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【アルバムレビュー】富士葵さんの全アルバムに1週間向き合ってみた結果の報告

この記事は、私が富士葵さんのアルバム、
「有機的パレットシンドローム」
・「シンビジウム」
・「THINK  YOUR WORLD」

上記3枚に1週間向き合った、その結果の報告です。
基本的には「THINK  YOUR WORLD」の感想をメインとしています。

そこそこのボリュームの記事になりますので、まず最初に簡潔にまとめます。

お忙しい方は以下の三行だけ読んでいただければ、大丈夫です。

・THINK YOUR WORLD は本当に最高!
・富士葵さんのお歌、すごい!
・早く次のライブやってくれ~!


以上です。
それでは本編に入ります。



注意

・私の富士葵ファン歴は半年程度です。無知な中で考察をしております。

先入観なしの感想を書いています。他の方のレビューや、各楽曲のリリース日等、曲以外の情報を一切頭に入れておりません。
よって、色々と考察をしておりますが、全て妄想、憶測であり、率直な感想となっています。「それは違うよ」があっても許してください。
各曲、思い入れの強い人に対しては申し訳ないですが、一つの意見として捉えてください。

歌詞の話題はほとんど出てきません。私は歌詞を感じるのがとても苦手で、歌詞の内容すら理解しないまま感想を書いてます。

一週間で詰め込んだため、さらに聞き込むと感想は変わると思います。
音楽の感想は様々な要因によって変わりますので、あくまで現時点での感想です。

経緯(ほぼ自己紹介&ネガティブな内容も含みますので、読み飛ばしてOKです)

私は日本のポップスを普段ほとんど聞きません。伝わる人に伝わるような言い方をすると「Pitchforkのレビューを毎日チェックして、難しい顔をしながら聞く」みたいな音楽リスナーです。
日本のポップスについてはほとんど聞かないばかりか、苦手意識すらありました。

そのため、富士葵さんについては様々な企画をするYouTuberの1人として見ており、歌の面は重要視せず楽しんでおり、曲に関しては数曲を何回かしか聞いていませんでした。

そんな中、ライブがあるとの事で、せっかくだしと思い会場に足を運びました。
自分もそれなりに音楽を聴いているという自負があったので、馴染みの無いジャンルの初見の曲でも、それなりに楽しめるだろうと思っていました。

いざ、ライブに参加してみて感じたのは孤独感に近いものでした。
リスナーとしての経験が浅く、ライブを100%で楽しめてない自分と、楽しそうな観客との間に温度差を感じてしまい、私としては不完全燃焼に終わったライブとなりました。
ただ、会場の皆様の笑顔や熱気はとても伝わりましたので、幸せで良いライブだったのだな、とは思いました。

ライブ後、感想ツイートを見ていくうちに、楽しそうな輪の中に入れなかった自分に腹が立ってきました。

次のライブではその輪の中に入れるよう、歌手としての富士葵さんの魅力を知るため、アルバムの聴き込みを始めた次第です。

そして、実際に毎日数時間ほど聞き込んでみたところ、「THINK YOUR WORLD」がびっくりするほど良いアルバムで、富士葵さんのお歌が非常に良いものだと気付かされました。

X(旧Twitter)で「音楽好き」を自称する以上、現在の私が富士葵さんの歌から何を感じているのか、何かしらの形に残したいと思い、こちらの記事を書いております。

経緯としては以上です。
人様の目に触れる以上、ネガティブな内容を含む本項を書くかどうかは非常に悩んだのですが、本音で書くのが誠実だと思いましたので、あえて書かせていただきました。

それでは、以下、富士葵さんのアルバム「THINK YOUR WORLD」の感想をメインに、アルバム3枚の感想を書いていきたいと思います。


有機的パレットシンドローム 感想

まずは一枚目のアルバムの感想を書いていきます。
このアルバムを初めて聞いた時の第一印象は「富士葵vs様々な曲 10本勝負!!」でした。
数回聞いた今でもその印象は変わっていません。

