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Refeeld インタビュー 2002年生まれ、「ローファイヒップホップ・ネイティブ」のトラックメイカーが伝えたいインスト音楽の面白さ

私が「サウンドパックとヒップホップ」「極上ビートのレシピ」の連載を行っていたメディア「Soundmain Blog」のサービス終了に伴い、過去記事を転載します。こちらは2023年1月23日掲載の「極上ビートのレシピ」の第1回です。


SpotifyやApple Musicといったサブスクリプション型ストリーミングサービスの浸透以降、リスナー数が急成長したインストヒップホップ。ここ日本でも活気溢れるシーンが形成され、その中から国境を越えて大きな支持を集めるビートメイカーも増加してきている。この連載「極上ビートのレシピ」では、そんなインストヒップホップを制作する国内ビートメイカーに話を聞き、制作で大切にしている考え方やテクニックなどを探っていく。

第1回に登場するのはRefeeld。ローファイヒップホップを象徴するプラットフォーム、Lofi Girlのレーベル部門〈Lofi Records〉から、メインクレジットされた日本人アーティストとしては現時点で唯一のリリース経験を持つ。その作風はギターなどの生演奏と打ち込みを巧みに織り交ぜた緻密なもので、いわゆるローファイヒップホップとは異なるフィーリングも感じられる。さらにEDMの制作やレーベル〈Interspersed Records〉を主宰するなど、多彩な側面を持つ人物だ。今回はそんなRefeeldに取材を行い、その制作方法やローファイヒップホップシーンにおけるコラボ文化の詳細、BGMとしての受容への考え方などをたっぷりと話してもらった。


小学生の時から音楽に親しみ複数の楽器を習得

――最初に好きになった音楽は何でしたか?

ジャンルとしてはエレクトロスウィングです。ジャズをサンプリングしてビートを入れる、みたいな音楽ですね。YouTubeのトップに偶然出てきたCaravan Palace「Beatophone」という曲をいいなと思ったのがきっかけでした。2012年か2013年、小学4年生か5年生あたりの時です。

――プロフィールには音楽教室に通っていたとありますが、そこではどんなことをやっていたんですか?

ヤマハ音楽教室で、五線譜を見ながらエレクトーンを弾いていました。そこで楽譜や鍵盤の基本的な使い方などを学んだはずなのですが、理論的なことに関してはほとんど覚えていないんですね(笑)。

――鍵盤をやっていたんですね。ほかに何か弾ける楽器はありますか?

ギターとベースは弾けます。凄く上手いわけではないですけど(笑)。ギターが欲しいって思ったのは小学3年生くらいの頃なんですけど、親に「ギターはまだデカすぎるから」っていう理由でウクレレを渡されたんですよね。そこからウクレレは一年やったかやってないかくらいで、やっぱりアコギがいいって言って4年生くらいの頃にアコギを買ってもらいました。ベースに関しては、小学6年生くらいの時にやりたくなって、親に買ってもらってそこからやり始めました。すぐ飽きて辞めてみたいなのを繰り返してきて、色々と触れてきました。

――小学生の頃から複数の楽器に触れてきたんですね。それを活かしてバンドなどを組む経験はありましたか?

ベースを始めた小学5、6年生くらいから中学生くらいまでやっていました。ドラムをやっていた父が兄が通っていた高校の保護者の方たちといわゆる「親父バンド」を組む際にベースができる人がいなくて、やってみないかと。だからメンバーとの年齢が30~40歳くらい離れていたんですよね。僕だけ10代で、ほかのバンドメンバーは50代とかなので。練習のためにスタジオに入ったり、文化祭のステージに出たりもしていました。

――そのバンドは音楽的にはどういう方向性だったんですか?

メンバーがメンバーなので、年齢相応な昭和の感じがする邦楽でした。僕が合わせてやっていたところがあったので、次第に音楽性の違いが出てきたんですよ(笑)。「なんかやりたいのと違うな」っていうのを感じて、中学生くらいの頃から徐々に抜けていったみたいな感じでした。


ゲームから入った音楽制作とローファイヒップホップとの運命的な出会い

――そこからどういうきっかけでDTMを始めたんですか?

