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  • 直島旅行記

    大学生活の最後の1週間。思い付きで芸術の島、直島へ一人旅に出かけた。そこでは、強烈な芸術の力を感じ、温かい島の人たちとの出会いがあった。そんな、2泊3日の一人旅を綴った旅行記。

最近の記事

迷いの時計-"天才"だった僕を取り戻せ-

"天才"だったかつての僕を取り戻す。 小中学生の頃の僕は"天才"だったと思う。 小学校では図工、中学校では美術という科目として、その頃は"何か"を作ることが多い。というか、授業なので半強制的に"何か"を作らないといけない。 そして、当時の僕も含めて生徒全員が"何か"を作っていた。 以前、思い立ったかのように100均で紙粘土を買ってきて、暇つぶしに"何か"を作ろうとしてみたことがある。 部屋の掃除をしていると、押し入れの奥から小中学校の頃に授業で作ったものを見つけ、あの

    • 虎の威は借りた方がいい-枯れた技術の水平思考-

      DSを手にした時のわくわくと驚きが忘れられない。 DSにはピクトチャットという機能がある。タッチスクリーンに自由に描いた文字や絵を受送信してチャットを楽しめる機能である。DSが発売された当初はあまり多くのゲームソフトを持っていなかったので、ピクトチャットで絵しりとりや四コマ漫画を描いて友達とよく遊んでいた。携帯電話をまだ持っていなかった僕たちにとっては、一種のコミュニケーションツールであった。駄菓子屋でお菓子を買って、近くの公園でピクトチャットで遊んだり、夜な夜な大作を仕上

      • animate-命を吹き込む-

        「久しぶり。。また。。会えたね。。。」 オタク高校生である安芸は、ある日桜舞い散る坂道である少女と運命的な出会いをする。その出会いにインスピレーションを受け、彼女をメインヒロインとするギャルゲーの制作を思いつくのだが、運命的な出会いをした少女は安芸と同じクラスで特に目立たない普通の高校生・加藤恵であった。安芸は加藤をゲームの中の絶対的ヒロインすると決意し、育てあげていくアニメ「冴えないヒロインの育て方」 運命的な出会いに興奮しギャルゲー制作に着手するが、自分が出会った絶対

        • 尖りは禁物

          「俺、京大に行きたい」 と母親に伝えると、懐疑的な表情をされた。高校時代とびきり勉強ができず、テストでは一ケタ台の点数を連発していたこの僕がいきなりこんなことを言い出したのだから無理もない。現役時代は受験勉強が間に合わず、浪人が確定した息子からこんなことを言い出されたのだからやはり無理もない。 だけど、どうせ浪人するなら壁は高い方がいいと思い、その熱意により京大受験生となった。晴れて京大受験生となった僕は1日12時間勉強を目標に遮二無二に勉強した。 そんな生活を続けてく

        迷いの時計-"天才"だった僕を取り戻せ-

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        • 直島旅行記
          9本

        記事

          ミスユー -「元気かな?あいつ」-

          上から見るようにしている 悪いことは拡大して捉えがちだ。旗から見れば小さなことでも、自分の中で何倍にも拡大し、反芻し自己嫌悪に陥り、絶望する。 例えば、好意のある女性と食事に行ったとする。おいしいご飯を食べ、楽しくお話しし、完璧な一日の流れだ。しかし、帰り際に次回の約束を取り付けようとしたとき、遠まわしに断られたとする。すると、それ以前にあった楽しかった出来事はすべて”断られた”というネガティブな印象に上書きされ、本日のデートは失敗となる。 悪いことは拡大して捉えがちだ

          ミスユー -「元気かな?あいつ」-

          100生きて死ね-直島旅行記vol.9-

          最終日の朝。今日もかなりの晴天だ。キッチンに向かうと、小野さんが朝食にフレンチトーストを焼いてくれた。窓から差し込む朝日を背に受け、出来立てのフレンチトーストを食す。 今日は直島にある地中美術館とベネッセハウスミュージアムに行く。小野さん夫婦に別れを告げた後、宮ノ浦港で電動自転車を借り向かった。昨日の豊島と同じく晴天の下駆ける快感は今回の旅の大きな収穫だ。10分ほどすると、地中美術館に着いた。「自然と人間を考える場所」のコンセプトのもと、安藤忠雄により設計された当美術館は、

          100生きて死ね-直島旅行記vol.9-

          タモさんと若手芸人-直島旅行記vol.8-

          豊島から直島・宮ノ浦港に戻ってきた。二つの島を行き来するフェリーの本数は少なく、最終フェリーに乗って帰ってきてもなお午後4時半であった。宿に帰ると、小野さんと奥さんが「おかえり~」と迎えてくれた。豊島について少し話した後、自室に戻り畳の上に広々と寝転がった。 午後6時。完全に重くなった腰を上げ、外へ繰り出した。今日は店が開いていることを祈り、あてもなく歩いていると昨日の店長さんに出会った。2件目にお邪魔しようと思っていたので、「八時くらいに行きます!」と約束を交わした。ふと

          タモさんと若手芸人-直島旅行記vol.8-

          心臓音のアーカイブ-直島旅行記vol.7-

          心臓音のアーカイブ ここで人は様々な想いに浸るであろう  人の命の脆さ 脆さ 尊さ ー 何かを残したいと願いと何も残りはしないという想いとー 心臓音のアーカイブはアーティスト・クリスチャン ボルタンスキーによる作品である。豊島の瀬戸内海に面した場所に作られたこの作品は、ボルタンスキーが世界中から収集した心臓音を使ったインスタレーションである。 のんびりした豊島美術館の雰囲気を引きずったまま、豊島の端にある「心臓音のアーカイブ」に向かった。道中に色とりどりの花々(各々

