見出し画像

Benny Greenの奏でるRhodesは素晴らしい!

いつもカントリーミュージックについてばかり書いておりますが、カントリーミュージックばかり聴いていると、どうもこう箸休めのようなものが欲しくなります。逆に、ジャズでもロックでもそればかり聴いておりますと、次第に疲れてくるのです。

世の中には、ヘビメタしか聴かない人というのもいるのでしょうが、そういうストイックなところが私にはないのかもしれません。

最近の若い方々は、あれですね、ボカロばかり聴くのですね。うちの小学生の娘なんかは朝から晩までYouTubeでボカロを聴いたりしてます。ずいぶん熱心に聴いております。あれで飽きないのだから、私とは脳の作りが違うのでしょう。私なんぞはどうもああいう機械的に作り込まれた音楽は苦手です。あれはあれで魅力があるのはわかりますが、自分では聴かないですね。

やっぱり、山下洋輔じゃないけれど、音楽は何かと言うと格闘技とかお相撲とかに似ていて、肉弾戦ですね。あれがいいです。楽器奏者同士のぶつかり合い。マイルスの「喧嘩セッション」とか、本当に喧嘩したのかどうなのかは知りませんが、大いに喧嘩していただいて結構。吉田秀和だったか小林秀雄だったかが、ジャズやらロックはあれは喧嘩だって言ってましたが、その通りです。

良い表現をするとなんでしょうか、インタープレイというのでしょうか。あれがいいですね。「おっ、おまえがそうくるなら、俺はこう返すぞ!」みたいな、あれがいいですね。マイルスの60年代クインテットなんかの音楽が一番ピリピリしておりますが、バディーガイだって、ジェフベックだってそうですね。ピリピリしてます。ああいう音楽は、録音でも良いものです。聴いていて退屈しないし、疲れたら「まあ、勝手にやってろ」みたいな感じに聞き流すことができます。

それで、今日はBenny Greenトリオの"Benny's Crib"というアルバムを聴いております。
ベニーグリーンの喧嘩を見届けているのです。

途中から、フルートや歌、コンガなんかも参戦してくるアルバムなのですが、コンガとか、喧嘩強そうですね。なんてったってコンガっていう響きが黙っていなそうな雰囲気があります。

このアルバム、Benny Greenは全編Rhodes Pianoで演奏しております。Rhodes Piano、いわゆるエレクトリック・ピアノです。細い棒のようなものをハンマーで叩いて、それをピックアップで拾い、アンプで増幅し爆音で鳴らすことができる楽器です。先に挙げた山下洋輔のイメージもあるのでしょうがピアノは喧嘩の時にどうも暴力的になりがちです。ピアノ弾きには強く打鍵することも必要ですが、それよりも音に表情をつける練習をしてほしい。山下洋輔なんかは、フォルテッシモはそれはそれは凄い迫力ですが、それ以前にピアノのタッチに表情がある。あれが良いんですね。

ピアニストの多くはクラシック畑出身の方が多いせいか、コンサートグランドをコンサートホールで弾くことを前提に強く打鍵することを強いられているようです。また、最近はデジタルピアノばかり弾いているせいで、アコースティックピアノのようにタッチ次第で色々な音が出せるっていう感覚がないのかもしれません。私がピアノっていう楽器がずっと苦手だったのは、そのせいかもしれません。みんなのっぺらぼうな乱暴者ばかりですから。

その点、マルカンドレ・アムランとかワイゼンベルク、ジャズだとそうね、ベニーグリーンでも良いですが、ビル・エヴァンスかねぇ、あの方達はタッチの使い分けが上手い。まあ、プロはみんな上手いのかもしれませんが、最近のジャズの人とかもやっぱり生のピアノで練習することが少ない(足りない)せいか、指は廻るけれど、どうもペラッペラな音で演奏している方が多いです。私はかつてピアノ屋だったから、あの頃こんなことを言ったら刺されてましたが、正直なところ本当にそうなんだから仕方ない。

なんだか、愚痴のようになってしまいましたが、実際はいるのですよアマチュアでも、トッププロという類の方でなくてもピアノのタッチをうまく使い分けていらっしゃる方が。かつて、働いていた職場でもアルバイトの人で、普段は声楽の伴奏をされていた方がいたのだけれど、彼女のピアノはとても表情豊かで素晴らしかった。今頃何やっているのかわかりませんが、あの人は聴いていてウキウキするようなピアノを弾いていた。

ああ、すみません。Rhodes Pianoの話でした。

Rhodes Pianoは素晴らしい楽器なのです。何故かって、タッチによって表情豊かに音が変化する。それも、強さだけでなく、打鍵の速さによっても表情が豊かに変わる。構造はシンプルですが、決してオモチャではありません。
私が一番好きな鍵盤楽器はRhodesかもしれない。

あのスティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンなんかも、スタインウェイのフルコンとRhodesを並べてコンサートやったりしてますが、ほぼずっとRhodes Pianoを弾いている。Bob JamesもヤマハのフルコンとRhodesという組み合わせだけれど、半分以上はRhodesを弾いている。だから、Rhodesは戦地に出るとフルコンと同じぐらい強い武器になるのだなぁ。

まあ、世の中にはもっとツワモノがいて、Ray Charlesなんて、ステージに白いフルコンを置いて演奏しているなぁと思ってじっくり見てみると、フルコンのアクションを抜いて、そこにKurzweilを載せて弾いていたりする。ありゃ、フルコンの無駄遣いなのか、Kurzweilが凄いのか。

なんだか、今日は始終愚痴のようになってしまいましたが、何よりもRhodesという楽器が素晴らしい楽器であるということと、このBenny GreenのアルバムがそのRhodesの魅力を十分引き出しているということを、書きたかったのだけれど、後者についてはほとんど書けませんでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?