KILLSWITCH OPERATIONS:Haunting Machine Hunting

 アイギ山はミッドランド都市圏近傍の山地で、都市部から逃れた者が隠れ潜むには恰好のロケーションである。実際に今朝方、この山を貫く谷川支流沿いの住宅地跡にて逃走中の亡霊憑きの反応が捕捉され、当該エリアへ至るルートが封鎖された。

 亡霊は未成熟者を汚染し暴走させる存在だ。汚染は不可逆の為、破壊する他ない。それを担う専任作戦群をキルスイッチと言う。

 ◆

 本流側からエリアに進入した我々を出迎えたのは、緑の氾濫に押し潰された旧文明の残骸だった。原型を残した家屋など一割もあるまい。

「儚いもんだぜ、なぁ」

 と、僚輩のムロタが言った。キルスイッチのオペレーションでは通常3名1チームで行動するが、我々の場合1人を狙撃手としており、今私が伴っているのは彼だけだ。

「そんな情緒がわかるとは重篤だな」

「言ってみただけだ、わからねぇよ」

「やはり重篤の様だ」

 ムロタの個性は感情志向が強めだ。もっともムロタに限らず、我々の仲間は一般市民と比べ感情が発達しがちな傾向にある。私の知る中で最も感情豊かだったオガサワラによれば、「スリル」が感情を育むらしい。実際彼はスリルを求めた果てに処理されるに至った。ムロタも近いだろう。

「待て、クローラだ」

 私は百足じみた爬行式ボットの接近に気づき、進行を止めた。広域探査に捉まれ難く、亡霊憑きが好んで使う奴だ。

「見つかったのか?」

「いや、通信波無し」

 この手の哨戒用ボットは通常時スタンドアロンにされ、我々の様な異物を発見するまで通信しない。通信波の傍受を避ける為だ。逆に言えば、気取られなければ潰しても直ぐには悟られない。

 私はクローラが反転した所を狙い、一撃で始末した。その2秒後、狙撃手から通信。

「不審な光を観測」

「なんだ?」

「位置共有。近いな。確認するぞ」

 ポイントに近づくと人影を発見。目標か……否。

「生物的反応検知」

「旧霊長か。案外身近に居るのな。どうする」

「目標との接触可能性有り。泳がせる」


【続く】

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