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stargaze shelterの音楽

 初めて聴いた曲に強く惹かれて、思わず立ち尽くしてしまったのはいつぶりだろうか。聴き終わった後もずっとその曲のことを考えてしまって、放心してしまうような、そんな経験はあっただろうか。

 私が久しく忘れていた音楽の性質について、stargaze shelterに再認識させられた話を伝えたい。

 近年のコンテンツの消費速度の上昇は留まることを知らず、ながら視聴や倍速再生など、いかに時間効率的に創作物を摂取できる/させるか人々は工夫を凝らしている。音楽もご多分に漏れず、あくまで生活のBGMとしての役割だったり、「気持ちいい部分」だけを切り取って耳目を集めるために消費される機会が増えている。それが悪いことだと言わないが、ひとつの音楽を隅々まで聴きつくして、咀嚼して、味わい尽くすということを忘れてしまうのはすこし勿体ない気がする。私自身、人一倍音楽を聴く習慣を持つ自負があるが、一曲に向き合い続ける機会は極端に減った。

 そのような現代社会のなかで、そのような私がstargaze shelter に出逢った瞬間については、正直ほとんど覚えていない。おそらく、その音楽のあまりの美しさに打ちひしがれるあまり、記憶だとかに脳のリソースを割けていなかったんだろう。聴き終わったはずの、一度聴いただけのはずの「オプティカル」という曲が私の脳内で響いていたことだけなんとなく覚えている。
 瑞々しさと儚さと、高揚感と安心感と、情動と静謐と……ふつうは両立しない単語たちが緻密に調和したようなあの感覚を、ひとことで表せる言葉を私は知らない。いやきっと、現時点でこの世に存在しないんだ。

見よ、この美しきアートワークを。


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