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健康でなければ人権が担保されない世界なんて嫌だ。共鳴する未来ーデータ革命で生み出すこれからの世界ーを呼んで。

共鳴する未来データ革命で生み出すこれからの世界を読んだ。まず前書きに書いてある(誰も取り残すことなく一人一人が豊かな生き方を考え実現することを、支えるものであること)と言うビジョンに非常に共感を示す。

まさに、公益資本主義の実現だ。宇沢弘文が復活するときだ。

これまで貨幣が最も価値基準として機能する社会が構築されてきた。貨幣を増やす事を目指して多くの企業や個人が自分の行動を選択している。しかし、これからは貨幣ではなく信用がこれからの行動を決める重要な価値基準になると著者は指摘する。例えば図書館の利用や自動車運転の保険等その人が信用できるかと言う点で意思決定しなければならない場面が多々ある。信用できない人もいれば、信用できる人がいる。それは貨幣価値に換算して判断しても十分に区別することができない。何故かと言うと、お金儲けをするプロセスで悪巧みをするする人もいれば、正義感があり、みんなが幸せになる世界のために収益をあげて、さらに事業に投資することで社会貢献を図っている企業が混在しているからだ。

正しいことをするためには嘘をつかなければならないと言うことを平然と語る人もいる。しかし、この思想には、社会全体の幸福を高めると言う点でうまく機能しない場面が多々ある。

そして、その多々ある場面が顕在化してくるこの現代においては、うまく機能しないことに対するソリューションの提示がなされているし、そのソリューションに対して共感する声が上がってきている。

信用を価値とするのであれば、信用されるように人間が行動するようになると考えられる。例えばグレーブレーキペダルにセンサーが付いていて急ブレーキ踏む回数が保険会社にフィードバックされると考える。そこでは急ブレーキの回数に応じた保険料が決定される。そうなるとドライバーは保険料を減らすために、安全な運転を心がけるようになるだろう。安全な運転をしないドライバーには、高い保険料が支給される。

図書館の返却に関しても同様である。図書館へ本を返すと言う事は図書館の機能を持続させることに必須の条件である。図書館のカードはその図書館ごとに作られることになっているので、ある図書館から本を借りた後に返せなかったとしても、他の図書館でカードを作って借りれば良い話になる。図書館のカードがマイナンバーカードに紐付けられると、それができなくなる。図書館で本を借りられなくなると言うペナルティーが、期限内に本を返そうと言う行動につながる。

今後の社会はこんな社会なんだろう。

そこで問題になってくるのは誰がそのデータを扱いそのデータが扱われることによって、いわれのない被害が及ぶことである。健康データに関しては個人情報の特性が強く、問題が引き起りやすい。

健康データが、救急車で初めて運ばれた病院の医師によってみられるのであれば、データ提供者には最善の医療がなされるだろう。しかし、企業の採用活動において採用担当者に見られるようなことがあれば、この人は病気を持っているから採用しないようにしようと言う差別の被害者になることも考えられる。

