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ミュージカル「コモンビート」を”人材開発”の観点から紐解いてみた

「ミュージカルに出るのだけど、よかったら来ませんか?」

ランニング仲間である友人から、ある日メッセージが来ました。どうやら結構本格的なミュージカルだそうで、そもそも一般人がそういうものに出ることができるんだ、という好奇心も含めて、せっかくのお誘いに乗らせていただいたのでした。

結論、ミュージカルとして面白かったのはもちろん、それ以上に「参加者たちの、ミュージカルを完成させるプロセスそのものがテーマだった」ということを知り、人材開発・組織開発に携わるものとしても、感銘を受けたのでした。

今日はその事について、印象に残ったことを書いてみたいと思います。


ミュージカル「A COMMON BEAT」の内容

ミュージカルの題目は「A COMMON BEAT」というものです。この物語の「あらすじ」は、以下のように説明されています。

<あらすじ>
「違い」とは、恐るべきことなのでしょうか。
それともその「違い」こそが美しさなのでしょうか。
舞台で描かれる「世界」は、様々な文化の特徴を持った四つの大陸で成り立っています。人々は互いに他の大陸の存在を知らずに、独自の文化に根ざした彩り豊かな歌や踊りを楽しんでいました。
しかしあるとき、一人が他の大陸の存在に気がついて・・・
文化やバックグラウンドが違っても、私たち人間は理解し合い、共存することができるのでしょうか。私たちをつなぐひとつの鼓動、「A COMMON BEAT」を見つけることはできるのでしょうか。

簡単に言えば「4つの文化・風習が違う大陸同士が、お互いの違いを認め、一つになっていく物語」です。文化や時代を超えて、普遍的なテーマであると言えそうです。

ストーリーとしては、老若男女楽しめる話です。なにより100人が集まって、歌い踊る姿は、大変な熱気がありました。

特に、後半に進むに連れて、全員で合唱をしながら盛り上がっていくのですが、生で聞く音と雰囲気(そして実際の温度)は、観ている人に迫ってくるものがありました。(イメージは映画「レ・ミゼラブル」のクライマックスっぽさ満載)

一つ一つの踊りや歌については、一般参加型のミュージカルなので、プロの演者と比べると、完璧ではないところはあるかもしれません。ただし、熱量を含めれば、違った魅力として見劣りするものではない、と感じます。友人が出ているという付加価値もついて、更に楽しめました(友人のソロパートの歌がうまくてビックリしました)。

家族でも楽しめそうな内容で、子供がもう少し大きくなったら見せたいな、と思いました。おばあちゃんに見せたら、元気がでそう。


「NPO法人コモンビート」の活動

さて、このミュージカルの特徴は、「一般参加者100人で100日間でミュージカルを完成させる」というプロセスにあります。合計3~4回ほどの講演を、その期のメンバーで最初から最後までやり通します。ちなみに、現在(24/2/12)は59期であるそう。これまで述べ7000人近くが参加しているtのこと。

コモンビートのホームページを見ると、「個性が響き合う社会へ」をスローガンとし、多様な価値観を認め合える社会の実現をビジョンと掲げています。

違いを認め合えることが、一人ひとりのウェルビーイング(幸福)につながると考えしています。ここからは明記していないですが、想像するからに、同法人は参加者に対して「多様な価値観を認め合いながら一つの作品を作る学びの体験の提供」と、観覧者に対して「ミュージカルを通じた、多様な価値観を認め合う事を考える機会の提供」を行っていると思われます。

「最高のプロジェクト型の学習」の場

個人的に、一番興味深いのが「参加型のプロセス」というところです。これを「人材開発・組織開発の事例」として観てみると、なかなか興味深く思えます。以下、その観点で感じたことを書いてみたいと思います。(ここからは友人の話と、私の推察を含んだお話です)

それは「参加者にとって、プロジェクト型の学習の場」となっている、ということでした。

このミュージカルは、参加者が運営します。専属のプロが演者でないはいえ、チケット代(5000円)が発生します。真剣度は増しますし、その場への参加者も観覧車も期待も、相応のものになることは想像に難くありません。

メインの台本や、演出家、全体のプログラムリーダーのような方はあるのですが、各役割にも既に経験をしたことがある人がアシスタントリーダーのような形で入りつつ、運営をしていきます。

はじめての参加者も、想いを持って参加します。個人個人のこだわりや、そこから生まれる対立、あるいは自分は別に関係ないと距離を取る人も生まれるでしょう。しかも、参加者が20~70代まで、年齢も国籍も違う人達なので、その多様性たるやいなや。色々起こることは、間違いなさそうです。

「ミュージカルを作る100日間のプロジェクト」を通じて、まさに参加者が学び合うプロジェクト型の学びのプログラムになっています。これが実に面白い。

・・・というのも、私が以前通っていた、人と組織づくりの高度プロフェッショナル人材を育てる「立教大学 大学院 経営学専攻リーダーシップ開発コース」に毛色は違えど、似ているなと思ったのです。まさにこんな『プロジェクト型の学びの場」を授業としてやっていたことを思い返したのでした。

たとえば、入学直後に3ヶ月(約100日)の「リーダーシップウェルカムプロジェクト」。内容は、「ある人材開発・組織開発課題を設定して、解決策を見つけ、そして実際に実施する」というお題が与えられ、その内容に取り組むのは、初めて出会った4~5人の仲間。社会人大学院で共通項はあっても、仕事の進め方も考え方も違うので、その進め方で時にコンフリクト(葛藤)が起こるのです。

ただし、そこは「人つくり組織づくりの大学院」です。そして、そのグループプロセスの経験を振り返って教訓を得る、ことを行いましたそこまで含めて、「二階建ての学びである」と言っていました。

一階部分は、「プロジェクトのテーマそのものに関する学び」(例:若手の組織社会化など)です。二階部分は、「プロジェクトを通じたチームでの経験を通じた学び」(例:自分のリーダーシップの発揮、チームワークへの気づきなど)です。

これらを通じて、「一粒でニ度美味しい学び」が実現できるのでした。

立教大学大学院 リーダーシップ開発コース
リーダーシップウェルカムプロジェクト 20210521 授業資料より引用

まとめ

「体験」というのは。そのものが大きな財産になる。

学んだ知識よりも、貴重なものは「体験」であると感じます。そして
その体験、あるいは経験の振り返りを通じて自分自身の新しい側面を見つけることができたら、それが新しい選択につながることもあるものです。

しかし、こうした「体験の場」(チームで協働して作り上げるなど)は、求めたからといって巡り会えるとは限らない、こともあります。学生時代の文化祭や運動会などでたまたま経験することができたとしても、大人になって、そういう場はあるのだろうか・・・というと、首を強く縦にふることはできないとも思います。

ですが「コモンビート」という機会を通じて、求めている人に100日の濃厚な経験の場を提供されることは、学びに関わるものとしても、共感しましたし、とても素晴らしいことだな、と思ったのでした。

こうした経験をしてみたい!という方は、挑戦してみるのもオススメです。友人の終わった後のやりきった表情から、とても良い時間だったんだな、と感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

<本日の名言>

チャンスが見つけられないなら、自分で作れ。

サミュエル・スマイルズ

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