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人間の老化は、進化の結果である

論拠ある話は説得力があり、なるほどなあと勉強になりますが、別分野の知識を大胆に繋げて、思考を飛躍させて着想を得ることも、また面白いものです。それは「正しいか正しくないか」を突き詰める話ではなく、いろんな可能性をあれこれ考える知的な遊びのようです。

先日、お慕いしている人生の先輩Mさんと共にお食事をしていた際、まさにそんな「思考を飛躍させて着想を得る」という観点で、ある興味深いお話を聞きました。それがすこぶる面白かったので、今日はそのお話について書いてみたいと思います。


人間の老化は、進化の結果である!?

「他の動物って、人間みたいに老化しないそうですよ」。白ワインを飲みながら、ふとそんなお話が話題にあがりました。どういうことですか、と聞いてみると、こういうお話でした。

「他の動物も老化はするけれども、閉経などで生殖能力を失うと、基本的に死に向かいます。でも、人間は生殖能力を失っても、その後数十年生きるようにできている。これは、”進化の結果”だという話があるそうです」

「どんな生き物も、環境に適応した遺伝子が残るものですが、人間の場合も同じように、”老化をした人間”がいる集団のほうが、結果的に繁栄する可能性が高かったと考えられる。そして、それはなぜかというと、人間の場合、”次世代を育てる役割”がいることで、経験を言い伝えることを通じて、その集団が生き残る可能性が高まったのでは、という話だそうです」

とのこと。なるほど、興味深い…。
つまり、「長老的な人が、若手に助言をすることで集団の生存確率が上がる」という意味で、年長者は”語り部”とか”後進を育てる”役割がある、とも言えそうだ、とのこと。

私はその分野の専門家ではないので、実際の人間の機能がどうなのかはわかりませんが、何だか納得させられる話です。

「自分のことしか考えない年長者」が冷遇される理由

そしてこのお話は、組織の話に繋げてみると、こんな仮説も考えつきます。

どんな組織でも、「働かない社員」は冷たい目で見られるものです。なぜかというと、「自分が頑張っているのに頑張っていない他の社員が同じ給与をもらっているのは我慢ならん」という組織行動学の観点でいう「公平理論」なるものが影響しているから。これは、人間心理として起こります。

ここからは感覚的な話ですが、その中でも特に「働かないおじさん(年長者)」の風当たりは、強そうな感じがします。そこには、既得権や経験年数によるランクの差などの関係性の要因が含まれてそうですが、「自分のことしか考えない年長者」あるいは「後進を支援しない年長者」は、特別に冷たい目で見られている気もします。

年長者の発達課題とは

そして、冒頭の「人間の老化は、進化の結果である」というお話と「後進を支援しない年長者」を繋げて考えた時に、こんな仮説が考えられるかも、と言う話がでていました。

仮説:遺伝子に組み込まれた「長老」としての役割を果たしていない年長者は、DNA的に皆に受け入れてもらえない(かも?)

とのこと(繰り返しますが、仮説です)。「こういうのもあるかも」という思考の遊戯的なお話ですが、妙に納得感があり面白いなあ、と思ったのでした。

そして、このお話を聞きながら思い出したことがあります。それが「エリクソンの発達課題」です。

人は生まれてから死ぬまで様々な発達課題があるのですが、壮年期(40~65歳)の発達課題では、「世代性(ジェネラティビティ)」とあります。

”generativity(ジェネラティビティ)”の言葉がもつ意味は、「生殖性
、生産性、世代性、創造と育成、生成力、生成継続性」などです。そこに含まれている意味を広く捉えると「世代を越えて継承する」と言えます。

それは親としての遺伝的な次世代だけではなく、会社の後輩を育てたり、
次の世代を考えるというステージもそうで、「育てる・導く・継承する」というのが壮年期のテーマといえます。

これが一方、対となる”危機”は「停滞」です。
”自己陶酔”とも書き表されており「継承をしないので、自分の活動や命が、自分の中にだけで留まる。よって発展せずに終結してしまう」結果となります。またエリクソンによると、”ジェネラティビティを発達させていないと、自分を子供のように甘やかし始めることが多い”といいます。

まさに、先程の「長老としての役割(世代間の継承)を果たさないシニアは、受け入れられない」というのは、こうした発達課題の観点からも、引っかかりを感じてしまうのかもしれません。

https://www.kango-roo.com/word/21198

まとめ

「本当かどうかわからないけど感覚的に分かる話」を探求してみると、意外と説明できそうな背景理論や概念があるものだな、と思います。

今回の「人間の老化」の話や「年長者が冷遇される理由」が果たしてどうなのかはわかりませんし、はっきりくっきり説明できる話でもないですが、もしかしたらこうかも?!という発想で見てみると、思わぬ発見もあり、何より知的興奮があり、面白いものでした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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