じゃあ、これからデータが世界を支配するようになるとしてその世界をどのようにして構築していくかと言う問題の中でこの本が主題である。

社会背景をまとめると
石油からデータに価値が変化する。これは、言い換えると所有財から共有財への変化といえる。


誰がどの範囲のデータを使ったのかをあらかじめ検証できるようにして同意なしでも使える条件を定めておけば良い。

①個人軸にしたデータ運用

②相互運用可能性

③データ可搬性

④安全性

の4つの条件を確保して異なるシステム間でも連携できるようにすることが設計思想の肝となっている

同意なしでもデータ活用が必要なケースがある。そこで重要なのは社会的合意に基づく公益目的のデータアクセスと言う考え方。

匿名加工情報など個人特性性のない日個人情報は個人に権利性がそもそもないので徹底的に共有して公共のために使い倒すべき

なんでもかんでも同意という同意至上主義でもなく、なんでもかんでも自分で決めるべきという自己決定至上主義でもない、バランスの取れた制度設計が重要である。

人権意識を抽象化して個人の自己決定から遊離させてしまうと幸福を掲げるパターナリスティックの全体主義が忍び寄ることになりかねない。

健康でなければ人権が担保されない世界なんて嫌だ。

このような偏りや分断は政治の世界で著明に出てきている。世界中で右極化の傾向がみられているからだ。

政治の言論の世界において、偏った思想を盲信しないような仕組みづくりポリティカル・ランダム・アルゴリズムである。

政治的な意見やニュースをバランスよくフィードするアルゴリズムが開発されている。

どうすれば健全な言語空間公共圏が構築できるから真剣に模索され始めている。

重要な条件としては、プラットフォーム間での競争があることで、アルゴリズムの対応多限性が確保されることである。独占だったとしてもトレーサビリティーに対する説明責任を支配者がもているかという話になる。

後者は歴史上無理だろうと思う。

芝麻信用の社会信用スコア

①身分特質

②履行能力

③信用歴史

④人脈関係

⑤行為偏向

の領域の点数を合計して信用に関するスコアリングを行っている

社会信用スコアの問題では2つある。

1つは独占の発生によって競合的環境が失われ評価の多元性とそれに基づく同士のサービス間の移動可能性が失われた場合に1つの事業所が独占することで差別的なスコアリングをしていても使用者は使わざるを得ないと言う状況がうまれること。

そうなってくると個人に対する差別や排除を招きやすくなる。

2つ目は国家が全社会をカバーするような社会信用スコアを構築する事は認められないと言うこと。

これは完全な監視社会を生み出してしまうからだ。

著者が提案するのはデータ駆動型社会ならではのもう一つのアプローチですそれは環境への影響、貧困の対策、健康の維持、安全と平和など多元的な共有価値を可視化して国家や集団間の対話の共通言語にすると言うこと

でもそれを行う企業は情報に対する厳格なセキュリティーシステムを構築する必要がある。例:ケンブリッジ・アナリティカルの事件(Facebookから流用した個人情報をトランプ政権へのために不正利用した事件)

そういったことをする企業に対しては強く警戒する社会が出来上がっている。

信用スコアがどのようになりたっているのかをブラックボックスにしないと結局、物差しになって優劣を意識してしまう。

そうではなくて多元的な評価をそのまま示してある人はAと言うファクターを重視するけれど別の人はBと言うファクターを重視すると言う表現にした方が現実に即している。

これは、多様性への理解に進む。

貨幣以外の多元的な価値を可視化できることが個人的なサービスや対応ができるようになる。

例えば、認知症になっていくとだんだん会いに行くことが辛くなり、頻度が減っていくで認知症の進行を早めて家族の負担が増加する。だから積極的にコミニケーションをとることによって1年後にどれぐらい介護負担が楽になるかと言うことを可視化されれば多少コミニケーションが難しくても積極的に会ったり話したりするインセンティブが生まれる。

エストニアはデジタルガバメントを支えているのは個人識別IDである。

①個人が自分のデータをきちんと保護するために絶対人に教えたいけない2つのPINコードを持っている。

②同意したデータに関しては第三者が自由に使うことができる。

③誰が使ったかも後で追跡することができる。

これらによって不正利用ができない環境が相互監視システムによってデザインされている。

世界とのつながりの中で命の輝きを実現することをhuman co-beingと言う言葉で表現している。

最後に問題となる、個人が国境を越えるときにデータをどう管理するかっていうの課題である

人間は多層的に折り重なって社会的活動をしている。

物理的に我々の肉体は1つしかないので多重所属ができませんという思想もあるが、実際には様々なコミュニティーに所属している。ある時は国民であり、ある時は民生員であり、ある時は社員であり、ある時は一個人である。

これらの多重性の中でいかに命を輝かせるかが重要な課題であり、そのための公益性の高いデータ運用のプラットホームを作らなければならない。



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