「とにかく色々やってみよう」という雰囲気がバラエティに富んだ曲調や歌声から感じられました。

全体的に良い意味で素朴&がむしゃら&試行錯誤で、とにかく一生懸命歌っているのを感じました。
その中でも「MY ONLY GRADATION」にて一生懸命に声を出す姿が私は好きです。
この「こなくそ!」という声が聞こえてきそうな歌い方は、初期ならではという気がして良いですね。

「イタリアンレストラン」や「エールアンドエール」における絶妙に垢抜けない感じも後の2枚を知っていると味わい深く、愛らしい曲だと感じます。

また、このアルバムではほか2枚よりも「キレイな低音」を楽しめる曲が多いと感じました。
「まだ希望に名前はない」「ユメ⇒キミ」等が顕著だと思います。

富士葵さんは普段の話し声から低音の響き方がキレイな方だなと思っていたのですが、このアルバムにおける低音の響きの美しさは想像以上でした。
このくっきりと輪郭のある低音はかなり好みです。

また、試行錯誤の中に現在の歌声を思わせるものも見え隠れするので、アルバム3枚がリリースされている今聴くと「エピソード0」感があって良いアルバムだと思います。

個人的には「まだ希望に名前はない」の伸びやかで優しい歌声とメロディが好きです。




シンビジウム 感想

2枚目、シンビジウムの第一印象は「固さが抜けてシンガーとしてかなり仕上がってきたな」という、そこそこあっさりした印象でした。

しかし、このアルバムは聴けば聴くほどその特異さが見えてきて、自分の中でも聞くたびに感想がくるくる変わっています。

曲調のせいなのか、歌詞のせいかのか、本人の心情のせいなのはわかりませんが、全編通して張り詰めた空気が漂っていて、かなりカロリーの高いアルバムになっていると思います。

私がこのアルバムをX(旧Twitter)で「ベアナックルボクシングみたいだ」と言い表したのは、このアルバムの「ストレートに気持ちを伝えてくるような歌声」が素手のパンチのように感じたからです。
「殴られているこちらも打ちのめされるけど、殴る方も痛いに違いない。お互いボロボロになりながらトランス状態になっていく」
そんなアルバムだと感じました。

一曲目の「シンビジウム」からフルパワーで迫ってくる歌声にかなり圧倒されます。
やりすぎなくらい壮大な伴奏をしっかり乗りこなしており、前作のがむしゃらさが嘘のようです。
まるで長い修行から一回り大きくなって帰ってきた戦士のようだと思いました。

一曲目に圧倒された直後に畳み掛けるように「Eidos」流れてきます。
前作の「MY ONLY GRADATION」におけるがむしゃらさは影を潜め、どっしりとロックを歌う富士葵さんが目の前に現れます。

それ以降も畳み掛けるようにパワー全開でこちらに迫ってくる歌声にただただ圧倒されます。

アルバム通してずっと心の中をぶちまけてくるような歌声は、次第に絶叫にすら聞こえてきます。
アルバムが進むごとに傷だらけに、ボロボロになっていくのが見えるようです。

そんな中、最後に流れる「紫陽花が泣いた」は聞くたびに私の胸を打ちます。

私は現時点ではこの「シンビジウム」と「THINK YOUR WORLD」が対照的なアルバムだと感じています。
(この話は長くなるので、後述いたします)



THINK YOUR WORLD 感想 (全曲 そこそこ詳しい感想つき)

続いて最新作、THINK YOUR WORLDの感想です。こちらが一応本編です。

結論から言いますと、このアルバムは名盤と言って差し支えないと思います。少なくとも、私にとっては名盤です。

今作は前作「シンビジウム」のようにフルパワーで殴ってくるものではなく、非常に軽やかで楽しく上品なアルバムだと感じました。
そして、ただ単に軽いわけではなく、そこに何かピンと張った緊張感のようなものがあります。

