塵も積もれば山となる。1秒、1分、1日の積み重ねの大切さを思い出させる領収書の束。
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
もうすぐ確定申告の時期が始まりますが、1年間貯まった領収書をまとめるのは結構面倒くさいですね。
忘れもしない28年前のこと。
「これやっといて!」と上司からどさっと渡されたのは、領収書や小切手帳の束、束、束。
「この量はないだろう!!」
本社への決算報告期限まで10日余り。私は急ぎ決算事務に取り掛からねばなりませんでした。
当時私は銀行のマニラ駐在員事務所設立のため、8月にフィリピンに赴任しました。
上司である所長は4ヵ月ほど先に着任していましたが、その間事務所の経理についてはノータッチ。開設の予算として本社からお金をもらい、事務所の賃貸契約に始まって、内装、備品等を揃えることにだけ注力していました。
その結果が山盛りの領収書と小切手です。つまり、かかった費用についてまったく帳簿にはつけておらず、本来やるべき月次決算報告も未着手状態だったのです。
意外に思われるかもしれませんが、たいていの銀行員は決算書の「分析」はできても、決算書を「作成」できる銀行員は少数派。
支店で経理事務をやった経験があったり、経理部に配属になったりしないと、会社(銀行)の経理に携わることなどないからです。
このため、私はまずは手続を読むことから始めました。
駐在員事務所の場合、貸出業務をやらないため、支店に比べれば経理処理も比較的簡単です。しかし、それを反映してか、本社が用意したマニュアルには非常に大雑把な事しか書かれていませんでした。これが頼りだというのに。
したがって、実際に経理処理をやろうとすると、いちいち本社に確認しないと進まないという実に効率の悪い状況に陥ってしまいました。
例えば、仮に細かい勘定科目が分らなかったとします。
自分が買ったものであれば、なんとなく覚えているため、領収書を見ればこれはどの分の経費だとか、誰との会食の時の費用だとかいうことが分るでしょう。
しかし、上司から渡された書類の中味は、ほとんどが私が赴任する以前のもので、私には記憶のかけらもありません。そして、頼りになるべき上司の記憶も半年近く前のものになると・・・。
そうなると、単純な作業が予想外の複雑な作業になってきます。
小切手帳やクレジットカードの控えと領収書等を付け合せるだけのことにしても、いろいろな科目の支払がまとまっていたりすると、訳が分りません。記憶がないのですから。
毎日きちんとつけていれば、1分で終わる作業が、1時間かかってもまだ終了しないということになるのです。
時間は刻々と過ぎ、提出期限は迫ってきます。
そんな中、だいだいの科目に仕訳が終わり、最後に帳簿残高と預金通帳の残高を合わせる作業に。すると、これが合わない!
フィリピンではではUSドルとフィリピンペソの2つの通貨を使っていました。
しかし、断然フィリピンペソで決済することが多く、その件数の多いペソの数字がどうやっても合いません。ペソはいわゆる小数点以下の数字も使っているのですが、小数点以下の数字が何度見直しをしても一致しないのです。
当時のフィリピンではまだまだ小切手での決済が主流でした。
相手先に小切手で支払い、その小切手が決済銀行に回ってきて預金口座から引落しされます。領収書(もしくは請求書)の金額と小切手の金額は一致しているのに、なぜか引落し後の預金残高が微妙に違っているのです。
こうなったら、最後の手段は、小切手の1枚1枚と銀行の引落し金額をチェックするしかありません。
まさか、銀行が引落し金額を間違えるはずはないと思いつつ、私は丸2日間かけて小切手と銀行の明細を付け合わせしました。そして、本社への提出期限の朝、その「まさか」である間違いを発見したのでした。
最後の1週間はほとんど徹夜状態。これに懲りた私は翌期からは毎日帳簿をつけることを事務所内に徹底させました。
その結果、毎月の月次決算報告も月初にはすぐに報告できる体制を築くことができたのです。
最初の決算作業で私が散々苦労した要因は3つあります。
1.不慣れであったこと
2.記憶は日々薄れていくものであること
3.塵も積もれば山となること
1については、習うより慣れよではありませんが、時間が解決してくれます。問題は2と3。これを解決するには日々の活動を疎かにしないことしかありません。
1秒、1分、1日の積み重ねの大切さをいやというほど思い知られた私の思い出の一つです。
ちなみに私は過去の痛い経験があるだけに、起業してからは毎月領収書や請求書などを顧問税理士の先生に送って、月次決算をしています。お金は貯めたいですが、領収書を貯めると貴重な時間を食いつぶす恐れがあるので、数字は少なくとも月次で締めましょう。
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