小学3年生くらいの時に『リトルビッグプラネット2』というPlayStaition 3のゲームをやっていたんですが、それが自分でゲームのステージを作ったりするようなクリエティヴなゲームだったんですよね。その中にDTMのようなスキームというかフローで作れる音楽制作ツールみたいなものがあったんです。左から右にシーケンサーが流れていって、そこに合わせてパターンを乗せて、左に鍵盤が表示されていて打ち込んでいくみたいな。ここでいわゆるDTMではないですけど、楽曲制作に触れました。

パソコンでやるDTMに触れたのは小学6年生の時なので、2014年頃ですね。兄がインターネットでFL Studio GrooveというWindows 8向けに販売されていたソフトを見つけたんですが、その時は確か2000円くらいだったんですよ。DAWとしては安いので、兄が買ってくれたんです。そこからちゃんとDTMに触れ始めました。オリジナル曲を作ってみたりとか、The Beatles「Paperback Writer」などの曲を耳コピで打ち込んでみたりとかをしていました。最初にゲームでの経験があったので、DAWに慣れるスピードは凄く早かったです。

――そこからDTMを本格的に始めて、公式サイトによると最初はEDMを作られていたということですが。

そうですね。FL Studio Grooveを使っていた頃から、徐々にインターネットで色々な音楽に触れ始めたんです。流行っている音楽をどんどんYouTubeとかで漁っていって、Martin GarrixAviciiなどの有名なEDMのアーティストを見つけました。それで、Aviciiがどうやって曲を作っているかみたいな動画を見たらFL Studioを使っていたんですよね。Aviciiの有名な曲である「Levels」を聴いて「僕もEDMやりたい。FL Studioを買ったらできるのかな」と思って、FL Studio 12を親に買ってもらい、EDMを作り始めました。中学生頃のことですね。

――そこからローファイヒップホップに行くにはどういうきっかけがあったんですか?

EDMにも色々なジャンルがありますが、僕が一番ハマっていたのは「フューチャーハウス」というメロディアスで綺麗な音がたくさん入っている音楽でした。でも、毎日フューチャーハウスを聴いていく中で、自分がドロップ以外を全く聴いていないことに気付いたんですよね。イントロとかビルドアップとかはどうでも良くて、ドロップまで飛ばして聴いて、終わったら満足して止めちゃうみたいな。「なんかこれ良くないな。最初から最後まで楽しめる音楽はないのかな」って思い始めて、色んな音楽を探っていく中で見つけたのが、ローファイヒップホップでした。ローファイヒップホップって、最初から最後までEDMみたいに盛り上がりがあるわけではないので、逆に自分にとって最初から最後まで聴けるものになっていたんです。

ローファイヒップホップにはYouTubeやSoundCloudで出会いました。確かSnail’s House「if」という曲がきっかけだったと思います。あと〈Chillhop Music〉から出ているToonorth「Silience」という曲を聴いて「本当に自分が聴きたい曲はこれなんだな」って衝撃を受けて、運命的なものを感じました。そうして聴いていくうちに、すでにDTMをやっていたこともあり「作りたい」という感情に変わっていきました。


EDMとローファイヒップホップの共通点

――EDMとローファイヒップホップって真逆のような音楽にも思えるんですけど、制作において共通するものはありましたか?

実は、僕が今作っているローファイヒップホップにはEDM系のサンプルパックを使っていることがほとんどなんです。あとディレイやリヴァーブの使い方も近いですね。パラメータや効き具合みたいなのは、もうほぼ同じと言っていいくらいです。

でも、僕の曲は正直ローファイヒップホップじゃないって思っているところもあるんです。EDMのサンプルパックを使っていることもありますし、いわゆるローファイヒップホップらしいサンプルをカットしたドライなサウンドとはちょっと違うかなと。サンプリングじゃなくてMIDIでやっていたり、リヴァーブやディレイを常にかけていたりするところもローファイヒップホップではないように思います。ジャンルとして成立し始めている「チルホップ」や「チルビーツ」とかに近いのかなと自分の中では思っていますね。