ですが、それは前作「シンビジウム」のような剥き出しの感情によるものではありません。例えるならサーカスを見ているようなドキドキとワクワクです。
それは、曲芸を軽々とやってのける達人を前にした時の高揚感と緊張感です。

この緊張感に気づくと、もうこのアルバムから目が離せなくなり、あっという間に最後まで聴いてしまいます。

その緊張感の正体はおそらく繊細な歌声にあるのではと現在は思っています。

声色、声量、息遣い、タイム感、発音、全てが繊細にコントロールされており、前作までと比べて表現の幅が一気に広がった印象があります。

前作までは「歌声」と「話し声」がスイッチを切り替えるように別物だったのが、今回はそれらがシームレスに繋がっているような、そんな印象です。
その結果、歌声の情報量が前に作と比べて段違いで多くなっていると思います。

「話すように歌う」という言葉がありますが、このアルバムで聞ける歌声はまさにその言葉がぴったりだと感じます。
しかも、ただ話すのではなく、例えるなら朗読劇を聞いているかのような質感で、まるでこちらの手を引いて「こっちこっち、こんな世界もあるよ」と本を読み聞かせてくれるような歌声です。

「朗読劇のよう」と表現しましたが、今作の歌声はシンプルな「気持ちを込めて歌う」というものだけではなく、「語り手としてのメタ視点」のようなものを感じます。
シンプルな心情の吐露ではなく、聞き手側がどう受け止めるのかを常に意識した歌声が、このアルバムの全体の心地よさにつながっている。そんな印象です。

今作全体の感想はこのような感じです。
それでは、各曲の感想にまいります。

・Revive the world

アルバムの開幕として100点満点すぎる曲だと思います。
ハッピーで上品です。思わず踊り出したくなるような素敵な曲だと思います。
この曲は楽しさと軽さの中に確かにある緊張感が素敵な曲です。
優しく話しかけてくるような出だしから、跳ねるようなサビ、曲にのせて目まぐるしく変わる声色はまるでサーカスで曲芸を見ているかのようです。
そのドキドキ感とワクワク感は、私をこのアルバムの世界の中にすごい勢いで引き摺り込んでいきます。
目まぐるしく変わる風景が、このアルバム全体の紹介をしているようであり、今作を象徴した曲に感じられます。


・テイストレス

個人的にはこの曲は一曲目とセットと思っています。
楽しさいっぱいのオープニングから、まずは一話目、色々な世界を巡る旅の本編が始まったような感覚がたまりません。
出だしは「Rivive the world」と同じようなウィスパー気味の声ですが、声色が少し変わるだけで世界観が全く違い、声色ひとつでここまで雰囲気が変わるのかと少し驚きます。
まるで声そのものが舞台装置のようです。
「Revive the  world」にて、ストーリーテラーとしてオープニングを演出した事により、ある種の上位存在となっていた葵さんが、2曲目では物語の登場人物になりきり、情感たっぷりに紹介している様が「これから様々な世界をこんな感じで紹介していきます!」と言っているようで、好きです。

・永遠観測

ファーストアルバムの「MY ONLY GRADATION」からのえげつない進化を感じる曲だと感じます。
当時は本当に一生懸命でがむしゃらにやっていた印象でしたが、今回はがむしゃらさを繊細に演じているような印象があります。
私はこの曲のサビにおけるアタック感の強い歌声が好きです。
噛み締めるような発音から生まれるリズムの揺らぎは、ロックのキモだと思います。
音符と音符の隙間の「間」に、感情は宿るのだなと再確認させられます。

・相関性メモリア

前の曲で少し熱った体にちょうどいい軽さと柔らかさが心地いい曲だと思います。
上品でキュート。笑顔が目の前に見えるような声色です。
曲全体のグルーヴ感がすごく良いなと感じます。
特に歌声のリズムの オン/オフ 具合が私の好みです。
跳ねるような歌い出しから「崩れてく パズルは〜」パートではゆったり、そしてサビに向けてのノリの切り替えがあまりにも気持ちよくて、思わず身体が動き出します。

