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「イラストを描く人」と「イラストを依頼する人」が知っておいた方が良いこと

ここ数日は、ウェブサイトやSNSにおいての内容の修正作業なんかをやっていまして、料金表やPRチラシなんかについても見直しているんですけど、その中で「著作権の二次利用料」についてをわかりやすくまとめておいた方が良さそうだと感じましてね。

イラストレーターって?

そもそも、ワタシは「イラストを描く仕事」は請け負っていないので、それについては特に必要性を感じてはいなかったんですけど、今後の活動においては大きく影響が出てきそうなので、きちんと説明ができるように準備しておこうと思ったわけです。
ちなみに、「イラストレーター」はお客様から依頼を受けた物を描くのが仕事で、商業的な分野(表紙、挿絵、広告、パッケージなど)で活動する絵描きをいい、「画家」とは、自らの創作意欲に基づいて絵画を描き販売する職業、と定義されているようですが、境界はとても曖昧です。
どちらも、認定された資格があるわけでもなくフリーランスで活動している人がほとんどですから、プロの定義からなにから曖昧な職業といえます。

制作料金もマチマチで「高い」とか「安い」とかありますけど、作者側もどれくらいの料金が妥当なのか?と悩んだりするわけです。
それよりもそれ以前の問題で、果たして作者と依頼主の間で互いに知っておかないといけない情報がちゃんと認知されているのか?というのが、ワタシはとても気になるわけですよ。

イラストのギャラとは?

そもそも、イラストの制作料金(ギャラ)というのは、制作費を含めた『利用料』なんですけど、知ってましたか?
依頼者は料金を支払いますが、イラスト自体はお金を払った側(依頼者)のものになるわけではありません。
イラストそのものを売っているわけではなく、『使用許可・権利を売っている』ということなんです。

そこが理解されていないと、交渉も何もないわけですよ。

例えば、「名刺用のキャラクターを描いてくれない?」と頼まれたとします。
ワタシの場合、1カット代の料金(デザイン、修正、データ化含む)に利用料をプラスして頂くんですけど、これは「名刺に使う絵の料金」なわけです。
それが、「この絵、チラシにも使っていいかな?」となると『二次利用料』というのが発生するんですね。

制作料金の仕組み

「名刺用の絵の料金」に含まれる価格というのは「1つの媒体の利用料金(一次利用料)」だけなので、追加で利用する場合には二次利用料が発生しますから料金を頂戴するんですけど、サービスで「いいですよ」と許可したりすることがあるんですが、実は、そこが誤解の元。
『二次利用料』というものを知らないと、「うちで作ってもらったんだし、チラシにも使っていいって言われたから」と、制作した1カットのデータをWEBやポスターなんかにもどんどん使用してしまう人がいるわけですよ。

それはダメ、というお話なんです。

これが、いわゆる「著作権」っていうやつで、「イラストを描いた人(作者)に許可を貰う」というシステムが成立するので、使用範囲を広げたい場合はその都度許可が必要なんですね。
「オーダーメイドでイラストを描いてもらった」としても、自由に何回でも使い回しができるわけではありません。
イラストも、音楽や漫画のように、使用媒体や期間ごとに使用許可や料金がかかってきます。
作者の厚意で低価格(または無償)で許可を得られる場合もありますけど、それはあくまでもサービスです。
作者側は「使用許可・権利を売っている」、依頼側は「使用権利を購入している」という意識を持っておかないとトラブルになるので気を付けましょう。
※イラストの買い取り(著作権の譲渡)となると話は別なので、それについてはこちらでどうぞ→『著作権のこと

参考までに、『日本イラストレーター協会』では追加媒体料を次のように定めています。

二次使用料 7割
三次使用料 5割
四次使用料 5割
五次使用料~ 2割
最初は予定していなかった媒体に、後から使用したいというケースもあります。
その場合は追加媒体料が発生します。しかしながら現実では予算的に難しいことも多く、なかなかこの通りにはいかないので、話し合いでお互いの妥協点を見出します。
〈日本イラストレーター協会『イラストの料金と著作権に関して』より〉

イラストの値段って?

イラストの制作料については、「〇〇ではこの値段でやっているから安くならない?」と持ちかけてくる方がいます。
相場など、基準になる料金がないのでこうなるのかもしれませんが、制作時間、道具、技術力、価値、使用範囲などの他に、クオリティや経験値の差でも料金が変わる、というのを知ってほしいと思います。
精密な絵を描かれる方もいますし、〇〇専門という方もいて、他にはないその方の経験によってしか出せないクオリティはそれだけ価値が上がりますし、描ける数が少ないから高くなる、という場合もあります。
高価な道具で制作している、スタジオを借りている、スタッフが大勢いるなど、様々な環境も要因になっています。
「簡単な絵柄は安い」というわけではないんですね。
価格を設定する側にもこういった知識は必要で、バックボーンを視野に入れた価格設定が大事なんですけど、これは「作者の自由」ですから、破格の値段が存在するのは確かで、基準だの相場だのはなくなるわけです。

イラストがもたらすものとは?

なににせよ、『描いた絵(著作物)は描いた人のもの』なので、それを勝手に使っちゃダメ、ってことです。
イラストを描く人も、イラストを依頼する人も、(オーダー時には)「何に使用するのか」を必ず確認するようにしましょう。

(原則的に)イラストは利用媒体ごとに利用料がかかる、というのはわかったと思いますが、中にはこれを請求しない人もいます。
先にも述べたように、自分の絵にいくらの料金をつけるかは描いた人の自由です。それと同じで、「二次利用料を請求するかしないかは描いた人次第」であるということも一応付け加えておきます。

イラストを用いたことで、問い合わせが増えたり、サイトへのアクセス数が上がることがあります。
お店の認知度や好感度を上げる、ウェブサイトのトップページを印象付ける等、イラストがもたらす効果や利益は大きく、とても価値があるというのを知ってほしいと思います。 
プロが描くイラストは、なんとなく描いたものではありません。
日々磨いている感性や技術を生かし、依頼側の目的や思いを形にしていくわけですから、「紙1枚の価値」だけで換算することのないよう、切に願います。


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