――MIDIの話が出たところで、現在の制作環境について教えてください。

DAWはAbleton Live 11 Suiteを使っています。ローファイヒップホップを作り始めた時はFL Studioだったんですけど、色々と不便になってきて乗り換えました。僕は楽曲でコラボすることが多いんですけど、FL Studioだとパラデータの書き出しとかの際にエフェクトをかけた状態で出せないといったことがあったんですよね。Abletonなら簡単そうだし、その前からビートメイクのフロー的にいいと思っていたので変えました。でもAbletonもマスタリングの時は不便だと思うことがあって、マスタリングの時だけはStudio One 6 Professionalを使っています。Studio Oneはマスタリング用のプロジェクトが作れるんですよ。ラウドネスメーターが標準で表示されていたり、CDに焼くツールもあったりして便利ですね。あとはリストがあるので、それを見てもらえればと思います。

DAW = Ableton Live 11 Suite
マスタリングDAW = PreSonus Studio One 6 Professional
サンプルファインダー = Waves COSMOS
オーディオインターフェイス = RME Babyface Pro FS
MIDIキーボード = Native Instruments KOMPLETE KONTROL A49
モニタースピーカー = IK Multimedia iLoud MTM
ヘッドフォン = Sennheiser HD 599 SE
モニターコントローラー = Audient NERO
マイク 1 = RØDE NT1-A
マイク 2(アコギやパーカッション用)= AKG P170
エレキ 1 = Fender Made in Japan Traditional 60s Stratocaster, Natural
エレキ 2 = Epiphone CASINO, Natural
アコギ 1(スチール弦)= Epiphone AJ-220SCE
アコギ 2(ナイロン弦)= RAIMUNDO 119C
エレキベース = Fender Japan Jazz Bass Sunburst(2007年製?)
ペダルエフェクター 1 = Chase Bliss MOOD
ペダルエフェクター 2 = Chase Bliss Dark World
ペダルエフェクター 3 = Chase Bliss Generation Loss MK II
ペダルエフェクター 4 = Electro-Harmonix FREEZE
ペダルエフェクター 5 = Red Panda TENSOR
ペダルエフェクター 6 = Benson Preamp Pedal

SNSやDiscordで始まるコラボレーション

――コラボが多いという話が出ましたが、どういう分担で作ることが多いですか?

コラボ相手からドラムやコード進行などの短い数小節分くらいのループが送られてきて、そこから僕が最初から最後までの一通りの進行を作り、僕がアコギやエレピとかエフェクトの音を追加して、ほぼ完成した状態でコラボ相手にリターンするという流れで基本的には作っています。その後相手からフィードバックを聞いて、問題がなければ完成という感じですね。なので、作業割合的には僕のほうが多かったりします(笑)。「コラボ曲です」ってリリースすると、僕のサウンド感が強いっていうのはかなりありがちですね。

――いわば、サウンドパックのような感覚で送られてきたループをもとに作るみたいな感じなんですね。去年も何作かコラボ作を出されていましたが、全部一貫したものがあるなと思っていました。ほとんど海外の人とやっていると思うのですが、どういう経緯でコラボが決まることが多いですか?

文化として確立しているわけではないですけど、ローファイヒップホップではとにかくSNSで相互フォローするんですよね。僕もフォローされて、アーティストとして見たことあるなと思ったらフォローバックします。そうしているうちに「あなたの音楽めっちゃ好きだから、いつかコラボしようよ」みたいなDMが来て、そこからやっていくのがほとんどです。あとはレーベルごとにDiscordサーバーがあることが多くて、そこに入っているとアーティストさんからフレンドリクエストや急な連絡が来たりもします。Discordサーバー内で「ちょっと一緒に曲を作ろうよ」みたいな話も出てきますね。僕はやったことがないんですけど、Discordサーバー内のコラボ用チャンネルに短いループを送ってコラボ相手の募集をかけるのも結構見ます。

――Discordで話が進んでいく感じは今っぽいですね。

YouTubeのコメント欄で会話している人が多いこともありますし、ローファイヒップホップってコミュニティ要素があるジャンルだと思うんですよね。レーベルもとにかくDiscordサーバーを作ってリスナーをたくさん参加させて、みんなでチャットを楽しむみたいな文化があります。


音楽と英語を共通言語に海外レーベルからリリース

――海外アーティストとのコラボの際、やり取りは基本的に英語でのやり取りになるんですか? 英語圏ではない国のアーティストも結構いると思うのですが。

日本のアーティストさん以外とは英語でしかやり取りしたことはないですね。僕もちゃんと英語を学んだことはないので、結構困ったりはします。ただ、英語はお互いの第一言語じゃなくても世界共通語っていう認識はお互いの中である感じがあります。英語ができないコラボ相手でも頑張って英語にして送ってくれるし、こっちもこっちで頑張って英語にして送ります。流暢にとは行かないですけど、お互いに第一言語じゃないってことは理解しているのでトラブルは基本的にないですね。

――なるほど。では、改めてコラボの魅力とは何だと思いますか?

