てくれ。

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