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「オンライン英会話」講師の身になって考える。厳しい講師の環境。

私は「オンライン英会話」を画期的な英語勉強法として高く評価していますが、ビジネスモデルを批判的に理解して、講師に敬意を払うこともとても大切だと思います。講師の環境についての話題は、日本語の「オンライン英会話」の紹介サイトで読んだことがありませんが、大事なことだと思います。


「批判的に理解する」は説明が難しいのですが、英語のCritical Thinkingを考えています。単にビジネスモデルを知るだけでなく、その問題点も考えたいということです。


講師に敬意を払うとは、講師を対等な人として彼らの状況を知り、考えること。講師の立場に自分を置いてみて自分が扱って欲しいように、講師を扱うことです。


「オンライン英会話」はひと月30日、毎日25分で6,000円ぐらいという私たちにとって魅力的なビジネスモデルです。単純に言えば私たちが払うのは1レッスンが200円で、1時間だと400円。この400円から、「オンライン英会話」サービス会社の利益と、システムの運営費と、サポート費用と、講師の時給をねん出するわけです。


以前から、こんなに安くプライベートレッスンを提供してるってことは、ノンネイティブ講師の時給ってどれだけ低いのだろうと不思議に思っていました。いくらだと思いますか?


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今英語のオンライン就職・転職掲示板を見ると、一般的な「オンライン英会話」の大手で、フィリピン人講師のベーシックな給料は時給で100ペソ、200円強です。経験を積むと200ペソ、つまり400円に近づくようです。一時間に2回レッスンをするので、1回レッスンをしてもらえる報酬は、100円から最大200円です。

ただし「オンライン英会話」サービスも多様化していて、ビジネスパーソン向けに特化したサービスはレッスン料も高く、その分高いスキルを求めるので、フィリピン講師の時給はもっと高くなります。


一方でイギリス人やアメリカ人など英語がネイティブな人は、ベーシックな「オンライン英会話」サービスで講師になるとおよそ10倍もらえます。時給1.8ポンドぐらい、2000円という掲示板があります。時給2000円でも英語講師としてはかなり抑えた報酬です。


フィリピンの新卒の給料の平均は2019年に35,000円程度で、若者の失業率も比較的高いので、このサラリーでも講師が雇えるわけです。それにしても、1回のレッスンが100円とは安いです。東ヨーロッパやアフリカのノンネイティブの講師はさらに給料が安いという書き込みもあります。国際的な給料格差と失業率の違いが冷酷に反映されているわけです。

国際賃金格差があるにしても、オンラインで毎日話しをしている英語が達者で親切な講師が、一回のレッスンで100円から200円しかもらえないと考えると、自分とそれほど違うかと考えます。


「オンライン英会話」講師のメリットデメリット
オンライン掲示板を読むと、「オンライン英会話」の講師のPros(いいところ)とCons(悪いところ)はだいたい次のようにまとめてあります。


いいところ:都合のいい時間帯に都合のいい時間だけ、自宅から働ける。未知の国・日本について知ることができる。日本の生徒は多くの場合礼儀正しくやる気があり、教えるのが楽しい。
悪いところ:給料が恐ろしく低い。理不尽な生徒がいてもかばってもらえない。生徒優先で講師への配慮が低い。苛酷なペナルティ。


「オンライン英会話」では、日本人の生徒は外国人の講師を写真・ビデオ・星評価をもとに選び、好きな時間にレッスンを取って、かなり直前までキャンセルができます。生徒側の都合を最大限に優先してくれます。

講師に不満があれば、評価を低くつけて批判したり、クレームを報告することもできます。講師のドタキャンやスカイプの不具合のクレームにはスピーディに代替レッスンを用意してくれます。


でもこのシステム、講師から見ると非常に厳しい。講師は生徒を選べないし、理不尽な生徒がいてもなかなか守ってもらえない。むしろ、生徒から極端に低い星評価をつけられたり、クレームが届くと、給料を減らされるペナルティがあったり、トラブルの回数が重なると一定期間授業禁止になるのです。クレームの原因が、講師の力ではどうにもならないスカイプのトラブルでもペナルティを取られていると不満が書き込まれています。


オンライン掲示板をさらに読むと、少数とは言え、実際理不尽で身勝手なモンスター生徒もいるようです。酔っぱらってレッスンを取ったり、半裸だったり(!)、英語を習うより講師をからかって楽しんでいるような生徒。若い女性講師の継続的にハラスメントにあって困っているという書き込みもありました。そして、講師がモンスター生徒について会社に相談しても、なかなか対応してくれないという書き込みもあります。


苛酷なスケジュール
フィリピンの平均月収35,000円を時給200円で確保しようとすると、単純計算で月に20日、フルタイムで実労8時間でも足りません。一日8時間教えるにはレッスンを16回教えるわけです。16回のレッスンを25分教えて5分休みを取りながら続けます。休憩の5分の中で、今終わったレッスンのコメントを送り、これから教える生徒にメッセージを送るので、トイレもなかなかいけません。


さらに大変なのは、レッスンの予定を組んでも生徒に申し込んでもらえないと、給料をもらえないサービス会社も多いことです。一日16回のレッスンを登録しても、何回レッスンを登録してもらえるかわかりません。そこで、生徒に選んでもらうために、できるだけ満点の5星に近い評価が必要です。実際、「オンライン英会話」で講師を選ぶ時、星5つに近い講師がたくさんいるし、5星に近い講師からどんどん予約が入ります。


5星に近づくために、生徒が楽しくレッスンを終えて5星をくれるように講師は最大の努力をします。ある講師とレッスンで話した時に、生徒からの高い星評価をもらう必要性があまりにも高いので、生徒をほめるだけにして、厳しい指導はしないようになったそうです。それが本当に生徒のためになるか疑問に感じていると聞きました。


がんばって教えて生徒に評価してもらっても、昇給のチャンスは小さく、キャリア・アップの道も、あまりないのです。つまり、パートタイムで副収入を目的に働くなら小回りがきいて便利な仕事だけど、フルタイムで生活を支える仕事とするには不安定で、低収入で、将来性が見えないと苛酷。長くやる仕事じゃない、いい講師ほど早くやめる、とは掲示板で頻繁にみかける書き込みです。


これだけ厳しい環境で教えてくれている講師に対して、日本で「オンライン英会話」を受ける生徒は、同じ人として講師に感謝し、尊重するすることを大切にしたいと私は思います。理不尽なクレームをしたり、身勝手な“気分”で低い星の評価をつけると、講師の生活さえ脅かしかねないことを忘れないようにしたいと思います。


「オンライン英会話」の講師が教え方に不満に感じたら、まずその要求は過度じゃないか振り返って考えてから、クレームや星評価をしたいです。講師を友人を扱うように敬意をもって接したいと思って「オンライン英会話」を受講しています。


さて、明日は「オンライン英会話」を続けるのに必要な、英語学習のやる気の育て方を科学的に考えます。

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