ステムやパラデータを聴いていく中で、「この音ってこうやって作るんだ」という新しい発見があったりすることですね。コラボ相手が前から聴いている憧れのアーティストだったりすると特に。あとはビジネス的というか、数値的な部分でも魅力はあります。オーディエンスからしても、コラボ曲がリリースされると簡単にそれぞれのアーティストプロフィールに行けるじゃないですか。そうやってお互いのリスナーがお互いにリーチできることも魅力です。再生数やフォロワーもソロよりも増えますね。それと同時に、リスナーが新しいサウンドや新しい音楽を発見するきっかけにもなると思います。

――RefeeldさんはアルバムやEP単位でのコラボを多くされていると思うのですが、そこまでがっつり一緒に作ることはローファイヒップホップではよくあることなんですか?

最近のレーベルの動きとして、シングルリリースを受け付けないっていうのが結構あるんですよね。「5曲以上のEPまたはアルバムを受け付けます」という形をかなりとっているので、そこを狙うのであれば「シングルではなく何曲も作ってEPかアルバムにしようよ」という話になり、僕も合わせてやっていることが多いです。

――作品を作る時は、どこかのレーベルに送ることを前提に作ることが多いんですか?

そうですね。僕は海外のアーティストさんと一緒にやる時は、海外レーベルから出そうって話に基本的にはなっています。コラボ相手もレーベル目当てで作っていることが多くて、それを第一目標として作っているところがありますね。


制作のルーティーンと大切にしていること

――ビートを作る時のルーティーンのようなものはありますか?

起きたらまずDAWを立ち上げてピアノ音源を開いて、とりあえず鍵盤を弾いてみるのをとにかく毎日やっています。嫌だなと思ったらDAWを閉じて、また弾きたくなったらDAWを開いて……というのを繰り返していくうちに音楽が生まれてくることが多いですね。基本コード進行からです。

――鍵盤からなんですね。それはやっぱりエレクトーンをやっていたというのがあるんですか?

やっぱり小さい頃から鍵盤に馴染みがあるので、そういうところはあるかもしれないですね。鍵盤じゃないとしたらギターになりますけど、ギターから作ることはほとんどないです。

鍵盤でフレーズができたら、次はドラムを入れていきます。ループではなく、キックやスネアのワンショット系の音でいいと思った音を詰め込んでMIDIで打ち込み、違うと思ったら差し替えていく感じです。ドラムができたらベースを入れて、その後にシンセやエフェクトなどを入れていきます。

――ビート制作の上で意識していることや、大切にしていることはなんですか?

僕が今活動しているジャンルとしてはローファイヒップホップになってくるんですけど、ローファイになりすぎないようにハイファイでエレクトロニックな要素も入れていくことを意識しています。たとえばパッドサウンドによるアンビエンスを裏で鳴らすというのを多用しているんですけど、そういったものは今まで僕が触れてきたEDMとかエレクトロニックな楽曲から来ています。ジャンルの中でのユニークポイントを作ろうと意識的に考えてやっていますね。

また、曲を無理に作らない、無理にアイデアをひねり出さないということも意識しているポイントです。無理にひねり出しても曲としては完成しないだろうなというのが過去の経験からあるので。「今日はいいのが作れないな」という時はパソコンを閉じて、趣味のカメラを持って外に出て、散歩しながら自然の写真を撮ったりとか、カフェに行ったりとかしています。自然が好きで、過去にリリースした曲も自然にルーツがある曲が多いんですよね。

――〈Interspersed Records〉のブログに載っていたインタビューで、福島に行って作品を作ったという話を読みました。自宅ではなく、どこかに行って作るのはよくやっていることなんですか?

