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はじめての方の「論文の読み方・探し方」おすそわけ勉強会 #3(読み方編)

前回のお話の続きです。今回の記事では「どのように論文を読むのか?」(論文の読み方編)をお伝えいたします。

前回のお話はこちら↓↓


論文の読み方

論文を検索し、何だか興味を惹かれる論文を見つけたぞ・・・!さあ、これからどうする(読むor読まない)?と思ったとします。

しかし、論文を読む時に気になる疑問があります。

・どれくらいの時間をかけて読むのか?
・どこに着目して読むのか?
・読んだ内容を忘れないためにどういう工夫ができるのか?

などなど。
上記について、私なりの考え方・やり方についてご紹介させていただきつつ、皆様のご参考にしていただければと思います。

私の場合は、以下の3ステップで読むかどうかの判断、そして論文のまとめを行っています。

【論文の読み方のステップ】
STEP1:概要だけ読む(じっくり読むか決める)(5分くらい)
STEP2:じっくり読む&メモする(30分~1時間)
STEP3:noteにまとめる(1時間)

STEP1:概要だけ読む(じっくり読むか決める)(5分)

これは「論文の探し方」とも重なる部分です。その論文が探しているものか、または今探しているものではなくとも、ストックしておきたいものかどうかを、タイトル✕概要を読んで決めます。

タイトルでは抽象度が高くて内容がイメージできなくとも、「概要」まで見ると、だいたいその研究の背景や目的、結果がわかります。

たとえば、こんな感じ。

【論文タイトル】
高橋 誠, 森本 哲介(2022)『性格特性的強みと年収,職務満足度,ワーク・エンゲージメントとの関連−キャリア教育で育成すべき能力とは何か−』

【概要】
キャリア教育で育むべき性格特性的強み(CS)について明らかにするために,社会人の持つCSと経済的・心理的な要素との関連を検討した。社会人231名を対象にオンライン調査を行った。年収,年齢,勤務年数に性差が見られたため,男女ごとに相関分析を行った結果,男女とも全CSのうち9割以上に職務満足度やワーク・エンゲージメントの間に有意な正の相関がみられた。年収との間に有意な正の相関がみられた CS の多くが,男性では「業務を円滑に遂行するために必要な強み」であり,女性は「対人関係を円滑化させるような日本特有の強み」であった。年収により3群に分けてCS得点の差を検討した結果,330万円未満群と695万円以上群との間に有意な差が見られ,「積極的に現状を打開するために必要な強み」が多くみられた。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/uheok/16/0/16_23/_article/-char/ja/

論文の概要は、それだけ読んでも「へえー」と、読んでおり面白いです。その上で更に読んでみたい!という場合、読み進めればよいし、気になるけど、今じゃないな…というのは「PaperPile」に、とりあえず保存をしておきましょう。

だいたい、ここにかける時間は5分くらいです。

STEP2:じっくり読む&メモする(30分~1時間)

「概要」を読んで、これは面白そうだ!読み進めてみよう!となったとします。そうしたら「STEP2:じっくり読む」へと移ります。

ここでは、PaperPileのアプリを使って読むパターンでお伝えいたします。PaperPileに登録すると、自動的に論文PDFをダウンロードしてくれます(なんと便利!)

そして、論文は基本は、上から順に読み進めていく形になります。また後ほど説明しますが、論文の基本的な構造は、

1)論文の概要
2)背景となる理論や考え方
3)研究の目的・仮説
4)進め方(分析・結果)
5)ディスカション(考察)
6)本研究の限界と今後の課題

という形になっています。それぞれの章にて、ポイントを抑えるように読んでいくと、理解しやすいです。

PaperPileでは「ハイライト機能」があります。黄色、青、緑、赤の4種類が使えます。また、「メモ機能」もあるので、気になったところにメモを加えることもできます。

私の場合、上から丁寧に読まないと、なかなか理解することができません。
ゆえに、上から順に読み、「黄=印象に残ったところ、青=疑問に思ったところ、緑=仮説、赤=論文のポイント」と色づけをしながら、時折メモをしたり、寄り道をして検索をしたりして、読み進めています。

