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ギターを弾く

私は、ピアノは全く弾けませんでした。長男のピアノ演奏会の伴奏役を務めることになり、急いで練習してなんとか成功裡に収めたのは前回記事に書いたとおりです。

ピアノ「は」弾けないと書いたのは、ギターは弾けるからです。厳密に言うと、今はすぐには弾けませんが、大学ではクラシックギターのサークルに入っていて、プロの先生にも習っていたこともあります。年に2回くらいコンサートがあり、結構な広さのホールで、多くの聴衆の前で演奏を披露したりもしていました。

社会人になってからしばらく弾くことは無くなったものの、ある日、渋谷のタワレコで、このギター演奏が耳に留まりました。

これ、本当にギター一本で弾いてるの?? と心底驚き、CDを買うのみならず、楽譜も買って、どんな演奏をしているのかを熱心に研究しました。

弦を弾かずに左手と右手の両方で弦を押さえて交互に音を出したり、ギターのネックの部分を叩いて高い音を出したり(タッピング・ハーモニクス)、見たこともなかった演奏法が多数繰り出されていました。

ギターを叩く演奏法自体はクラシックギターにもあり、私も得意としていました。ただあくまでもギターのボディを、太鼓のように要所でアクセントとして叩くのみです。押尾コータローのように、始めから終わりまで叩きまくる曲はおそらくクラシックギターにはありません。

これらの演奏法で音をはっきり出すためには、金属弦を持つアコースティックギターじゃないと無理だと感じました。クラシックギターはナイロン弦なので、叩いてもうまく音が響かないのです。なので、お茶の水の楽器屋で、アコースティックギターも買いました。興味が続くかどうかはわからなかったので、中古の安いものにしました。

自分だけで練習していても上手くならず、また仕事が多忙の中で練習を継続するのも難しいと考えて、ある音楽教室の門を叩きました。大学の時のようにみっちりマンツーマンで先生に教わるのでなく、グループレッスンで月謝も安かったので、気軽に通えそうだと考えました。

大学の時からギターはしばらく触っていなかったにせよ、基礎はできているので、周りは皆初心者の中、軽々と課題をクリアするので、先生や生徒から、少し奇異の目で見られたりもしていました。

この音楽教室でも、年に2回くらい演奏会があります。いろいろなレベルのクラスの生徒が集まって、練習の成果を披露します。たいていの生徒は弾き語りをします。

しかし、私は押尾コータローのカバーを中心に選曲していました。歌いもせずに黙々とギターを弾き、叩きまくる私の演奏姿に、みな驚いていたというか、奇異の目で見ていたと思います。ただ、念願の「戦場のメリークリスマス」を演奏した時は、打ち上げの飲み会で色んな人に声をかけられました。

ちなみに一度だけ弾き語りにも挑戦しましたが、反応は今ひとつで、「こいつ歌うんだ・・・」みたいな目で見られただけでした。歌った曲は村下孝蔵の「初恋」でした。なぜこれにしたのか、理由はよく思い出せません。

結局ギター教室にはゆるゆると5年ほど通い、自分が弾きたいと思っていた曲は一通り弾けたと思ったところで、スパッと辞めました。それ以来10年近く、ギターには触っていませんでした。

私が一ヶ月ほどでピアノをそこそこ弾けるようになり、先生にも初めてとは思えないと評され、また大勢の演奏会でもさほど動じなかったのは、こうしたギターの経験が多少なりとも活きていたためと思われます。

先日、「戦場のメリークリスマス」を作曲した坂本龍一が亡くなりました。久しぶりに「戦場のメリークリスマス」を聴き、押尾コータローのギター演奏版も聴き込みました。

ギターも久しぶりに弾きたくなってきました。長男も、物置に立てかけてあったギターに興味を持っているようだったので、一緒に楽器屋に行って弦を買い、一緒に弦を張り替えようとしました。ただ、ペンチで古い弦を切った時、弦がビョンと鈍い音を立てて飛び跳ねたのに驚いて、長男は部屋の外に逃げました。

昔買った楽譜も取り出して、昔の感覚を少しずつ取り戻そうとしています。仕事をしながら、よくこんな難しい曲を練習して、演奏会で披露までしていたものだと、我ながら驚いています。


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