72. 自閉症スペクトラム障害児は,輻湊近点の延長,脆弱な固視,不正確なサッケード,不規則な追従運動,外斜偏位を示す傾向が強く,これらは言語コミュニケーションのレベルに関係なく生じる

Near-point Findings in Children with Autism Spectrum Disorder and in Typical Peers

Coulter RA, Bade A, Jenewein EC, Tea YC, Mitchell GL. Optom Vis Sci. 2021 Apr 1;98(4):384-393. doi: 10.1097/OPX.0000000000001679. PMID: 33852554; PMCID: PMC8051934.

重要性:臨床医はこの集団の標準治療を確立することで,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)児の視覚問題をよりよく診断・管理することができる。また,ASD患者全員を対象とした包括的な両眼視機能評価の重要性が強調された。

目的:ASD児と定型発達(typically developing:TD)児の近点・眼球運動検査所見を比較すること。また,ASD児の所見を言語コミュニケーションのレベル別に比較すること。

方法:9歳から17歳の61人の子供と青年(ASD,34人;TD,27人)が,遠見と近見の眼位,輻湊近点,近見輻湊と開散融像,調節反応,Northeastern State University College of Optometry眼球運動機能検査を含む眼科検査を行った。検査は屈折矯正下にて行われた。ASD児の保護者は,被験者の言語コミュニケーションレベル(nonverbal,短い単語を使う,言語の使用)に関する情報を提供した。

結果:遠見眼位は群間で有意差はなかった。ASD児の近見はより外斜側であった(差,2.8Δ)。輻湊近点のbreak pointとrecovery pointの平均値は,ASD児ではそれぞれ7.0cmと8.02cm,TD児では2.19cmと3.99cmであった。近見開散と輻湊融像は有意な差を示さなかった。ASD児は,立体視が有意に悪く(P < .0001),Northeastern State University College of Optometry眼球運動機能検査では,固視の低下,精度の低下,持久力/能力の低下,頭や体の動きの増加が認められた。Monocular estimation methodは,ASD児とTD児の間で有意な差はなかった。ASDのサブグループ(nonverbal,短い単語を使う,言語の使用)間で,眼位、輻湊近点,近見の輻湊と開散融像に有意差はなかった。

結論:自閉症スペクトラム障害児は,輻湊近点の延長,脆弱な固視,不正確なサッケード,不規則な追従運動,外斜偏位を示す傾向が強いことがわかった。これらの違いは、報告された言語コミュニケーションレベルに関係なく生じる。

※コメント
自閉症児の眼球運動がsmoothでない事は感じていましたが,言語コミュニケーションレベルの違いに応じて差がないことは意外でした。

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