302. 自閉スペクトラム症のある知的障害児、知的障害児、定型発達児における絵の背景要素が視覚的注意に及ぼす影響: eye-trackingとfMRIによるエビデンス

The effect of background elements of pictures on the visual attention among ASD children with intellectual disabilities, children with intellectual disabilities and typical development: Evidence from eye-tracking and fMRI

Lian X, Hong WCH, Gao F, Kolletar-Zhu K, Wang J, Cai C, Yang F, Chen X, Wang Z, Gao H. Res Dev Disabil. 2023 Oct;141:104602. doi: 10.1016/j.ridd.2023.104602. Epub 2023 Sep 25. PMID: 37757565.


従来の児童向け絵本は、定型発達(typical-developing:TD)児の注意を引き、読書への関心を高めるために、カラフルな画像と多くの要素を備えている。しかし、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)の子どもは、絵の中の重要でない要素をフィルタリングし、社会的なもの(人の顔など)に集中する能力が低い。本研究では、絵本の中の背景やあまり重要でない要素を取り除くことで、ASD児の注意力が向上し、主な対象への集中力が高まり、絵本の意図する意味を理解しやすくなることを提案した。我々は、有名な絵本から写真を採用し、不要な背景要素を削除することで修正した。そして、知的障害のあるASD児(ASD+intellectual disabilities:ID)(n=40)、ID児(n=38)、TD児(n=40)に、それぞれ元の絵と修正した絵を見てもらい、アイトラッキング実験を行った。さらに、ASD+IDの参加者(n = 10)の脳活動が、fMRIスキャンでそれらの絵を見ているときに記録された。アイトラッキングの結果、ASD+ID児は修正された絵を、有意に長い平均固視、少ない固視、少ないサッカード、高い固視/サッカード持続時間比で見ていた。オリジナルの絵とは対照的に、ASD+ID、IDのみ、TDの間では有意差は認められなかった。特に、ASD+ID群は、修正された絵を見るとき、特に絵の中の主人公に注目するとき、TD参加者と非常に類似した視覚パターンを示した。また、ASD+ID群のfMRIでは、修正された絵は、元の絵と比較して、両側の楔状回における活性化が亢進しており、これは視覚的注意の亢進を示唆しているのかもしれない。この結果は、視覚的注意の亢進を示唆しているのかもしれない。

※コメント
本文抜粋ー
・自閉症児(ASD+ID)、知的障害児(ID)、神経過敏児(TD)の間で、絵本の読み聞かせにおける注意の違いが見られる。
・ASD+ID児は、絵の社会的要素を、複雑さを減らした場合、TD児と同様に見る。
・ASD+ID児では、絵の複雑さが減少すると、fMRIによって両側の紡錘状回が活性化することが示された。
・絵の複雑さは、ASD+ID児の意図されたメッセージへの注意に、ID児やTD児よりも大きな影響を与える。

絵本が子どもの学習に不可欠であり、情緒やコミュニケーション能力の低い子どもにとって特に重要な教育・コミュニケーションツールであることは疑いの余地がない(Tabernero & Calvo, 2020)。教師も絵本の開発者も、ASDの人への効果を高めるために、絵本の複雑さに注意を払う必要がある。

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