そうですね。家でいいコード進行ができたらそこから作業していくんですけど、ずっと家の中で作っているわけではないです。今はMacBookの14インチを使っているんですけど、そのMacBookとイヤホンさえ持って行けば全部できる、というのを意識してセットアップを組んでいます。ただ、そのインタビューで言っていた作品のように「この曲を作るためにその場所に行った」みたいなものは少ないです。


「ヒップホップ」ではなく「ローファイヒップホップ」を意識

――「ローファイヒップホップ」の中には「ヒップホップ」という言葉が入っていますが、ヒップホップというジャンルへの意識はありますか?

僕は元々EDMやエレクトロスウィングが好きで、ヒップホップにルーツや知識は全くないんですよ。そういう意味ではヒップホップではなく、「ローファイヒップホップ」という独立したジャンルを意識しているとも言えます。ただ、先ほども言ったように、僕が作るローファイヒップホップはローファイヒップホップでもないなということを最近は思っています。

――まさにローファイネイティヴという感じなんですね。これは私がビートメイカーの方にインタビューする際にほぼ必ずする質問なんですが、「史上最高のビートメイカー」を5組挙げていただけますか?

〈Chillhop Music〉から出している人ばかりなんですけど、SwørnSleepy FishShopanMiddle SchoolAviinoですね。SwørnはHanzlaxcityという2人のアーティストによるユニットです。Swørnというアーティストネームではローファイ系の音楽を出しているんですけど、別の名義ではダブステップとかのエレクトロニックで激しい音楽も作っているんですよ。なので、2人が〈Chillhop Music〉から出している曲もエレクトロニックな感じがするんですよね。僕はSwørnから学んでいる部分がかなりあります。

Sleepy Fishからはメロディアスな部分で影響を受けています。あとの3人に関しては、単に最高だなって思っています(笑)。Middle Schoolとはコラボしてみたいですね。あとSleepy Fishも。言ってしまえば全員コラボしたいです(笑)。

――シンパシーを感じるアーティストはいますか?

昨年『Torch the Croud』というEPを一緒に出した、YODAKAさんという大阪のアーティストの方にはシンパシーを感じますね。コラボした時も「やっぱりこのサウンド来るよね」みたいなことを制作しながら思いました。いつもTwitterとかInstagramで新しいトラックをポストしているんですが、どれを聴いても良いです。


Lofi Recordsからのリリースでリスナー数が10倍に

――Lofi Girlの話をお伺いしたいと思います。〈Lofi Records〉から2020年にリリースされたProject AERとのコラボ作『Chance Encounter』はどういう経緯でリリースが決まったんですか?

あれはDiscordのDMがきっかけです。〈Dreamhop Music〉というレーベルからリリースされた『CoBeats-19』というコンピレーションに僕も「Can’t Wait」という曲で参加しているんですけど、このコンピレーションの1曲目にProject AER「it all falls into place」という曲が入っているんです。これはProject AERが初めて〈Dreamhop Music〉作品に参加した曲で、僕はこのコンピレーションがリリースされた時に初めてProject AERを聴きました。好きなタイプのサウンドだなって思って、すぐにProjcet AERにDiscordのDMでファンメールみたいな感じで「一緒に曲作ろうよ」って持ちかけたんですよ。そうしたら「いいよ。やろう」って返ってきて、アイデアを交換していくうちに「じゃあ、どこからリリースする?」って話になったんですね。

それで、当時はまだChilledCowという名前だったLofi Girlがちょうどレーベル事業を始めたてのタイミングだったので、ファウンダーであるDimitriに「今レーベル事業をやっているそうだけど、提出してもいい?」ってDiscordのDMで聞いたら「5曲から受け付けている」って返信が来たんです。Project AERにそれを伝えて「〈Lofi Records〉で試してみない?」って話をしたら、それが採用されたという流れですね。『Chance Encounter』は確か6日で全部作りました。

――凄いですね。

お互いの制作スピードが早いのもあるんですけど、タイムゾーンも関係していますね。Project AERはイギリスに住んでいる方なんですが、時差が8時間あるじゃないですか。なので、お互いの寝ている時間を利用して作業を進めていくことに自然となったんですよね。

――〈Lofi Records〉から出したことで起きた変化はありますか?