・クリティカルシンキング

リズムの複雑さによる緊張と緩和が魅力的な曲だと思います。
そして、歌のダイナミクスの付け方が非常にクールな曲だと思います。
サビに入ってもかなり抑えて歌っているところが非常にクールで、各パート毎に絶妙な加減で少しずつ力強くなる歌声がたまりません。
そういう演出を経た後のラストのサビの力加減がクールかつエモーショナルで本当に素敵な曲だと思います。

・雨降るスノードーム

とてもパーソナルな世界観で、生活感があり、とてもいい質感の曲だと思います。
ゆったりした曲がモッタリしすぎないような、軽やかなタイム感の歌声がとても気持ちいい曲です。
部屋の中から思い出の世界へ、そして最終的には幻想的な世界(心象世界と言っても良いかもしれません)に誘ってくれるような変化がとても美しいと思います。
感想としてはあっさりしていますが「このアルバムで1番好きな曲は?」と聞かれたらこの曲か「相関性メモリア」か「Revive the world」のどれかを答えると思います。

・キララハル

エモーショナルな歌詞を「本人になりきって感情を込める」のではなく「気持ちのこもった朗読」くらいの温度感で歌う事で、聞き手に感情移入の隙間を与えているような印象です。
そしてそれがこの曲の爽やかさと切なさに拍車をかけているように感じます。
その中に入り込んでくる「あ、えっと」「バカみたいだ」、鼻歌、ラストの交差点の音 といった具体的な意味を持つフレーズ(音)が、絶妙に聞き手の想像力を掻き立てます。
物語を聞き手に委ねることで、聴く人それぞれに違う形の宝物が生まれる様が、非常に美しいと思います。

・Coke=High

これまでの作品の中でも1番と言って良いほどの激しい曲調の中で,
キリッと歌う姿がとてもかっこいい曲だと思います。
「永遠観測」の感想で「噛み締めるように」と表現しましたが、これまでのロック調の曲は多少の泥臭さのようなものがありました。
しかし、この曲については終始クールに歌い上げています。
そういう意味では「イタリアンレストラン」や「Q.E.D.」で聞かせてくれた「大人な富士葵」の系譜なのかもしれません。
そして、このゴリゴリの曲の中でも繊細な押し引きは健在で、疾走感が支配する曲の中でも表情の変化が感じられて、とても良いと思います。

・キミの声が聞こえる

この曲の前まで「素晴らしい語り手」として私の横で朗読劇をしていた富士葵さんが、急に本を閉じてこっちに顔を向け、話をし始めるような印象のある曲です。
いきなり現れる気持ちが剥き出しになる歌声は、あまりにも不意打ちで、いつも私の身体をざわつかせます。
「シンビジウム」の時のような、気持ちを直にぶつけてくるような歌声ですが、当時のような痛々しさは無く、とても幸福感に溢れた歌声です。
不意打ちな歌声とシリアスな曲調は「ちょっと真面目な話をするから聞いて」と言われたようなソワソワ感があり、歌詞を聞き取るのが苦手で理解するのを半ば諦めている私の頭にも、スッと歌詞が入ってきました。
ラストのサビには決意を感じるような力強い声色が聞こえてきて、先日発表となった「完全独立」の文字が私の頭を過ります。
この曲は歌手としてだけでなく、1人の人間としての富士葵さんの魅力もつまった曲だと思います。

・Bouquet

アルバムのフィナーレとして最高の曲だと思います。
様々な感情をポジティブに歌い上げる姿は、このアルバムで紹介された物語のそれぞれの悲喜交々を、全てハッピーエンドにするパワーがあると思います。
その様は「名残惜しいけど、まあハッピーだしここで終わるのがキレイだよな!」
という気持ちにさせてくれます。
しかも、単なる終わりではなくその先の未来を感じさせるような曲で、このアルバムがまだ通過点でしかないという事を思い出させてくれる、希望に満ちた曲だと思います。

