見出し画像

【音楽×珈琲 鑑賞録】5月15日~クルト・ヴァイル 『三文オペラ』より「マック・ザ・ナイフ」

音楽観を鍛える鑑賞録。
5月15日のテーマは、【ジャンル】

とりあげる作品は、
クルト・ヴァイル /
『三文オペラ』より「マック・ザ・ナイフ」

です。

クルト・ユリアン・ヴァイル
Kurt Julian Weill
1900年3月2日 - 1950年4月3日
ドイツの作曲家

今回とりあげる、『三文オペラ』(原題:Die Dreigroschenoper)は、ベルトルト・ブレヒトが戯曲を手がけ、クルト・ヴァイルが作曲した音楽劇です。
初演は1928年シッフバウアーダム劇場のこけら落としの際に上演され、その後何度も映画化されています。
なかでも、ブレヒトが歌詞を手がけた劇中歌「メッキー・メッサーのモリタート」「マック・ザ・ナイフ」というタイトルで大ヒットし、ジャズのスタンダード・ナンバーにもなりました。

日本でも「匕首マック」というタイトルで、美空ひばりや尾藤イサオなどがカバーしたり、貴志祐介の著作「悪の経典」が映画化された際に象徴的ナンバーとしてとりあげられるなど、今日でも有名な作品になっています。

楽曲は軽快で跳ねたリズム、朗らかな曲調にもかかわらず、
歌詞がサイコホラーじみていて狂気を感じる作風です。

こうした退廃的な作品はいつの時代にも
エンターテイメントに反映されて出てきますが、
この「三文オペラ」のストーリーで浮かびあがってきたメッセージから、
思うところを少し残しておきます。

ブレヒトの戯曲では、
メッキー・メッサー(マック・ザ・ナイフ)が主人公ですが、
メッキーは、貧民街の顔役であるギャングで、何人もの愛人がいるという設定です。
ある日偶然出会った少女ポリーに一目惚れしたところ、乞食王ピーチャムの娘だったということで、理不尽に処刑されそうになるなか、メッキーが自らの運命を嘆いたり、諫言したり、窮状への反発などを陳情します。
本作では、マック・ザ・ナイフというようなサイコキラー感はあまりなく、むしろ社会の不条理を皮肉に訴えるプロパガンダといった内容でした。

この時代のドイツの鬱屈した世相を表したような作品ですが、
今日の社会でも通底してしまう示唆があったりします。

理想と現実に苦しみもがく様相が延々と続いている地球人。

ふと、この四苦八苦は他者と比較し過ぎているから、こんな気持ちになってしまうんだろうなと思う。
比べるなとは言えないし、比べてしまって苦しむものは仕方がないこと。
それはそれで受け入れながら、誤魔化しながら、
「自らの人生は、自らのものさしで、自ら計っていこう」
と思い返していけばいいのではないでしょうか。

三文オペラのなかで、メッキーは、
「許してくれ」
と誰ともない誰かに訴えかけていましたが、
その判断を下せるのは自分しかないだろ、と思ってしまったわけです。

そんな感じで、改めて自分自身の心情と信条を見直すことができた学び深い作品でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?