見出し画像

【開催レポート】MIX TALK 「MIXの建築」

「CORNER MIX の MIX TALK」は、CORNER MIXのパートナーやアーティストをお招きしてお話しするカルチャーミックストークイベントです。

2023年2月25日、CORNER MIXの設計を手がけたひとともり代表の長坂純明さんをゲストにお招きして、第2弾「MIXの建築」を開催しました。

家族連れが集まる二条公園のすぐそばの、街角の小さな休憩所。そんなミックスジュース屋さんを、マガザンとひとともりはどのような想いで創り上げたのか。

MIXに込められた想いと、これからの期待についてお話した1時間のMIX TALKをレポートにまとめてお送りします。

執筆:ディレクター 榎 藍香
写真:井上 みなみ


▲ひとともり株式会社代表 長坂純明さん奈良に拠点をおく建築デザイン会社「ひとともり株式会社」。暮らすように泊まる一組限定の宿「宿一灯」や、ビーガンカフェ「生姜足湯休憩所」など、設計業務に留まらない活動を通して日常を豊かにする提案を行っています。

”ひとともり”の代表を務めるのが長坂純明(以下、長坂)さん。大手建築設計会社に27年勤めたのち、独立してひとともり株式会社を設立されました。 マガザンとプロジェクトをともにしてきた長坂さんへの信頼は厚く、CORNER MIXの建築設計をご担当いただきました。

ひとともり長坂さんの建築設計スタイル

長坂) 今日はよろしくお願いいたします。
ひとともりの建築設計についてお話をしていきたいのですが、まず建築設計の醍醐味は「予定不調和」を感じるときだと思っています。最終的に何が出来上がるかわからない方が面白いんです。

大手建築設計会社で働いていたとき、事前に決めたデザインがその通りに完成するということを何度も経験しました。すると、自分が思い描いていたものを作っていたとしても、あまり興奮しないんですよね。

僕が「予定不調和」を楽しむせいで、CORNER MIXのみなさんに不安を感じさせたことがあったかもしれません(笑)。でも、 みんなが不安に感じているときほど「この感じは大体うまくいく」って思うんです。

岩崎) CORNER MIXには沢山のパートナーさんがいて様々な声や提案が届きます。それも「予定不調和」が生まれる要因になっていたのかもしれませんね。長坂さんと何かをつくるときは、決めすぎず、でも泳がせすぎず絶妙なコミュニケーションをしてくださることもご一緒したくなる理由です。

CORNER MIXの建築を紐解く

岩崎) 素晴らしい建築をみたときに、どのような過程を経て出来上がったのだろうかと思うことがあります。今日はCORNER MIXにおける建築の過程を教えていただきたいと思います。

長坂) まず、設計を進めるときは数種類の空間パターンを考えます。そのためにも、CORNER MIXの敷地のポテンシャルがどこにあるかを考えました。

街に向かって開けていて、3面の道路に面していて、前に道路がある。公園側に向かって歩いていくことが多いんだろうなと想像しながら作っていきました。

[A]CORNER MIXのベースになった案

[B]右側にはテイクアウトスペースも設けられているパターン

[C]真ん中にキッチンがあるパターン

[D]百貨店のフルーツジュース屋さんからのインスピレーションがあったそう。ベビーカーの通り道を確保するのが難しかったり、コストの面で断念。

長坂)レイアウトを作り始めた当初は、ミックスジュース屋さんらしく、カラーを多めにして、インテリアに遊びを入れるイメージだったんです。しかし、岩崎さんからは「オーセンティックな空間」にしたいという要望をもらいました。

岩崎)ハードの部分はシンプルにして、引き算をするイメージで作りたかったんです。そのほうが人やモノが空間に入ってまざって営みが生まれた時に「まざる」ことの価値が浮き上がるし、今後CORNER MIXで生み出すコンテンツがより引き立つと思いました。