・Happy Starry Night

ボーナストラックなのでこちらもボーナストラック的にラフな口調でレビューしま〜す!
こういう感じのボーナストラックって最高!
本当におまけのサービスって感じで良い!
ライブのアンコールとかも「アンコールありきのエモい選曲」よりも本当にオマケ感がある選曲の方が好きなんだよな。
LED ZEPPELINがアンコールで「The Ocean」やるみたいな。
そんな曲です!

以上、THINK  YOUR WORLD の全曲の感想でした。



「シンビジウム」と「THINK YOUR WORLD」について

私は「シンビジウム」と「THINK  YOUR WORLD」の違いについて、第一印象では単なる「進化」として捉えていましたが、1週間かけて聞き込んでみた現在では、この2作が対になっているような気がしてなりません。

少なくとも、現時点の私の世界では、この2枚は「双耳峰」です。
陰と陽、赤と青、ハートゴールドとソウルシルバー、うどんと蕎麦etc… のようなイメージです。

「シンビジウム」における歌声は先の感想でも書きましたが「ストレートに気持ちをぶつけてくる素手のパンチ」のように感じています。
余計な演出はせず、気持ち一本で腹の中を吐き出しているような、そのような印象です。
そして、全体に立ち込める重い雰囲気と痛々しさはこのアルバムの魅力の一つであると思います。

それに対して「THINK  YOUR WORLD」の歌声については「朗読劇を演じるような語り」だと私は感じています。
ある種のケレン味があるというか、全体的に何かを演じるように歌っているような、そんな印象があります。
そして、こちらのアルバムは全体的に軽やかかつ多彩で、様々な悲喜交々を楽しめるところが魅力の一つであると思います。

その違いが、この2作が対照的であるように感じる部分です。

収録されている曲が違うからそう聞こえるだけだ、と言われればそれまでですが、こちらもオタクですので、気付いた何かに意味を見出したくなってしまうのです。
作り手側の事情としては様々なことが想像できますが、聞き手目線ではそれらは知った事ではありません。

実情がどうあれ、私はこの2枚のアルバムからは何か物語めいたものを感じてしまうのです。

シンビジウムから感じる抑圧や不安感と、THINK  YOUR WORLDから感じる解放感の間には何か大きな心境や環境の変化があったのではないか?と、そう勘繰ってしまいたくなります。

そういう想像をしてしまってから聴く「シンビジウム」と「THINK  YOUR WORLD」からは、単体で聞くだけでは感じられない機微が感じられ、双方の魅力がグッと底上げされるような気がします。

そして、そういう魅力に気付くと「リアルタイムで物語を目撃してきたファン」の人たちに対する羨望の気持ちが湧いてきます。

私はここ数ヶ月で好きになったいわゆる「新規オタ」なので、リアルな物語を感じる術はありません。

これまでの富士葵さんの物語を生で体験してきた従来のファンの方々は、私より複雑な深い思いを持ってこれらの曲を楽しめるのだな、と思うと羨ましくて仕方がありません。

ですが、幸い富士葵さんの物語はまだ続いています。私はこの羨望の気持ちを胸に、より富士葵さんのこれからに注目し続けて、物語を体験していきたいと思いました。



最後に

今回は、先入観無しでの感想をまとめましたが、理由は単に「時間がなかったから」であり、先入観無しで楽しむことを尊んでいるわけではありません。
曲の周辺の情報というのは、食べ物で例えると器や照明や盛り付けのようなものです。
聞く曲は同じでも、周辺の情報を知れば得られる体験はより豊かで楽しいものとなります。

一週間の「先入観なし聞き込み」を終え、感想をまとめ終わった今は、言わばやっとスタートラインに立った状況です。
今後は「作詞作曲はだれなのか?」「どういうタイミングでリリースされたの?」「他の人はどう感じているんだろう?」等、色々調べて、より豊かな体験をしていきたいと思います。

