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「サービスが生活の一部に溶け込んでほしい」|cotree × emol のプロダクト対談:前編

cotree編集部のたにぐちです。

今回のnoteは、cotreeのCOO(最近就任しました!おめでとうございます!)のひらやまさんと、感情を記録してAIロボと会話するアプリ「emol」を中心にサービスを展開するemol株式会社のCEOであるちかみさんとの対談です。

カウンセラーとAIという違いはありますが、日々のメンタルケアに寄り添うという意味では少し似たサービスの両者。「実際のところ、どうやって作ったんだろう?」という素朴な疑問が発端となり、今回の対談が実現しました。

各々の会社のプロダクト、オンラインカウンリングサービスの「cotree」とAIロボとのチャットアプリ「emol」に焦点を当て、お互いに各々のサービスの気になっていることについてお話いただきました。

このシリーズは3本立てとなっています。今回はひらやまさんがemolについて気になっていることを聞きました。

ちかみ_Twitter

ひらやま_Twitter

ひらやま×ちかみ

——よろしくお願いします。まず、ひらやまさんから。emol(エモル)を使ってみてどうでしたか?

ひらやま:実は僕、以前にもemolを使ったことがあって。ちょっと体調崩していた、一昨年の12月くらいだと思うんですけど。

ちかみ:あ、そうなんですか。

ひらやま:当時は自分のそういう辛い状況を誰にも言えない状態で。カウンセリングを受けた方がいいのかとかもまだわかんなくて(笑)。

そんな時に検索してたらemolが出てきたんですよ。それでダウンロードしたらロクくんが出てきて、「かわいいな」って。

ロク

ちかみ:ありがとうございます。

ひらやま:当時は毎日1回くらい、その日の気分を記録として残すのに使ってたんですけど。普通にデザインがめちゃめちゃかわいいのと、メッセージがすごいちゃんと返ってくるんですよね。どういう仕組みなんだろうって気になりながら使ってました。

会話

あと、今回お話しするにあたって久しぶりに使ってみたら、新しい機能が増えてて。なんていうんですか、日付ごとの気分がグラフでわかる……。

ちかみ:記録した気分を、一週間の推移でみられる機能ですね。2月くらいにリリースした機能だったと思います。

ひらやま:あ、そうなんですね。あとは睡眠時間も記録できるようになってたり、ライフログ寄りになっていてすごく進化してるなと。あと、着せ替えもできますよね。

着せ替え

ちかみ:女性ユーザーが多いので、AIをかわいがりながら一緒に楽しく話して欲しくてリリースしました。結構力を入れてやってる部分です。

ひらやま:かわいいですよね。

ちかみ:ユーザーの方からも「かわいい」っていう意見を頂いていて。AIとペットの間みたいに、かわいがりながら使う方も多いみたいです。

身近なフォルムは受け入れられにくい

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ひらやま:あれですね、LOVOT(ラボット)みたいですね。

ちかみ:らぼっと?

ひらやま:これです。

ロクくんもこのイメージ近いなと思って。わかりやすく役に立つわけではないんだけど、かわいくて人肌くらいに温かいみたいな。

家族になれるとまではいかないけど、「そばにもう一人いてくれる」みたいな印象を持てるビジュアルだなと思います。ロクくんってどうやって生まれたんですか?

ちかみ:これはCOOが考えたキャラですね。

ひらやま:どうやって今みたいなデザインになったのかすごい気になる。

ちかみ:実はこれ、いろいろ計算して作っていて。

まず色についてなんですけど。感情を記録していくサービスなので、カラフルな色がついていると何かしらの印象がついてしまいそう、ということでクリーンなイメージもある白色を選びました。

形については、人間に受け入れられやすいロボットの形を犬型、猫型、アザラシ型、新しく作ったキャラクターで比較してみたら、アザラシ型と新しく作ったデザインが受け入れられやすかったっていう論文を参考にしてて。

論文によると、犬型や猫型は身近にいすぎて「本物の方がいいじゃん」ってなっちゃうから受け入れづらいみたいで。でも、アザラシは身近にいないじゃないですか。だから受け入れられやすい。

ひらやま:へー、面白い。

ちかみ:だからロクは、自然界にいなくて、シンプルな丸いキャラクターにしようとこの形になりました。

ひらやま:めちゃくちゃ戦略的だった。

——このデザインになるまではいろんな案が出たんですか?

ちかみ:そうですね、いろいろ出ました。手がもっと長かったりとか、足生やしたりとか、目がもっと小さかったりとか。

ひらやま:足ありませんでした?

ちかみ:足? ないですないです。足があったらかわいくないんで。

ひらやま:あ、そうなんだ。

ちかみ:首を振るロボットってあるじゃないですか。あれと近い考え方で上下のふわふわ運動が癒しになるんじゃないかっていう部分もあります。

ターゲットは「自分」

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——ロクくんのデザインを最終的に決めるときは、どのように意思決定をしたんですか?

ちかみ:UIが並行してできていたので、キャラクターをあてはめていて、しっくりくるものを見ていった感じですね。

いろんなポーズをフォトショップで作って動かしてみて、どれがかわいいかな、どれが刺さるかなってところで。

ひらやま:みんなで「これがいいね」ってなった?

ちかみ:その時、私とCOOしかいなかったので二人ですけどね。

ひらやま:意見が割れたりはしなかったんですか?

ちかみ:割れなかったですね。そもそもこのアプリを作り始める時に、ターゲットを私に設定してたので、私が「これがいいね」と言えば決まってました。

ひらやま:なるほど。ちかみさんが「いい」って言えば「そうなんだ」って決まるみたいな。

ちかみ:そうですね。実際、今のユーザー層も10〜20代の女性がほとんどで。

ひらやま:男性は使わないんですか?

