『玉森家の一族』(超短編小説)

彼方の地平線に、陽炎が揺れていた。

   視界に入るすべてのものが溶け落ちそうな夏の昼下がり、僕は縁側に座って、冷えたサイダーを飲んでいた。

   玉のような汗が額からこぼれ落ちた。すると、ガラス玉がコンコンと音を立てて床を跳ね、縁側の下の土に着地して転がった。

「!?」

   僕は絶句した。一瞬の出来事だったが、いま確かに汗の滴がガラス玉に変わった気がする。

   あっけにとられている

もっとみる

ジャパン・ラン

ヤバい、遅刻だ。
今日からヨーロッパ出張なのに、これでは飛行機に間に合わない。
仕事といえど初渡欧。
楽しみすぎて寝れなかったのがいけなかった。
徹夜を決意したのに、結局朝が来たら眠くなってしまった。

母が握ったおにぎりを頬張りながら、とりあえず走って駅を目指す。
その時だった。
とつぜん体がグラついた。
「捕まっておけ」
そんな声が聞こえた気がした。
高くもなく低くもなく、何だか神聖に感じる声

もっとみる

夢の曲がり角

俺は何をしてもダメだ。
事業は失敗、妻とは離婚、夢も希望も金もなく毎日カップ麺でしのいでいた。
片付けるのも面倒で台所には小蝿がわいている。



ニュースを見たのはそんな時だった。
高校生の男女へのインタビュー。
彼らは曲がり角でぶつかり、中身が入れ代わってしまったらしい。
そんな映画みたいな事、本当に起こるんだな。

待てよ……。

「あそこだ!」
希望を胸に現地まで来た。
ここで金持ち

もっとみる

『幼馴染』(超短編小説)

「ずっとずっと紗英ちゃんと友達だからねっ!」
「うんっ、ずーっと、ずーーーーーっと、由佳里ちゃんと友達だよ」

   私は「ずっと」の部分に精一杯の力を込めて言った。幼なじみの由佳里ちゃんが遠いところに転校する。引越のトラックから手を振る由佳里ちゃんは泣いていた。いつも強くて逞しくて、男子にも負けなくて、私のことを守ってくれていたあの由佳里ちゃんが目に涙を浮かべていた。一緒に手を振るかのように、道

もっとみる

カチカチコーヒー

書斎のドアを蹴破ると、そこには机に突っ伏して絶命している朝日剛氏の姿があった。
そして緊急救命の甲斐なく、朝日剛氏の死亡が確認された。
「ああ、医者には覚悟するように言われていたけど、こんなに早いなんて」
朝日剛氏の息子である、朝日実氏がそうつぶやいた。
部屋には、被害者が死の直前に飲んでいたカチカチコーヒーのカチカチという音が響き渡っている。
「これが一杯で数千万円といわれる、最高の味の間だけカ

もっとみる

『宛名のない手紙』(超短編小説)

七莫迦村には奇妙な噂があった。

   村のはずれにある古いポストに、宛名のない手紙を投函すると、翌日の夜、投函した本人が神隠しに遭うというものだ。

   日本がまだ戦時中だった頃、村に住んでいた源二郎という若者が、思いを寄せる女性に恋文を書いたのだが、肝心の宛名を書き忘れたまま投函してしまった。翌日の晩、源二郎は村から忽然と姿を消した。源二郎の自宅には財布や貴重品がそのまま残っていたので自殺と

もっとみる
ホントにありがとう。伝わったってことですよね。
15

#5「雲の水」

運命の水―。偶然の雲―。

雲の水は目に見えないが、確かに存在する―。

その男はこの世界を泳いでいた。

来る日も来る日も泳ぎ続けていた。

ある日空を眺めていると、上昇気流に出くわした。

空気はふくらんで冷やされながら雲になっていく。男は自分の中に水をみた。

雲となる水を眺めながら。

男はこの世界を眺めている。

自分の運命と、偶然の雲を楽しみながら。

(了)

【超短編】 毎日更新

毎日文章を書いていたらある企業から丁寧なメールが届きました
会があるのでぜひお越しくださいと

行ってみると、会の場所はお洒落なレストランで、
毎日文章を書いている人たちが多数集められていました

企業の人と話しました
「なんで私は誘っていただいたんですか?」
「文章がいいからですよ」
「そうですか」

そこでの時間はいいものでした、楽しく過ごせました

また会があり、誘われました

行ってみると

もっとみる