以上、長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。



おまけ「有機的パレットシンドローム」「シンビジウム」 全曲ひとこと感想

せっかくなので全曲の感想をひとことで簡単に記載していきます(一部「ひとこと」で収まっていないものもあります)


「有機的パレットシンドローム」全曲感想


・はじまりの音
ファーストアルバムの一曲目にこのタイトル。
「なるほどね」という感じでした。
イントロのスネアから開始10秒で伝わるくらいコンセプトが明確で、良いと思います。
キレイな低音と一生懸命さが爽やかで良いと思います。
この曲は自分の中で思い入れを育てていくことで、数年後にさらに気持ちよく聴ける曲になると思います。

・MY ONLY GRADATION
とにかくがむしゃらで好きです。
完成される前の過渡期にしか味わえないがむしゃら感は、激しいバンドサウンドと富士葵さんが戦っているようで、聞いていてかなり熱くなります。
負けず嫌いな富士葵さんの「こなくそ!」という声が聞こえてきそうな、力いっぱいの歌声が素敵です。

・まだ希望に名前はない
優しく伸びやかに低音を響かせる歌声で、優しいメロディを歌い上げる姿がとても素敵な曲だと思います。
とても良い意味で素朴な味わいで、心の隙間に染み渡るような質感が好きです。
クイーンの「オペラ座の夜」に収録されている「マイ・ベスト・フレンド」を思い出します。
アルバムにこういう曲が入っていると全体の満足感がグッと上がるんですよね。
終わり方がフェードアウトなのも個人的に好みです。
今のところ、このアルバムの中で1番好きな曲です。

・Let it snow
曲調に似合わず、がむしゃらで力いっぱいの歌い上げで、個人的には「MY ONLY GRADATION」に似ているな、と感じました。歯を食いしばりながらこちらに向かってくるような歌声で、この曲も独特な熱さを感じます。
ここからシンビジウムへの進化を考えると、富士葵さんの向上心の凄さを感じます。

・イタリアンレストラン
90年代みたいな世界観で(失礼を承知で書きますが)絶妙な垢抜けなさが愛らしい曲だと感じています。
試行錯誤の中で生まれた曲という印象で、この曲で生まれた表現が後のアルバムの曲にもつながっていったという一面もあると思います。

・エールアンドエール
この曲については「Aria」のライブバージョンがあまりにも良くて、ライブのアーカイブで聴いたことで一気に好きになりました。
「喜怒哀楽」の「楽」の部分をとにかく刺激してくる曲なので、頭を真っ白にして楽しみたい曲です。
「Aria」のライブバージョンの歌い方と観客の声がとにかく良かったので、いつか音源化してほしい!という気持ちが強いです。

・オーバーライン
固さが少し抜けて、のびのびした声が印象的な曲です。一枚のアルバムの中でも様々な変化、進化が感じられるところがエピソード0っぽいところで、良いと思います。

・KieR◁N
音数の少ないバラードで、当時の歌声の魅力がわかりやすい曲だと思います。
ウィスパーボイスによる丁寧なダイナミクスは最新作の繊細な表現にもつながるように感じます。

・君のミライ
全曲でしっとりした空気を優しく飾らない歌声で爽やかにしてくれる良い曲だと思います。

・ユメ⇒キミ
ドスの効いた低音ボイスが気持ちいい、魅力的な曲だと思います。
アルバムの最後にふさわしい、アンセム感のある曲で良いですね。


「シンビジウム」全曲感想

・シンビジウム
前作「有機的パレットシンドローム」を効いた直後に聞くとその進化にとにかく驚かされます。
ものすごい迫力の、過剰なくらい壮大な曲に一切負けていない落ち着いた歌声には、単純に圧倒されます。
これだけの音の洪水をちゃんと乗りこなして歌う様は歴戦の戦士の風格です。

