杉元のモデルと杉リパの今後

杉元佐一のモデルは、野田先生の曽祖父だ。そのタフさは実在する軍人、不死身の分隊長を模しているとも言われている。ただ、杉元佐一には人間以外のモデルもあるんじゃないか。自分はオオカミだと思っている。

杉元は特に日常回と戦闘回の振れ幅がでかい。愛嬌を振り撒いたかと思えば、仲間に危機が及ぶと全身全霊で撃退する。その切り替わり方がレタラと似ているように思う。杉元が敵を威嚇するとき、唸り声が聞こえはしないか。自分にはオオカミの声が聞こえる。

これは杉元に限らないかもしれない。野田先生は実在する人物を除くと、キャラデザに動物を使っているんじゃないか。谷垣源次郎=子熊ちゃんは公式だし、二瓶の執着心はヒグマだ。ヤマネコは見た目でなく、モデルとなったトーマス・ベケットからきていて、コウモリ野郎とも言われるけど、デザイン的には鳥っぽい。猛禽類はスナイパーと呼ばれるし、何より目元がホルスだ。他にも、カワウソっぽい、馬っぽいと言えば大体みな同じキャラが浮かぶんじゃないか。直接動物名が入る鶴見中尉は、額当てのお陰で完全に鶴の印象だ。そう考えると、少しでっぱったところに穴だけがあるような月島の鼻は亀かもしれない。鶴と亀の相性、意図がないとは思えない。鶴は千年、亀は万年というから、月島は中尉の死を見届けることになるんじゃないか。その時、かぶりつきで見ている月島に鶴見は指を食べさせるんだろうか。

アシリパには蝶が冠されているけど、キャラデザに蝶は込められていない気がする。アイヌが和人名を付けるとき、樺太アイヌが地名を用いたことが現実にあって、胡蝶別から音を得た小蝶辺という姓の美しさに野田先生が惹かれたんじゃないか。アシリパから感じるのは知性、理性、道徳で、変な言い方だけど、ヒトがデザインされているように思う。

杉元にオオカミがデザインされているとしたら、アシリパはウィルク、レタラ、杉元という三匹のオオカミに守られてきたことになる。レタラが飼い犬になれず、独自に家族を持ったことが杉リパの未来を暗示しているようで怖い。二人には永遠に幸せでいて欲しいし、何なら本編終了後もご飯回だけを延々とやり続けてほしい。多くの読者がそう思っていることの証として、ある進撃ネタがバズっていた。野田先生もご覧になったんじゃないか。りぼんで連載してほしい。

アイヌには、白狼が人間の妻になった話や、白狼と女神が結婚して出来たのがアイヌの先祖などの言い伝えがある。アイヌの物語には異類婚が成立するもの、しないものがあるようだけど、神の世界で人の姿をしたカムイが肉体を着て降りてくるのが動物で、仮の姿で婚姻を結ぶことに抵抗があるのかもしれない。神の方から、アイヌの世界では短期間だけ婚姻を結んで、カムイの国に行ってから長く暮らそうと申し出ている話もある。アシリパも姉畑先生の行動にはクエスチョンマークだったので、人間と獣がウコチャヌプコロすることはアイヌ的にも変なんだろう。そうすると、杉リパは死ぬまで結ばれないのか、とか不安がよぎってしまう。しかしゴールデンカムイは伏線の塊なので、干し柿を食べることで狼のような鋭さが消えて、純粋に人としての杉元が戻ってくるのかもしれない。

考え始めるとキリがないけど、少しでも希望が見える様な解釈をしながら最終回を待つしかないだろう。

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