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独り言

「生きる意味ってなんだと思う」

彼女はそう言った。
いつもケタケタと元気に笑う彼女が、たまに見せる暗さ。
僕はうまく答えられなかった。
意味なんて大層なものはないと思っていたから、そう答えた。
不正解の答え。
たまに今でも思い出すんだ。あの時なんて答えたら良かったのだろう、と。

高校生のあの時も、今も答えは見つからない。
意味なんて考え始めたら、それはもう落ちるだけで、そんなことより生きていることが大切で。
好きな人と話せたり、好きなものをもったり、小さな「良いこと」を積み重ねることが大切で。

じゃあ当時、彼女は何を思っていたのだろうかと回想する。
他人のために自分を犠牲にし過ぎているようにも見えた彼女の姿を思い出す。
傲慢かもしれないけれど、弱っている彼女の力になれたら良かったのに。

振り返る行為はどれも自分の領域を出ないものばかり。
正解も不正解もなくて、あるのはただ後悔だけだ。

大学進学後、彼女とは連絡を取らなくなった。
たまに思い出しては元気にしていると良いなとぼんやり想像をする。

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