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手形決済は減少しても、約束した支払を期日通り実行することで保たれる信用の大切さが減る訳ではない

資金繰りコンサルタントがアドバイスすることの一つに「手形決済をなくしましょう」ということがあります。

これは約束手形が期日当日に決済できないと、不渡り処分を受け、信用力が大きく低下すること、そして、一度目から6ヶ月以内に二度目の不渡りを出すと、銀行取引停止という処分になるからです。

私が銀行で働いていた時はまだ手形取引が盛んに行われていましたが、今はだいぶ減少しています。

一つには手形には収入印紙を貼るので、収入印紙代を削減するためという理由もありますが、やはり、手形を決済できないと、信用力が大きく低下し、銀行取引も停止されるという理由が大きいかと思います。

約束手形の場合、いま手元に預金がなくても、3ヵ月後に1,000万円の売上が入ってくるのであれば、最大で1,000万円の支払いをできます。このため、発行する会社の方はそれなりのメリットがあります。

このメリットを享受できる分、期日に決済できないと、約束違反として、不渡り処分や銀行取引停止処分というペナルティを受ける訳です。このため、手形を発行する会社には厳密な資金繰り管理が求められます。

さて、昨今は手形取引が減ったこともあり、いわゆる不渡りになるケースは減っています。けれども、公的なペナルティがないからと言って、約束した日に支払わなくてよいということにはなりません。

この点、サラリーマン時代に「振込みするのを忘れていました」「融資を実行するのを忘れていました」ではお取引先に多大な迷惑をかけるというのが常識だったので、起業してからの取引では「あれっ?」と時々感じることがあります。

先日も月末の3時の時点である新規取引先からのご入金がなかったので、確認のメールをお送りしました。けれども、当日は何の連絡もなし。

最近は請求書をメールでお送りしているので、「もしかしたら、こちらから送った請求書が届いていないのかも」と思って、その旨を確認するメールをお送りしたところ、請求書は届いていたけれど、いろいろと事情があって今月から始める予定だった取引はいったんキャンセルしたいという返事が来たのです。

もちろん、今は世の中的にはいろいろな意味でたいへんな時期です。このため、当初約束していた支払が諸般の事情でできなくなるという事態は生まれるかもしれません。けれども、もし、約束していた支払ができないのであれば、遅くともその期日の前日までにその旨を相手に連絡するのが最低限のビジネスマナーです。

事前に言えば説明になりますが、事後になれば単なる言い訳

手形決済ではないため、不渡り処分にはなりませんが、信用を大きく失います。そして、銀行取引停止処分にはなりませんが、事前のご連絡なしに、このような対応があった場合、弊社では一発で取引停止処分です。

私も資金繰り対策として手形決済をなくすことには賛成です。けれども、それは資金繰りをいい加減しても良いことにはなりません。ビジネスにおける信用の大切さは昔も今も不変です。

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