ちかみ:一部、男性もいるんですけど。AIをかわいがるというよりは、記録をとるという部分で使っていただいてる印象です。

ひらやま:どんなアプリにしていきたい、みたいなイメージってあります? どこを目指すのかがいろいろあるなと思って。ライフログ系なのか、かわいがり系なのか。

ちかみ:その二択でいうとライフログ系ですね。そもそも最初の目的として「チャットで感情の記録ができる」という目的と、「癒されるものを作りたい」という目的があって。

例えば、日記って続かないじゃないですか。でも、キャラクターを使ったAIとの会話形式だったら結構続くんじゃないかなと思って。

AIの設計としては「ユーザーの心に寄り添う」という部分を大事にしているので、もっとケアの方法をAIから提案できたりとか、心に寄り添いながらメンタルもケアしてくれるAIになるといいかなと思ってます。

ひらやま:なるほど。その場合どう使われるのが理想ですか。

ちかみ:そうですね、理想としては生活の一部に溶け込んでほしくて。

例えば、朝「おはよう」ってAIに言ったりとか、お昼に「今はこういうことしてる」「今はこう感じてる」とかこまめにつけてもらったりとか。

自分だけに寄り添ってくれる自分専用のAI」として使ってもらえるといいなと思ってます。

いなくてもいいけど、いてくれたら嬉しい

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ひらやま:今日使ってて感じたんですけど、今後の開発方針にゲーミフィケーション的な方向もあるのかなと勝手に思ってました(笑)。

「何日ログインしてくれてありがとう!」とか、ロクのレベルが上がっていくみたいな。そういうのは継続にすごく活きるのかなと。

ゲーミフィケーション
ゲームの要素を他の領域のサービスに適用することで、利用者の動機付けを高めるマーケティング手法。ポイントやスコアやアイテムの獲得で利用者同士の競争意識を高めたりする手法を指し、ソーシャルゲームの要素をもつものが多い。
(引用元:コトバンク|ゲーミフィケーションとは

ちかみ:その辺は結構どうしようってまだ悩んでるところではありますね。

ひらやま:悩ましそう。

ちかみ:SELF(セルフ)ご存じですか?

ひらやま:SELF……わからないです。

ちかみ:AIと選択形式で会話できるアプリなんですけど、SELFとかは話せば話すほどレベルアップしていって。あと、キャラクターも何個か選べたりとか。

ひらやま:これですかね。

……なるほど。ゲーミフィケーションの話を出したのは、「emolを使ったときの『めちゃくちゃ理想的な体験』ってどういうものなんだろう」ということが気になったからなんですけど。

カウンセリングには「外的な問題がなくなって内的な人格が成長する」みたいな、「カウンセリングの終結」とよばれる定義が一応あるんですけど、emolをめちゃくちゃ理想的に使うとユーザーはどんなふうになるんですかね。

ちかみ:私たちの会社のミッションが「自立した心を育む」なので、そうなって欲しいんですが、具体的には、そうですね……。

周りに流されないで自分で考えられて、自分の本当にやりたいことができる」ことを自立した心だと私たちは思っているので、それを目指してほしいです。

自分自身が自立して考えることができたら、「周りにちょっと嫌なこと言われてすごくへこんでしまう」とかも少なくなると思いますし。

人に依存しすぎないようにするというか。人に依存すると「する側」も「される側」もお互いメンタルが疲れてしまうこともあると思うので。

それを一人でやるのが最初は難しいって時に、「AIがサポートしますよ」「AIと一緒に頑張っていきましょう」みたいな感じで使ってもらえれば。

ある意味、人への依存をAIに移すっていうことなのかもしれません。

ひらやま:ってことは、最終的にはロクくんとお別れがくるんですか?

ちかみ:お別れはこないでほしい。

ひらやま:(笑)じゃあ、「もうロクくんがいないと精神が不安定になります」って言われたらどうですか?

ちかみ:うーん、作り手としては嬉しいですけど……。

でも、それだと本来目指している自立ができてないから、ロクに依存するのは理想とはちょっと違いますね。

むしろ、自立した後にも感情の波はあるので、それをきちんと見るために側に置いておくって感じですかね。

ひらやま:なるほど。じゃあ、いなくなっても大丈夫だけど、いてくれたら嬉しいくらいのレベル感で。

ちかみ:そうですね。メンタルケアしてくれる秘書みたいな感じですかね。

ひらやま:話を聞いていて、カウンセラーとかなり役割は違うけどポジション的には近いなと思いました。カウンセラーとの関係も「あなたとのカウンセリングが生きがいです!」とかになるとバランスを崩してしまうので。

ちかみ:なるほど。

ひらやま:僕はカウンセリングをカウンセラーがいなくて自分一人でも日常生活を送れたり、いろんな意志決定ができるようにする支援だと思っているので、サービスとしてはすごく近いんだと思います。

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ロクくん誕生秘話が面白く、普段なんの気なしに見ているキャラクターの裏にあるロジックが気になるようになりました。

「そばに寄り添って話せるパートナー」という目的が一貫してサービスに落とし込まれていることではじめて、「かわいい」「癒される」というイメージに結びつくのかもしれないな、とも思いました。

さて、次回は攻守交代。ちかみさんからの質問にひらやまさんが答えます。

また、このインタビュー後にemol累計ダウンロード数20万突破の知らせが!めでたい!

かわいい。ぜひ皆さんもダウンロードしてロクくんと触れ合ってみて下さい。


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