長坂)オーセンティックな空間に流れる世界のラジオや、カラフルなヴィンテージの小物たち。うまく混ざり合いましたね。

▲MIX TALKの様子

CORNER MIXの3つのキーワード

岩崎) CORNER MIXでは、「フレンドリー」、「アップサイクル」、「コラボレーション」の3つのキーワードを大事にしています。

長坂)キーワードの一つである「フレンドリー」といえば空間のレイアウトだよね。真ん中の象徴的な丸いベンチもその一つ。人やモノや食材が混ざり合いやすいような設計をしました。真ん中のテーブルトップは外れるようになっていて、植物を入れることができます。ちょっとギミックが過ぎているかもしれないけど(笑)

岩崎)そうそう。植物を入れる予定だったんですけど、オープンしてみると、お客さんがテーブルトップにお皿やグラスを置くことが多いとわかったんです。やってみてわかる「余白」ですね。

長坂)こういうことも予定不調和な感じがして好きです。

▲真ん中の丸いベンチ。イベント時にはベンチを3つのパーツに分けて柔軟にスペースを作ることができるようになっている。ベンチトップには植物由来の「サボテンレザー」を使用。

岩崎)また、ファミリーフレンドリーな空間にしたいという思いもありました。長坂さんであれば、子育てのご経験もあるし、実体験からくる感覚や考え方を空間に落としていただけるだろうと。スロープや、丸い什器の角など、子どもが走り回っても安全が確保される仕上がりを目指しました。

長坂)そうですね。角を異常に丸くしました。

岩崎)角を丸くすることは流行りではないですが、これがMIXのひとつの大切な価値になったと感じます。

▲CORNER MIXのカウンタートップ。丸い角が印象的。

長坂)あとフレンドリーといえばトイレです。トイレでおむつを替えるときに、子どもの目にダウンライトの光が当たってしまう設計が多いと感じていました。だから、CORNER MIXのおむつ替えシートは、足元にライトをつけて照明の配置を工夫しました。 

▲マガザン社員でありサウンドクリエイターMasahiko Takedaとコラボレーションした、アンビエント音楽の流れるトイレ。
▲設計開始前から、キッチンに設置したいと長坂さんに伝えていたBang&Olufsenのヴィンテージステレオアンプ。10年以上前に岩崎がデンマークで買いつけ保管していた。

長坂)CORNER MIXで大切にしているキーワードには「アップサイクル」がありますよね。分かりやすい例の一つがタイルです。マガザンメンバーとタイル工場まで見に行きました。すごい量のタイルが廃棄されていましたね。

岩崎)少し欠けていたり、ちょっとボコッとしているだけでタイルが廃棄されていました。それらのタイルをアップサイクルして、店内に使用しようということになりました。

▲焼く前の土の状態のタイルを用いたカウンター壁

長坂)タイルを作る際に膨大なエネルギーを使っていることを知りました。手を入れたら一瞬で溶けるんじゃないかってくらい大きな釜で焼くんです。焼く前のタイルを使えば、エネルギーを節約できるし、土にも戻るから、環境にもいいと思いました。設計の都合上、多少のリスクはありますが、焼く前のタイルを使用しました。

岩崎)現場に実際に行ったからこそ、気づけたことでしたね。

▲漆職人がCORNER MIXのテイクアウト用紙コップに漆を塗って持って来てくれました。

岩崎)最後のキーワードが「コラボレーション」。CORNER MIXの奥に大きなアートウォールを設けたのも、できるだけたくさんの人といろんなことをやりたいし、CORNER MIXがそれを受け止められる場所にしたいと思ったからです。

長坂)いろんな人が関わることができる空間になりましたね。
 
岩崎)長坂さん、今日はお話いただきありがとうございました。皆でこの空間を育てていきたいと思います。

▲ひとともりが設計を手がけた老舗甘納豆専門店の新ブランド「SHUKA」とコラボレーションして開発した「SHUKA MIX ピスタチオソイミックス」の試飲をお越しいただいた皆さまに試飲いただきました。

ゲスト:ひとともり株式会社 長坂純明さん
所在地:〒630-8381 奈良県奈良市福智院町1-3
電話番号:0742-26-8668
https://hitotomori.net/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?