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ソーシャルロボットの福祉での取り組み    日本発 デンマーク着

福祉大国デンマーク。医療、介護、育児、教育などさまざまな社会福祉の領域は税金でまかなわれています。
国をあげての介護ですが、近年は人口のますますの高齢化と同時に、介護職の人手不足が深刻な課題となっています。

このような状況をうけて、高齢者福祉事業の現場であるコペンハーゲン市福祉健康局でも近年スポットライトを浴びている課題の1つ。業務としてみた場合、人々にいかに高齢になっても元気でいてもらえるか、(介護の必要ない状態でいてもらえるか)という視点と、いかに人手不足を解決するか、の視点両方から対策案がいろいろと検討、立案、実施されています。

そんな流れの中、地方自治体が研究機関とタイアップして新しい発想や解決策のテストに取り組むことも珍しくはありません。
今回は、日本で開発されたソーシャルロボット、LOVOTがデンマークの3つの自治体にある認知症専門の高齢者施設にテスト導入された例をシェアします。

ソーシャルロボットとは何?


ソーシャルロボットは、デンマークでは、人とかかわり、社会との関係を支援するロボットと定義されています(日本語訳:デンマーク国家生命倫理委員会より)。LOVOTは日本のGROOVEX社で開発されたソーシャルロボット。企業ホームページによると、AIを搭載しており、人の声や動作に敏感に反応、学習し、ペットのようになついたり、スキンシップを楽しんだり、環境に適応しつつ、人との関係性を形成していくとされています。日本では学校などの組織だけでなく、個人向けに販売もされており、家庭でも利用されているようです。

どんな結果になったのか?


LOVOTは指定された3つの認知症の施設で暮らす高齢者に使用されました。対象となった人のうち、何人かはグループでLOVOTとのコミュニケーションを12週間、何人かは個人でLOVOTのコミュニケーションを4週間、両方とも、介護職員の仲介を経て、行われました。オルボ-大学の研究者を中心にLOVOT導入の効果の測定が行われ、結果として、多くの認知症をもつ高齢者のコミュニケーションの糸口になったり、ひと時の鎮静効果が見られたと報告されています。介護職員も新しい介護のツールの1つとして受け入れていたともされています。

今後の可能性

ロボットは介護職の代わりにはならないとはいえ、こういったテクノロジーが発展、導入されていくことで、職場自体が、今まで以上に魅力がある領域になり、人材確保の間接的な支援になりうるかも、と感じています。

もともとモノに感情移入しやすい文化をもった日本の土壌だからこそ、ソーシャルロボットは人々に受け入れやすいのかな、とも思いましたが、それが国境を越えても現場に導入されうる、受け入れられるのには少し驚きました。ロボットがいる暮らしが日常になっても、癒しやコミュニケーションのきっかけになり続けられるのか、ロボットとの”感情を伴った関係性”は発展し続けられるのか、疑問は様々です。が、介護以外の福祉領域でも、ソーシャルロボットの介入は進んでいるようで、日本らしい日本の技術に期待しています。

写真提供先:GROOVEX社
デンマークの研究事例はこちらから(英文)

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