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「数字」と私たちの生活

こんにちは!

最近スーパーで300円のたまごを見て、”98円で買っていた頃が懐かしい”と思ってしまうこしあんです。

さて、私たちの生活にはこの「数字」というものが深く関わっています。
「数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う」なんて言葉もあるくらい、私たちは数字に影響を受けることがわかっています。

私が300円のたまごを見て「うぉ、たけぇ!」と感じているとき何が起きているのか?

今回は、私たちが影響を受けやすい「アンカリング効果」というものについての話をしていきます。

人は物事を判断する場合に、個人の生活習慣や固定観念、周囲の環境などの内的・外的要因によって非合理的な判断を行なってしまう認知バイアスというものを持っています。

この認知バイアスの中には、あなたもよく聞く「確証バイアス」「ハロー効果」といったものがあり、「アンカリング」もその中の1つです。

このアンカリングは先行するなんらかの数値(アンカー)によって後の数値の判断が歪められ、最終的な判断に影響が出てしまう心理的な作用のことをいいます。

簡単に言えば、最初に目にした「300」という数字が、いつのまにか買い物するときなどに影響を与えているといった感じでしょうか。


このアンカリングを使った面白い実験があるので紹介しましょう。

問1
ガンジーは亡くなった時、140歳より上だったか下だったか?
ガンジーは何歳で亡くなったか?

もう1組

問2
ガンジーは亡くなった時、9歳より上だったか?
ガンジーは何歳で亡くなったか?


さて、答えは出ましたか?

一番最初の質問ですが、あなたもガンジーがまさか140歳まで生きたなんて思いませんよね。
でも先にこの質問をされると、答えの平均は67歳になるそうです。

一方、ガンジーが亡くなった時、9歳より上だったかと先に聞かれると亡くなった年齢の平均は50歳まで下がりました。

これは、最初に見た「140」と「9」という数字に引っ張られたと考えられます。
しかもこのアンカリングでは、数値はそれを表示するスケールの単位が同じでなくても構わないそうです。

先ほどのガンジーの例では同じ年齢という枠組みでしたが、全く関係のない今日買った100グラム89円の鶏肉の値段を見た後、ガンジーの年齢を聞いた場合、89円の鶏肉の値段はガンジーの年齢に影響を与えるという訳です。

まぁ、普通はこんなシチュエーションはありませが影響力はあります。
※ちなみにガンジーが亡くなったのは78歳です。

しかし、本当にそんなに影響されるものなのか?
と思いますよね。
そこで、もう1つ実験を紹介します。


フリーマーケットなどを思い浮かべてください。
たくさんの露店や商品が並んでいるなか、CDを売っている店とトレーナーを売っている店が並んでいます。

お客さんは知らされていなかったのですが、露店の売り子は変装した研究者で、偶発的価格と呼ばれる効果の影響の大きさを調べている実験でした。

まず、CDを覗き込んだ通行人にいくらなら買うかと尋ねます。
※ここでは、通行人がわざと低すぎる値段を言わず、本当に払ってもいいと思う数字を提示してくれるようにある工夫を設けています。

その間、隣にあるトレーナーの露店では、ある時には1着10ドルの看板を出し、別の時には1着80ドルの看板を出しました。
かなり値段に差がありますが、CDを見ていた通行人には関係のない話にも思えます。

普通に考えれば、トレーナーの値段が目に入ったからと言って、今見ているのはCDだし、買うつもりもないトレーナーの値段が自分に影響を及ぼしているとは考えられませんよね。

しかし実験の結果、通行人がCDにつけた値段の平均は10ドルの看板の時は7.29ドルで、80ドルの看板の時は9ドルまで上昇しました。
上昇率はそんなに高くないような気もしますが、CDを売っている店では特に何もしなくても値段が上がっていることになります。
しかも、CDを買った人たちはトレーナーの値段にはつられていないと言い張ったそうです。

まさか、看板の数字を見ただけで自分の意識がその数字に引っ張られたなんてなかなか納得することはできないかもしれません。

なので、研究者たちはそれを確認するためにデータの分析を始めました。
アメリカでは毎年「クラシック・カー・オークション」というものがが開催されていて、そこで実際の売り上げ5年分のデータを分析しています。

分析の結果、高額モデルの車が売られた直後に低価格モデルが売られた場合、最終落札価格が上昇することがわかっています。

またドイツでも似たような実験があります。
まず、法廷の審理経験のある下級判事のグループに、万引きで捕まったある女性の詳細を説明します。
そして、その人たちにサイコロを1組振ってもらいます。
このサイコロには細工がしてあり、どう投げても合計が「3」か「9」になるようになっています。

次に、その判事たちに女性の禁固刑の月数として、サイコロの目の合計以上を求めるか、以下を求めるかを尋ねました。

そして最後に、自分が判事なら下すと思える禁固刑判決を言ってもらいます。
結果は先の実験のように、サイコロの目が「9」と出た判事が女性に与えた禁固刑は平均で8か月だったのに対し、目が「3」と出た判事の平均は5か月でした。
もちろん、判決の前にサイコロを振ったりはしないのですが、これはサイコロの目に引っ張られたと考えられます。

【アンカーに引っ張られないようにするには?】

「知らないうちにいろんな数字に影響を受けている」と考えると、ちょっと怖い気がしませんか?
ただ、このアンカリングは困難ですがコントロールは可能です。

まず、影響を少なくする単純な方法は、アンカーを下す側に回ることだと言われています。
売り手ならアンカーは高く、買い手なら低くというわけです

まず売り手の場合、アンカーを高く設定すれば少なくとも自分が妥当だと思う水準で売却できる可能性が高くなります。
高い値段を提示したのになぜ売れる可能性が高くなるのか?

