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神さまは、いた〜後編〜

非力な中年女性

「死にこそしない…」魔法の呪文を心の中で唱え、落ち着きを取り戻したものの、事態解決に向け具体的に何をすればいいのか見当がつかない。石を積もうか、抱えてみるか、、、思いこそ巡れど、中年女性は非力である。

ひょっこひょっこ、、、失礼だが、この擬音語とともに一人の男性が坂を上ってきた。たしかに、道中一人だけ上ってきている人がいたな…。「ここは上りたくないわ〜」とFちゃんと話したもの。

「脱輪してしまいました〜!」

助けてくださいのソレではなく、同情してもらえればいいかなぐらいのソレで、思わず男性に声をかけた。正直、その男性はひょろっ〜と痩せ型の小柄で、本気で相撲を取ったら、私の方が勝てそうな風情。車を持ち上げてもらうことは、無理そうだなと思った。すると、男性は一瞬の迷いもなく、

「ジャッキありますか」

ジャッキ?使ったことはないけれど、どこかにあるはず。車内をガサゴソしたところ、あった!後部シートからピッカピカのジャッキセットが出てきた。するとその男性、ジャッキを後部に差し込むやいなや、グン、グン、グン。たちまち車体が持ち上がった。

「スペアタイヤ外していいですか」

いいですとも、いいですとも!お手伝いするべく抱えてみたものの、なにコレ、重たっ!すると男性が横からひょっと持ち、そのまま上がった車体と、側溝の隙間にスペアタイヤを突っ込んだ。するる〜と運転席に入り、エンジンをかける。

ギューーーーーーーーン!!!

タイヤとタイヤが擦れる音が響く。

ダンッ!!!

脱出、成功!
ちなみに前輪も脱輪していたが、ほんの少しの流れ込みの盛り上がりにこぶし大の石が埋まっており、それに前輪をうまく噛ませることで車体を移動することができた。

神〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!

ありがとうございますぅ〜〜〜〜(泣)
この(泣)は本当にこみ上げるものがあり、鼻の奥がツーンとなった。ちなみにここまでの所用時間20分。天神で脱輪して、ロードサービスを呼ぶより、よっぽど早い解決ではないか。まさに、神業!

(無駄に)危機一髪

余談だが、直前までFちゃんの車(N-BOX・燃費良し)で行く予定だった。でも、虫の知らせか「やっぱ、私の車で行こう…」と思い、急遽変更したのだ。あの車高とタイヤの大きさで脱輪した日にゃ、、、車底どころかサイドもバッキバキのズタッズタ。泣くじゃ済まされない。

「お礼をさせてください!」とお願いするも、男性は「困ったときはお互いさまですから」と立ち去ろうとされる。「いやいや、それは逆に困ります。恩は返さないと!」もはや無理矢理、住所をお聞きした。(この道なき道をご存じの)お近くの山慣れた方かなと思いきや、バリバリ都会にお住まいの方だった。おそらく車関係のお仕事や勉強をされた方だろう。夫をはじめ、周囲の友人にこの手法を説明しても、「そんな方法、思い浮かばんね」との返答(唯一、車のプロのK長だけ、この手法があるよと)。翌日、近所のおいしい明太子屋さんにかけこみ、速攻(側溝とすぐに変換される)明太子をお贈りした。安いやつ…いや、ここは高いやつで!

ということで、(無駄に)危機一髪を乗り越え、ほぼ予定通りの時間で登山スタート。当初予定とは逆回りになったことで、登山者のピークがずれ、目的の大船山・御池近辺の人もまばら。初めて挑戦した段原〜風穴ルートも下り基調で助かった(1時間以上、急登を上らねばならなかった)。何より、高塚山・天狗岩周辺の紅葉の美しさよ!360度に広がる紅葉を独り占めならぬ、二人占めできるなんて!山行を初めて、最も美しい紅葉だった。

神の降臨で結果オーライ…ではあったが、普通に紅葉見られて良かったね、で終わればいい話。これを教訓として、さらなる注意と準備をしなさいってことだし、ジャッキの場所と使い方を覚えられたことは、今後の人生に役立つだろう。なにより、Fちゃん、おおごとに巻き込んでごめんね。


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