          心臓音のアーカイブ-直島旅行記vol.7-

          豊島美術館-直島旅行記vol.6-

          風がきもてぃぃ~~~ 豊島横尾館から少し懐いてきた暴れ馬に乗って豊島美術館に向かった。豊島美術館へは約20分。豊島の海沿いを通る国道255に沿って進んだ。最初は平坦な道が続き、次第に上り坂になったが暴れ馬が本領を発揮してくれたので、優雅に側に広がる瀬戸内海に目をやりながら向かうことができた。昨日のどんよりして朧げな海模様を一興であったが、今日は瀬戸内海がやっと全貌をあらわしてくれた気がしてうれしくなった。次第に下り道になり体が空気を切り、風を全身で感じた。風がきもてぃ~~

          豊島美術館-直島旅行記vol.6-

          豊島横尾館-直島旅行記vol.5-

          二日目の朝。清々しい朝だった。昨日の曇天とは打って変わって満天の青空だ。今日は月曜日で、直島の美術館は一堂に休館日だったので隣の豊島(これで”てしま”と読む)に向かう予定だ。豊島へは宮ノ浦港から小型フェリーで行くので、気持ちいい空気とともに宮ノ浦港に向かった。チケットを買い、船内に乗り込んだ。小さい船内には想像以上の乗客がおり、自分は席と席の間の非常用椅子に渋々座った。小さなフェリーだったため、波をつき進む衝動がドドドと直に感じられ、窓を覗くと水面が日光をまばゆいほど反射して

          豊島横尾館-直島旅行記vol.5-

          Tee's DELI GROCERY-直島旅行記vol.4-

          本村から帰ってくると午後5時であった。宮ノ浦港周辺のお店はほとんどが午後6時開店であったので自室で少し過ごした後、港の周辺を散策しに行った。宿から徒歩3分のところにセブンイレブンがあった。直島唯一のコンビニで午後9時には閉まるらしい。(開店は午前6時だから店名は少し卑猥になってしまう) 港には道の駅があってお土産やフェリーのチケットが売っており、近くに草間彌生の「赤かぼちゃ」があった。「よくインスタで見かけるやつだ」と以外何も思わなかった。 うろうろしていると午後6時になっ

          Tee's DELI GROCERY-直島旅行記vol.4-

          護王神社-直島旅行記vol.3-

          「はいしゃ」の興奮冷めやらぬまま、家プロジェクトの最終地点である「護王神社」に向かった。これは、江戸時代から祀られている護王神社を杉本博司が改築したもので、本殿と拝殿そして拝殿の地下の石室からなっており、拝殿と石室はガラスの階段でつながっている。地下の石室は杉本によって設計されたらしい。 護王神社は山の上にあり、ほかの作品に比べて少し遠い。全ての家プロジェクトは午後4時半に終わるが、現在時刻は午後4時。女神に時間を取られすぎた感は否めないが、早歩きで山頂を目指した。護王神社

          護王神社-直島旅行記vol.3-

          ”不自由”な”自由”の女神-直島旅行記vol.2-

          プリンを食べた後、元気を取り戻した自分は「家プロジェクト」の一つである「はいしゃ」に向かった。各「家プロジェクト」の作品は徒歩10分もあればたどり着ける。はいしゃに向かう道中、おもむろにカバンからイヤホンを取り出したがつけるのを止めた。普段はイヤホンをつけることで周囲の雑音から逃れ、自分の世界に浸っているが、今はつけるべきではないと思った。周りと分断するのではなく、一体となって「自分は今ひとりで直島に来ている」と実感したかった。 そういうわけで、ビニール傘が雨を弾く音をBG

          ”不自由”な”自由”の女神-直島旅行記vol.2-

          雨とプリン -直島旅行記vol.1-

          畳の上に胡坐をかいてプリンを食べている。 今日は嬉しいことに雨だ。 日本家屋と雨。濡れた木壁は色が濃くなり、日中でも薄暗くなった部屋の中から雨の音を聞く。 直島に一人で来ている。直島は瀬戸内海に浮かぶアートの島として有名であり、島は小さく自転車と徒歩で移動する。自然とアートの調和をコンセプトに、多数の美術館や建造物が点在する。島は3つのエリアに分類され、東側の本村エリア、南側の美術館エリア、西側の宮ノ浦エリアである。 新幹線、バス、フェリーを乗り継いで約4時間かけて家

          雨とプリン -直島旅行記vol.1-

          「雨の日は不快指数が高くなるけど、今日も頑張っていこう」 中学校の英語の先生の口癖だ。 雨の日は確かに全てのやる気が雨水に流されたかのように綺麗さっぱりなくなる。朝起きてカーテン越しに雨の気配を察知した時には、どうしようもなく学校に行きたくない。 だけど、流されてしまった気力の残骸をなんとか拾い集めて外に出てしまえば、案外雨も悪くない。 むしろ、雨は好きだ。 雨の音が世の音を支配して様々な音を奏でている。ビニール傘に弾かれ、草木に弾かれ、下水道を流れ、あちこちで音が鳴り、

          無題

          最近はアートにハマっている。アカデミックな技法には明るくないので、赴くままに家に溜まっていたポストカードなどを画用紙に貼り付けて、それに絵の具やペンで加工する程度のことであるので、アートと言うよりも単なる図工である。 自己満で構成もないけれど、額縁に入れてみると意外に様になる(額縁は100均のもの) こういうことをしていると必ず「意味求め野郎」が出てくる。 「何のためにしてんの?」 そう聞かれると、ふと何故こんなものを作っているのか?何のために?と考えてしまう。 いつ