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芸術研究について学ぶとは/<芸術研究コンセプション><メディア論>など

 芸術研究コースの科目に、調査のための演習である<芸術研究リサーチ>や、美術本の書評や美術についての随筆を書く<芸術研究ライティング>、アートのコンセプトを学ぶ<芸術研究コンセプション><芸術研究リサーチ>などがあった。

<芸術研究リサーチ>は、リサーチの実践、年譜の作り方など。ここで学んだ資料の調査方法は卒業論文のための調査にとても役立った。<芸術研究ライティング>は美術をテーマに文章を書くための演習のような科目だった。美術に関係するエッセイ課題1では、数年前にパリに行った時、美術館に一つも入らなかったが、それでも美術の鑑賞ができた話を提出した。課題2は、書評の製作で、前の課題と連動するようにパリのカフェと文学についての随筆を選んで初めて書評なるものを書いてみた。これは、単なる読書感想文にならないように気をつけなくてはならなかった。<芸術研究コンセプション>はアートを多方面から論理的に分析し、その概念について勉強する科目だった。課題1は、任意の美術作品を選び、その美術評論においての比較調査レポート。これは図書館で資料を探してレポートを作った。課題2は、任意の造形活動の問題と解決法で、自分がボランティアとして関わっている製作活動について報告したが、こちらは難しく、ギリギリで合格だった。レポートの観点が間違っている箇所について丁寧に講評をいただいた。

 この三科目は、オンデマンド授業だったが、テキストを読むよりは映像での説明は入りやすかった。成績はどうあれ達成感もあった。卒業後にさらに勉強を重ねて学芸員を目指す学生にとっては、初めての演習、まず初めの筋トレのようなレポートなのではないかと思われた。

 一年目の勉強で、特に苦労した科目は<メディア論>だった。何をどう調査すればいいのか全くわからなくて悩んだ。この科目は、初めの一年で取得しないと次年度の実習科目が受講できない履修システムになっている。で、これを落としてしまった自分は、よって、二年目で実習のスクーリングに参加できなかった。

 <メディア論>の学習指導書には、表記載の調査項目が並んでいたが、博物館に少しも明るくないので意味がよくわからなかった。メディアとは? 一次資料とは? 二次資料とは? 視聴覚機器とは何か? 視聴覚機器の利用を調査するとは? 課題のために十数の博物館を、場合によってはそれぞれ数回訪問したが、その半分くらいは課題のテーマとは合わなかったため、レポートにはならなかった。

 通信課題の中では<メディア論>は難易度が高いようで、ネットの中のあちこちの日記で困難な状況が記されていた。自分は課題2が再々提出で、かつての文学部で何度もDで戻ってきて先生と文通状態になった<十九世紀フランス文学>のレポートと同じように、何度もやり取りしたのでしまいには分厚くなったレポートをA4封筒で送ることになった。質問票をもっと出すべきだったのかもしれない。この課題に半年以上かかってしまったので他の科目に皺寄せがいった。博物館がとても好きで通うような人にはきっと向いている課題なのだろうと感じた。学芸員の勉強を体験しなかったら、こんなに博物館に通うこともなかっただろう。

 年度末に校内アンケートがあったので、この科目はスクーリングにした方が学生にとって理解度が上がるのではないかと記してみた。スクーリングであれば疑問があっても先生にその場で質問できるし、取り組みやすくなる。スクーリングで学んだ科目はやはり勉強した感が強く残っている。

 通学生の頃はデザイン科グラフィックデザイン専攻という場所にいて、一応美術系の範囲の中で勉強していたはずなのだけど、自分の実習作品を作るばっかりで周囲はほとんど見えていなかった記憶がある。無論、芸術論や美術論や芸術哲学などにも全く興味もなく、実技科目ではない科目で提出したはずのレポートもきっと「作文」程度だった。読むといえば漫画ばかり、あわよくば漫画家になりたいなどと考えていた。

 世の中には、こんなに芸術美術について研究している人々が存在していて、それぞれの分野であれこれと語り続けていることをあらためて知ると、なんだか深い星群の中に紛れ込んだような気がした。
 そして、まだまだ芸術研究の科目は続くのだった。

 

 

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