・Eidos
前作の「MY ONLY GRADATION」のがむしゃら感が嘘のような落ち着きがあります。
落ち着きがありつつもパワフルな歌はやはり歴戦の戦士の様です。
豪傑から繰り出されるまっすぐで素直な歌声はすごい攻撃力で心を打ちます。

・チョコレート
自然で優しい歌声ながらも、心の中を直でぶつけてくるような声色と、曲全体の構成を意識したダイナミクスが非常にエモーショナルでいい曲だと思います。
このアルバムの最初の三曲は「前作と比べて格段にパワーアップした富士葵」の成長の結果を色々な方法で紹介してくれるような構成で、一気に歌声に引き込まれます。

・コヨーテ
まだアルバムの前半ですが、早くもこの曲からこのアルバムの畳みかけが始まります。
進化した表現力で、心の中をストレートに投げつけくるような歌声がとにかくアツいです。
この曲については身体全体で歌っているような印象があり、そのグルーヴ感も魅力の一つだと思います。

・Anitya
この曲から本格的に歌声による私たちへの直接攻撃が始まる印象があります。
こちらを睨みつけながら全力で気持ちをぶつけてくる歌声は、数回聴いただけでは消化するのは難しいですが、受け止め方を学ぶと妙な恍惚感があります。
そしてそれはこのアルバムの真骨頂でもあると思います。
この曲は、聞けば聞くほど感想が変わるこのアルバムを象徴する曲の一つでもあるように感じます。

・Q.E.D.
なんとなくレトロな雰囲気もあり、「イタリアンレストラン」が垢抜けたような曲&歌声だと感じました。
ドスの効いた声で鬱屈した気持ちを吐き出す歌声は攻撃力が高く、私の心がさらにもみくちゃにされていくのを感じます。

・ヨスガノカケラ
一曲目の「シンビジウム」のような重さと壮大さに圧倒される曲です。
この壮大さもしっかり乗りこなした上で歌声をぶつけてくる富士葵さんはあまりにも強大です。
あまりにも強すぎる表現力は、パワーの制御が効かなくなった怪物のようで、力ずくで全てを薙ぎ倒しながら、こちらに迫ってくるかのようです。
この曲を受け止めるには、こちらにも心の準備が必要ですが、受け止めた時の恍惚感はなんとも言い難いものがあります。

・秘密を聞いてよ
「Eidos」で聞かせてくれたような、まっすぐで素直な歌声ですが、ここまで聞いたこちらからしてみれば相手は怪物ですので、そのまっすぐさが鋭利に心を刺してきます。
圧倒的な表現力で表される、あまりに赤裸々な歌声は、絶叫のようにも聞こえ、心にくるものがあります。

・8:19
こちらも「Q.E.D.」のような、ドスの利いた声で鬱屈した気持ちを吐き出すような歌声です。
この曲については、より生活感のあるリアルなヤケクソ感と怒りがぶつかってきます。
私はこの「シンビジウム」というアルバムを通して聞くのがとにかく好きなのですが、この曲を聞いてる頃にはかなりのトランス状態に入っていて、聞いているだけでかなり心がボロボロになるのですが、それが妙に気持ちいいです。

・紫陽花が泣いた
私はこのアルバムを通しで聞いて、最後にこの曲を聞くのがとても好きです。
フルパワーで気持ちを伝えてきた富士葵さんが急に内省的な歌声で歌い始め、その姿はなぜかボロボロの傷だらけに見えます。
その姿を見ると、ボロボロになったのは自分だけでなく、歌っている側もそうだったのか、ということに気づきます。
この曲が最後に来ることで、これまでの曲が「身を削りながら何かを伝えようとしていた曲」に聞こえ、2週目以降がさらに味わい深くなります。
内省的な歌声のみでは終わらず、ボロボロになりながらも次の戦いに挑むような歌声が痛々しくも美しく、とても素敵だと思います。


以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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