不思議ですよね。

フリーマーケットなどの場合、まずお客さんとの間で商品の金額を巡ってのやり取りがありますが、実はこの時点で売る側がすでに優位に立っていることがあります。

なぜかと言えば、お客さんは広く知られた「認知バイアス」、「確証バイアス」を通じて、先にあなたが示した高い値段の理由になる情報を探し始めるためです。

例えばビンテージ物のジーンズがあったとします。
「1本50万円はする」と言われてとても高いと思いつつ、”ビンテージ物はそもそも高い”とか”このデザインの物はもう製造されていない”、”有名人の○○がはいているのと同じタイプだ”と言った、商品が高い理由を探し始めるというわけです。

面白いもので、逆に提示金額が低かった場合はお客さんは売り物の欠点を探し始めます
日本にも「安かろう悪かろう」といった言い回しがありますよね。
昔も今も人間は基本的にこのように考えるのかもしれません。

ただし、この戦略が使いにくい状況もあります。
これは「自分の売り物にどれだけ価値があるか」、ないし「他人がそれにいくら払うか」、まるで見当がつかない時はあまり効果がないようです。

普通に考えれば、価値が分からないと値段のつけようがありませんよね。
こんな時はお客さんに値段をつけてもらうのも一つの手だそうです。

でも、そうするとお客さんが物凄く安い値段をつけるのでは?
と不安になる人もいると思います。
相手が低い値段を言ってきたとき、「いやいや、これはそんな安い物じゃない」といって値段を釣り上げた方がいいのか?

心理学者アダム・ガリンスキーが行なった実験によれば、対抗するのはあまり良い手ではないようです。

相手の出した値段を巡って争う限り、同じくらい低すぎる値段で対抗してもどちらも最初のアンカーの影響を受けていることに違いはありません。
それならば、一旦交渉を白紙に戻して再交渉するほうがいい。

こちらがお客として交渉する場合は、相手に損をしたと思わせないことが大切です。
人は得をするよりも損をしたくない生き物だと言いますが、あまり値切りすぎ売るのも問題になります。
値切りすぎると「よそに行ってくれ」となりかねません。

ではどうするのか?

例えば、フリーマーケットなどでアクセサリーを買うとします。
まず本当の評価額はこれから提示する金額よりさらに低いことを匂わせます。
店主に「このアクセサリーは1つ900円くらい?でもちょっとサイズが小さいからもっと安いのかな?」と聞いて最初にアンカリングします。
でもデザインが良いからそれ以上出すつもりでいることも付け加えます。

そうすると店主が「これは、1点物だし天然石を使っているから1800円はするよ」と言われました。
あなたは「1800円は高いな、1200円ならすぐ買うけど、、、。」と店主より低い値段を提示して交渉します。

この時、店主の中では「予定の1800円にはとどかないけど、最初に言われた900円よりはマシか」と考え、あなたが提示した金額(1200円)は最初に聞いた900円に比べ、損ではなく僅かながら得だと思ってしまうということです。

もちろん、いつもこのようにスムーズにいくわけではありません。
すでに値段の決まっている物も多いですし、店側の提示額との差が大きすぎると上手くいかないこともあります。


【ネット上でもアンカリングは作用する】

eBayのサイトを使って心理学者アダム・ガリンスキー、ギリアン・クー、トーマス・マスワイラーがある実験をしました。

心理学者の観察対象の1つにトミー・バハマのハワイアン風シャツが出品されたオークションがあります。
この調査によると、売り手が成功するカギは出発点となる開始価格を設定しないことだそうです。

これで買い手がオークションに参加しやすくなり、いったん参加すれば互いに競い始めるというわけです。
入札が活発になるとさらに参加者が増えますが、当初から参加している人たちは、時間もエネルギーもかなりつぎ込んでいるので、なかなか降りようとはしません。
そのため、最終的に高値で売り買いされることになります。

対称的に開始価格を強気で設定すると、入札が低調で価格も伸びないことがあります。
ヤフ〇クなどでこの現象を見かけることがありますね。
1円スタートのものは参加者が多くなり金額も伸びますが、高い設定金額でスタートし伸び悩んでいるものがあったりするのはこのためかもしれません。

調査結果によると、アンカリングの効果が特に強力になる時もあるようで、それは人がその状況に慣れていないとき、情報源が信頼できるとき、気分が落ち込んでいるときと考えられています。
人は気分が落ち込んでいるとき、認知プロセスによって普段より神経を使い、高い値段の理由を探し始めます。
なので気分が落ち込んでいるときの買い物は高くつくかもしれません。




最後に

心理学者クラウディア・ハモンドは「交渉時は、相手より先に金額を提示することでアンカーを設定しておくとよい。ただしどの辺が妥当かさっぱり見当がつかない時にはその限りではない」と言っています。

どのみち影響を受けてしまうこの「アンカリング」であれば、上手にコントロールして買い物などしたいものですね。



今回はここまで

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最後までお読みいただきありがとうございます。

それではまた次回お会いしましょう。

※この記事は読んだ本をもとに考察し、私の経験したことなども踏まえて書いています。
そのため、参考にした本とは結論が異なる場合があります。
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