見出し画像

巨骸兵装ソウルレスデーモンズ


 東の大山脈を越え来たる侵略者は巨人を繰る。眉唾物の噂が本当だったと知れた時、ビュリングヒルの町は恐怖と混乱に包まれた。

 襲撃の先触れは、乾いた荒野を蠢く赤き砂塵の積乱雲。その先端を駆ける鉄甲固めの大地竜が町に突っ込んだかと思うと、そいつの曳く特大荷車から緑の甲冑を纏う三体の巨人が威容をもたげ、太陽の光を覆い隠したのだ。

 動作緩慢にして前傾で杖を突く巨人の姿は老人を思わせた。だが歩くだけで石畳は捲れて跳ね上がり、屋根に葺かれたスレートは震動に浮いて脱落する、また杖を振るって家屋を叩いて潰して或いは薙ぎ倒す様は破壊の化身と呼んで過言はない。

 為す術無く犠牲となった人の数は少なからず。生き延びた者らは町を見下ろす丘上の神殿へと逃げ込み、一刻も早く災禍が過ぎ去る事を祈った。しかし悪意ある人間の攻撃を祈りでは止められぬ。恐怖を煽る様にズシン、ズシンと地響きが迫り、やがて轟音と共に入口側の壁が突き崩された!

「アホ共がァ! 神頼みなんぞ無意味だァ!」
「ひぃぃ!」

 神殿内は一瞬の間に絶望に満ち、悲鳴と叫喚が木霊する! 濛々と立ち上る土煙から巨大な兜がぬっと現れると、人々の恐慌は最高潮にまで達した。更に!

「アァーッ!?」

 別方向の壁が崩れもう一体出現!

「神なんざァ何処にもいやしねェ!」

 暴言を響かせながら、新たな巨人は避難者らの付近を威圧的に杖で叩きまくった。すると床面にひびが走り、遂には床が破砕! 大穴が開き群衆を飲み込んだ!

「うわぁーッ!?」
「なァ、なんだァ?」

 思わぬ事態に巨人達も面喰い、訝し気に闇の口を覗き込んだ。だが深い暗黒があるばかりだ。

「結構落っちまったぜェ?」
「マズいィ、ちったぁ残せてねぇと隊長にドヤされ……ン?」

 穴の奥底で何か蠢いた気がした。生き残りか。いや。

「なんか、来るゥ?」

 爛々たる二つの黄色い光と突き出された右拳がぐんぐんと拡大し、巨人の片割れの顎を打ち上げた!

「SHUARRRT!」


【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?