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クラウドラップから定番化したImogen Heapネタ

日本のシンガーソングライター、柴田聡子が先日リリースしたアルバム「Your Favorite Things」のレビューをWebメディアのMikikiに寄稿しました。

ネオソウルやR&Bの匂いを強く漂う作品で、その要素のルーツを掘り下げつつ、そうではないヴォーカル表現の面白さの部分などについて書いています。レビューであると同時にAriana Grande論でもあり、最終的にMac Millerの話になります。

この記事ではMac MillerのImogen Heapネタに触れていますが、Imogen Heapは非R&B/ソウル文脈のアーティストながらヒップホップで多くサンプリングされてきました。特に2000年代後半から2010年代前半にかけて盛り上がったサブジャンル「クラウドラップ」で定番化。Imogen Heap使いのMac Miller曲の一つ「Angels (When She Shuts Her Eyes)」も、クラウドラップを代表するプロデューサーのClams Casino制作でした。

Imogen Heapネタ流行の決定打となったのは、恐らくLil Bが2009年に発表したClams Casinoプロデュースのシングル「I'm God」です。幻想的で美しいビートにLil Bのイナタいラップが乗る同曲は大きな話題となり、多くのフォロワーを生みました。クラウドラップの始まりとなった曲の一つです。

クラウドラップのシーンからはA$AP Rockyが大ブレイクを掴みましたが、やはりその作品にはImogen Heapネタが使われていました。例としてはブレイクのきっかけとなったミックステープ「LIVE.LOVE.A$AP」でのClams Casino制作曲「Bass」をはじめ、2013年のデビューアルバム「LONG.LIVE.A$AP」のデラックスエディションに収録された「Angels」「Ghetto Symphony」などが挙げられます。「Ghetto Symphony」はブーンバップ系の作風で知られるV Donも制作に関わっていますが、驚くほどブーンバップ色の薄いクラウドラップ寄りのビートです。Imogen Heapネタの存在感の強さが感じられます。

現在クラウドラップのムーブメントは一時期と比べて落ち着いていますが、Imogen Heapネタは近年も様々な曲で聴くことができます。CochiseTrippie ReddのようなSoundCloudラッパーの曲で好まれているのは、間違いなくクラウドラップのDNAとしてのImogen Heapネタです。

クラウドラップのImogen Heapネタもその一つの例ですが、クラウドラップが盛り上がった2000年代後半から2010年代前半は、シーン全体の動きとしてヒップホップのネタ選びの多様化が目立っていました。Perfume宇多田ヒカルNujabesなど邦楽ネタもこの時期に増加しています。それはシティポップネタを好んで用いたフューチャーファンクや、ローファイヒップホップでのアニメを用いたビジュアルイメージとの同時代性が感じられる動きです。

ここで興味深いのがSoulja Boyの動きです。「Crank That (Soulja Boy)」などのダンスヒット系の曲でブレイクを掴んだSoulja Boyでしたが、この時期にはLil Bとの共演やClams Casinoと組んだクラウドラップの「All I Need」などに挑戦。さらに「Anime」「Goku」のようなアニメ・漫画に言及する曲も早い段階で発表しており、そのトレンドセッターぶりを発揮していました。

そんなアニメネタの中でも特出してリリックでの引用機会が多い、鳥山明の名作「ドラゴンボール」シリーズネタのリリックがあるヒップホップについての記事をWebメディアの音楽ナタリーに寄稿しました。氏は先日惜しくも亡くなりましたが、その功績は永遠です。改めてご冥福をお祈りします。


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