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2021上半期ベストアルバム

 2021年も半分が過ぎたってご存知でしたか。子どもが産まれるなど私生活がバタバタしていてすっかりnoteの更新頻度が落ちていますが、去年考えるのが非常に楽しかったので、備忘録を兼ねて上半期ベストはまとめておきたいと思います。例によって個別の記事にしてる時の点数と順位が合ってないのはなんとかならないですかね。

次点 Ryan Adams / Big Colors

3部作の2作目。バラード主体の1作目に比べてメニエール病から復帰後の軸である泣きの80年代ロック感が強めです。"It's So Quiet, It's Loud"などで見られる、どちらかといえば小品的な曲でも歌い上げっぷりで強引に初っ端からクライラックスにもっていくのはBob Dylan("Queen Jane Approximately"ほか)とこの人にしかできないワザです。しつこいようですが、聴いてて「でもあんなことしてたんだよな」と頭を掠めることがなければな。業ですね。

10. Bobby Gillespie & Jehnny Beth / Utopian Ashes

どうせ企画モノでしょ、な低い期待値もなんのその、なんでもできるレジェンドと当代きってのインテリジェントなシンガーのデュエット作は、Nick CaveとシナトラとWillie Nelsonの間のどこかに位置するゴシックでカントリーな素敵バラッド集でした。ややリリース直後補正が強い気もしていますが、"Your Heart Will Always Be Broken"みたいな言葉に少しでもいいかも、と思う人間は聴いて損はありません。

9. Wolf Alice / Blue Weekend

デビュー当時、特にここ日本ではグランジ、ヘビー、みたいな形容がつきがちでノット・フォー・ミー、と聴かず嫌いしていていたのですが、まあいいバンドでした。シューゲイザー〜ドリームポップな幽玄さからグランジな曲まで想像以上に幅広く、しかもかなりのクオリティです。なんとなくですが、個人的にはなんかManic Street Preachersみたいな立ち位置になりそうなバンドだなと思いました。

8. Modest Mouse / The Golden Casket

「お前のアシッド・トリップなんてファック/帰らなきゃ」、「ハロー、ハロー、ハロー/これは最悪なパート」、冒頭からそんな言葉を持つ曲が続く、Isac Brock曰く「これまでで最も楽観的なアルバム」。相変わらずの面倒くささです。そんな面倒くさい曲群が2000年代初頭の作品群を彷彿とさせる、ポップで分かりやすいポストパンクで鳴らされているので最高でした。その聴いてすぐに分かるModest Mouse印のポストパンクに当時ほどのクールさはないとしても。

7. Japanese Breakfast / Jubilee

自伝的エッセイがヒットしたとか、バイデン大統領の就任記念イベントで演奏だとか、ちょっと理解が追いつかないペースでネクスト・ビッグ・シングになっている我らがニッポンの朝御飯。これまでどちらかといえばギタポ、インディーポップ的なイメージがあったのですが、本作はCarley Rea Jepsenが本来進むべきであった洗練されたシティーポップ作で、とにかく曲がよくできています。注目を浴びるタイミングで勝負に出て見事コールド勝ちを収めた作品として残る気がします。Wild Nothingの人がプロデュースしているというのも個人的にポイントが高いですね。

6. The Coral / Coral Island

20年以上ガレージサイケとクラシックなポップスの狭間を揺蕩っていたバンドが遂に両者の絶妙なバランスを見出した感動の一作。今日日架空の観光地を舞台にした2枚組、メンバーのお祖父さんが全編を通じてナレーション、その観光地の住人を描いた画集も同時発売と、とことんやりたい放題なところも頼もし過ぎます。

5. Paul Weller / Fat Pop (Volume 1)

 ロックダウン中にやることがないから作り始めたという、その制限された状況が影響してか、十八番のシンプルなブルー・アイド・ソウル(今やポリコレ的にアウトな表現ですよね)が久々に全開になった快作。とはいえビートにさりげなくモダンな感覚も忍ばせ、Paul Weller御歳63歳、その衰えない創作意欲とクオリティにただただ脱帽です。

4. Easy Life / Life's A Beach

イギリスのゆるいR&Bバンドのデビュー作。そのチルでポップな気持ちよさは絶品です。「一人で食べるロマンチックな食事/Pornhub、そしてチル/俺がどんな気分だと思う?」は上半期一のパンチラインです。とはいえチャートこそ上位にランクインしたものの思ってたよりハネていない印象があるのは、バンド名やアルバム名から想起されるイメージに比べて真面目に音楽してる感じが原因な気がします。メジャーに行く前のどついたるねんくらいはっちゃけていてほしいです。

3. Hiss Golden Messnger / Quietly Blowing It

基本的にはグラミーにもノミネートされた前作同様のカントリー・ソウル集ですが、彼のキャリアの中でも屈指のメロウさを湛えた一作です。それがまた、昨年から状況が大して変わらないままにただズルズルと、しかしあっという間に過ぎて行った2021年前半にピッタリとハマった気がします。同じことを繰り返してるみたいな批評も目にしましたが、このテの、所謂ダッド・ロックにそれは無粋というものでしょう。とにかくいい曲を書いてくれればよし。本作についてはいつか個別記事で感想を書きたいのですが、はたして。

2. Gruff Rhys / Seeking New Gods

SFA時代からもはや35年選手となるGruff Rhysですが、そのイマジネーションとソングライティングは衰えるどころか拡大と洗練を見せ続けています。北朝鮮と中国の国境にある活火山という本作のテーマもさることながら、そんな突拍子もないテーマで書かれた歌詞(「プレートがまた動いて波が軋む」なんておよそロックの世界で歌われないでしょう)を違和感なく聴かせるサイケ・ポップは流石の一言です。

1. Maxïmo Park / Nature Always Wins

こちらも気づけばキャリア15年超のベテランとなったバンドが、その豊潤なキャリアを見せつける一作。贔屓目が多分に含まれていることは否定できませんが、間違いなく上半期一番聴いたアルバムです。エレクトロニクスやダンス/ディスコへの接近といった分かりやすいトピックがあった近作に比べて、とりたててトピックがない、キャリアを通じて研ぎ澄まされた歌を聴かせるストレートなUKロックのアルバムですが、それがいいんです。個人的にはフロントのPaul Smithに子どもが産まれたことにインスパイアされているのもポイントです。それがなんでこんなに可愛いのかよ〜、みたいな曲じゃないところも捻くれていて○(「やり遂げたなら、君に教えてあげよう/僕は自分が何をやってるのか分からない!」)。
 またぞろポストパンクが元気になってきたUKにおいて、15年前にポストパンクリバイバルとして登場したバンドが大人の余裕を感じさせるアルバムで久々にチャートの上位に返り咲いたというのも痛快な、貫禄の一作です。

雑感

 匙加減というか、要は私がカッコ良さやインテリジェンスよりも普通に「いいうた」が好きな所為でトップ10に入れなかったのですが、上半期ではShameやGoat Girl、あとIceageといったポストパンク勢もかっこよろしかったですね。あとはやはりFye WebsterやArlo Parks、Julien Bakerなどのソロアーティストにも素晴らしい作品が多かったです。
 リリースが発表されている中で下半期楽しみにしているのはThe Wallflowers、Chet Faker、Matthew E. Whiteなどです。Supersonicが個人的にそこまで惹かれなかったので、またライブに行くようになるのは来年以降になりそうな雰囲気ですが、果たして。

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