とにかくRefeeldとProject AERの名前を世界中にリーチできたというのが第一のこととしてあります。Lofi Girlが持っているプレイリストの中にはSpotifyの公式プレイリストよりもフォロワーが多いものもあるので、それにも後押しされてRefeeldのSpotifyでの月間リスナー数が確か100万人を超える時もありました。リリース前は10万人行っているか行っていないかくらいだったので、10倍以上になりましたね。

――夢がある話ですね。

一気に跳ね上がっていきました。あと数値的な実績だけじゃなくて、Lofi Recordsからリリースできたことによって、たくさんのリスナーが聴くわけじゃないですか。それでYouTubeのコメントにも色々寄せられたし、Twitterでのシェアも増えました。コメントやフィードバックがたくさん受け取れて、それが次のビートメイクのモチベーションにもなりましたね。あと「今はみんなこういうサウンドが好きなんだ」というのを知るきっかけにもなりました。コラボの誘いも一気に増えましたね。


インスト曲の面白さを伝えたい

――ローファイヒップホップは気軽に流せるBGMとしての人気が強いと言われていますが、そういった受容のあり方について作り手としてはどう考えていますか?

もちろん気軽に流せるということは、色んな人の耳に自分の曲が入りやすいということだと思います。それについてはいいことだと思ってはいるんですけど、やりすぎなところもあると感じていますね。今のローファイヒップホップは「アート的なもの」ではなくて、リスナーの作業を補助するような「機能的なもの」になりすぎているのかなと思っています。音楽というより環境音みたいな感じというか。

僕はそれはなんかちょっと違うなと思っていて、それもあって自分のソロのEPやシングルに関しては、バックストーリーを念入りに組んでいるところがあります。TwitterやInstagramでの僕の告知では、頭に鍵括弧でポエム的な言葉を添えているんですが、それもバックストーリーから出てきている言葉です。音楽としてだけじゃなくて、音楽に対する思い入れを詰め込んで、それを自ら発信することによって「Refeeldの音楽ってこんなによくできているんだな」というユニークポイントを作ろうと考えて動いています。

――その方向で行くと、インストではなくヴォーカルを乗せる表現にも親和性が高そうですね。

ヴォーカル曲もやりたいと思ってはいるんですけど、僕は「インスト曲ってこんなに楽しいものなんだよ」っていうのを伝えたいんですよね。僕は小さい頃からCaravan Palaceとかのインスト曲を聴いていたのに、当時の周りの人たちは全然わかってくれなかったんですよ。その過去の記憶があるので、インスト曲の面白さを伝えたいと思って活動している部分があります。確かにヴォーカル曲もいいんですけど、リスナーがバックストーリーを見ながら曲を聴くことでどう思うのかを試してみたいんですよね。

――ほかに今後やってみたいことはありますか?

〈Lofi Records〉や〈College Music〉などの海外の有名レーベルからのリリースは既にできているので、その実績を使って今度は日本国内で知名度を上げていきたいです。僕は日本国内ではあまり知られてないんですよ。エゴサしていると「この人日本人だったんだ。知らなかった」みたいなのがよく出てくるんです。

――国内での知名度向上のためにやっていこうと思っていることはありますか?

主宰レーベルの〈Interspersed Records〉でのリリースを増やしていこうと思っています。そして、リリースの際にはジャケットを日本のイラストレーターさんに作ってもらい、イラストレーターさんのSNSでの告知から日本人リスナーを入れていきたいなと考えています。Lofi Girlの存在もあって、ローファイヒップホップとイラストには密接な繋がりを感じるんですよね。アニメのサントラとかもやってみたいです。


Refeeld プロフィール

2002年4月21日、大学で音楽を専攻していた両親のもとに生まれ、幼少期からピアノ、ギター、ドラムに触れて育つ。小学校に入学するまでは音楽教室に通っていた。

2015年からパソコンで音楽制作を始め、2016年から2019年まではEDMをメインに音楽活動をしていたが、現在は「Refeeld」の名義でLofi, Chill, Electronicを中心に制作・リリースしている。

また、サイドプロジェクトでEDMを中心とした「Groudy」の名義でも知られている。

現在、Lofi, Chill, Electronicを中心としたレーベル〈Interspersed Records〉のA&Rを担当している。

オフィシャルサイト:https://www.refeeld.com/

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