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Gruff Rhys / Seeking New Gods (2021) 感想

総合力高し

 超モフモフ獣の一匹Gruff Rhysさんのソロ7枚目。制作は主に2018年から2019年にかけてということで、前作「Pang!」と同時進行みたいな感じだったんでしょうか?相変わらずのワーカホリックぶりです。

 印象的なジャケットのとおり、北朝鮮と中国の国境にある白頭山がモチーフといういつも通り独特な着眼点のアルバムですが、最後の曲が申し訳程度にオリエンタルな音階を奏でているくらいで、ソロ作の中では2014年の「American Interior」あたりにも通じる、アシッドフォークとベルベッツを通過した70年代のThe Beach Boysみたいな、ジェントルなサイケポップ集です。
 特筆すべきは色んなところで言われているように、冒頭"Mausoleum Of My Former Self"の雄大なホーンや5."Hiking In Lightning"で終始かき鳴らされる歪んだギター等、ソロ作の中では一番バンド的なダイナミズムを感じる曲があることでしょうか。ということでともすればスタンダード臭が濃くなりがちだった彼のソロにおいて、総合力はかなり高い作品かと。

合言葉はSFA OK

 白頭山がモチーフといっても単純に山の歴史を綴ったコンセプト作という訳ではなく(特定のことを書いた曲を作ってみたけど上手くハマらなかった、とのこと)、噴火口を通して自分の半生に想いを馳せるソウルポップ("Mausoleum Of My Former Self")、何万年も存在する活火山の孤独を振り払うダンス・ミュージック("Lone Your Lonliness")、はたまた紛争の元たりうる国境としての山を描いたバラード("Seeking New Gods")…と稀代のヴィジョナリー、もとい真正サイケ野郎Gruff Rhysの妄想は留まることを知りません。

門に鍵を掛けろ/君が出発するときは/予防的措置として火炎瓶がやってくるかも/あちらでは戦争が起きているから/向こう側では
あの祭壇は中立的な考えを変えていく/全ての人類に敵対するように/丸い水玉みたいや火が空を覆う/遠い向こうの大地まで

 そんな中、個人的に一番好きなのは火山の噴火と人の心が限界を迎える様を重ね合わせた(個人的解釈)2."Can't Carry On"。シングルになったポップさもさることながら、超私事ですが最近山の近くに引っ越したことと、それに伴う環境の変化に戸惑っていることもあってこれはキました。重荷背負って欲しいっす。

妄想の嵐を止められない/プレートがまた重なると波の音で軋む/僕らは爪先でしがみついてる/僕の心に/もう続けられない/君は続けられるかい?/重荷を背負ってくれるかい?
あの轟が聞こえるかい?高まり続ける轟音が/爆発だ!!/僕にはもう続けられない…

 火山の孤独に比べれば自分の悩みなんて大したことない、というように(?)斜め上の地点から自分の視野をさりげなく広げてくれる所こそ、聴く人生哲学(©️田中宗一郎)ことGruff Rhysの真骨頂。次の3."Lone Your Lonliness"は「1人寂しくなった時に自分が火山だと想像して踊れるような曲」と国内盤ライナーノーツで解説されています。人も火山も同じ孤独なら踊らにゃ損、なのか。
 何はともあれ今回もSFA OK!ってことで。SFAじゃありませんが。

点数

8.0

 しかしSuper Furry Animalsってどうなってるんでしょうね。去年Gruffさん以外のメンバーが新バンドDas Kooliesを結成というファンからすると嬉しい反面、少し不安になるニュースもありましたが。

 というのも、件のDas KooliesがSFAからはあまり感じなかったSpacemen 3感さえ漂う激・正統派サイケ街道を突っ走っているからです。ここにGruffのソロ作のようなジェントル/ソフトさ、スタンダード感が絶妙にブレンドされたのがSuper Furry Animalsだったんだなあと、バンドというものの面白さ、マジックを痛感した次第。バンドとして最後にリリースされた曲は前回のEUROのウェールズ代表非公式応援歌。今年はEUROが開催されますが、果たして。

(参考記事)

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