PaperPileには「ハイライト機能」があります
PaperPileには「メモ機能」があります。
よくわからない事が出てきたらメモをして、
余裕があるときはChatGPTに聞いて寄り道しています

私がよく読む論文は、15,000~30,000文字くらいのものが多く、英語論文が8割くらいです。読みなれているジャンルや日本語論文は、使われている概念や用語もわかってきているので比較的早く読めます。逆に読み慣れていない概念などに遭遇すると、2~3倍時間がかかることもあります。

だいたい、ここでの所要時間は30分~1時間くらいが多いです。

STEP3:noteにまとめる(1時間)

最後に、「読んだ論文のまとめる方」です。

これこそ、人の好き好きで、目的によってぜんぜん違うので、あくまでの私のパターンとしてお伝えします。

私の場合、少なくとも「強みの活用」に関しては仕事における専門領域の一つとなっています。企業研修で皆様に、その背景理論や成果についてもお伝えする機会があります。また密かな夢として、これらの知見を多くの方がわかりやすく理解できるよう、書籍にしたいと思っています。ゆえに、自分なりには真面目にまとめている(つもり)であります。

いずれにせよ、論文をまとめる場合は、”意図を誤解しないようにまとめる”ことを心がけています(できているかはさておき)。論文は科学的な視点で書かれています。ゆえに、その本来の意味を曲解して解釈はしないようにしたい、と思っています。

ですから、先述のように、よく見られる「論文の構成」に従って、ポイントをまとめるようなやり方を基本としています。

上記の1)~6)について、もう少しだけ付け加えると、論文の構成に従ってまとめる際に、以下の視点でまとめています。

1)論文の概要
自分の目的に関係がありそうか、または自分が興味・関心が湧くかを基準に読むかを決めます(個人的に「面白そう!」と気分が乗らないと読めない派です)

2)背景となる理論・考え方
「背景にある理論」を知らなければ、何のことやら…?となることがらいます。たとえば、「強みとジョブ・クラフティングの関係」という論文では、『ジョブ・クラフティング』という概念の理解が必要になります。
 これらは組織行動における基礎ワードのようなものを、勉強しておく必要があります(たとえば、プロアクティブ行動、ワークエンゲージメント、LMX,組織コミットメント、自己効力感、心理的資本など。勉強には、服部先生の『組織行動論の考え方・使い方』がオススメです)

3)研究の目的・仮説
次に、研究の目的ですが、定量調査であれば、研究で使っている尺度を調べるます(今回開発したものか?または過去から使われている代表的なものか?)。どの尺度(質問項目)を使っているかを見ると、「パフォーマンスが高まった」みたいな抽象的な評価の裏側にある判断軸を確認できるので、よりその研究内容の結果がイメージできるようになります。

4)進め方(分析・結果)
余談ですが、私は特に定量調査は極めて苦手です。未だに、t検定、χ二乗検定、共分散構造分析など、当たり前のことも毎回よくわからなくなります。図表の読み解き方、ChatGPTに画像を貼り付けると、丁寧に教えてくれるので適時活用して読み進めています(※後述いたします)

5)ディスカッション(考察)
何が得られたのか、仮説に対応する結果を確認し、記述します 。

6)本研究の限界と今後の課題
論文でわかったこと・わからないことを整理します

一つ言えることは、「ささっと読むだけでは、その論文のポイントは脳内に残らない」ということ(少なくとも私の場合)。時間がかかりますが論文を理解するには「自分の言葉でまとめなおす」ことがよいのだろうな、と思っています。

ちなみに、上記プロセスでまとめた論文がこんな風になっています。

ちなみに、まとめ方(要約の仕方)はどのような形でも良いと思います。

・「note」で公開記事としてまとめる(紀藤のパターン)
・「note」で非公開記事でメモとして使う
・「Excel」でメモしてまとめる
・「PaperPile」の中のメモを入れる
・「Notion」などのメモアプリでまとめる

などなど。これはご自身がスキな方法でやれば良いと思いますが、何かしらの形で、自分なりにまとめると記憶に定着しやすいかな、と個人的には思っています。

おまけ:わからないことは「ChatGPT」に聞く

さて、「論文の読み方」において、しばしばよくわからない「モデル図」などが出現してくることがあります。私も大学院で、データアナリティクス(統計)の授業で学びましたが、概要と全体像はわかっても、残念ながら最後まで苦手意識は克服できませんでした…(そもそもExcelの関数とか使えない)。

なので、こんな図が出てくると、途方にくれるわけです。

突如登場する謎のモデル図

なんだこれは?カニか・・・??

そんな時に頼りになるのが、ChatGPTです。GPT4では画像読み込みもできるので、画面をキャプチャして、質問をしてみましょう。すると、こんな感じでわかりやすく答えてくれます。

そして、用語でもわからないことがあれば、追加で聞けば教えてくれます。私の好きな質問の仕方は「◯◯について、中学生でもわかるように教えてください」です。大変わかりやすく教えてくれます。

ChatGPTはマジ神

論文の整理の仕方

さて、ここまで論文を探し、読むことをお伝えしてきました。もし探す&読むを、継続して進めると、ある悩みが出てくるかもしれません。

読んだ論文が、とっちらかって整理できない

それが「読んだ論文が、整理ができない問題」です。

ポケットにとりあえず突っ込んだ道具が、どこに行ったのか見失ったドラえもんのように「なんか読もうと思ったけど、どこいったっけ?」「あれ、読んだ論文のあのキーワード、どこだっけ…?」となることが、しばしば起こります。

よって、ここでは「論文の整理の仕方」を考えることが、論文の旅を続ける上でのポイントかと思います。

私の場合、

・集めた論文→『PapePile』に保存する
・読んだ論文→『Excel』にまとめ

としています。

結局アナログかい!という話ですが、読んだ論文が溜まってきた時に、整理をするのは結局Excelが使いやすいとなってしまいました(汗)

エクセルでは、「キーワード・論文タイトル・研究者名・発行年度」「noteで書いたURLとタイトル」をまとめることで、いつでも振り返って思い出せる外部記録装置として活用しています。

結局、読んで集めた論文はExcelがよかった


おまけ:概念の尺度を整理する

最後に、大学院生を対象に余談です(読み飛ばして頂いて構いません)。私は大学院の2年次は「様々な概念の尺度」を集めて、整理していました。

「プロアクティブ行動・ワークエンゲージメント」など、二次成果に近い概念をエクセルのタブの右側に寄せる。そして「心理的安全性」など一次成果に近いと思われるものを真ん中に、「自己効力感」「コーチング」など先行要因に近いと思われる概念を左側に寄せて整理をしていました(判断基準はなんとなく)。

その過程で、この概念はどういう因子で出来上がっているのかを理解できましたし、それぞれの相関関係のイメージを持つことにも役立ちました。この集めた概念の尺度は、合計30程度になっていますが、卒業後の仕事でも役立っています。効率的ではないですが、良い頭の整理になりました。

誰にもに当てはまるとは思いませんが、こういうのがお好きな方はやってみてもよいかもしれません。(人材開発・組織開発の本業にも役立ちました)

概念の尺度を整理するのもいいか

まとめ(論文の読み方編)

さて、以上「論文の読み方」についてまとめてみました。ポイントは以下の通りです。

・論文の読み方は、概要だけ読む→じっくり読む→まとめるの3ステップ。
読み進めるだけだと記憶に残らないので、自分の言葉でまとめなおすことで記憶に残す。
・まとめるツールは、noteでもExcelでも目的に応じて個人の好みで。
・自分まとめたメモも、数が増えるとわからなくなってくるので、Excel等で整理をして、外部記憶装置として活用すると便利。

というお話でした。

以上、三部構成で「はじめての方の「論文の読み方・探し方」おすそわけ勉強会」をお伝えさせて頂きました。改めてこうした機会をいただけた、大学院の仲間たちにも感謝とともに、これが皆様にとっても何かしらお役に立てば嬉しく思います。

改めて最後までお読み頂き、ありがとうございました!


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