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自衛隊、リクルート、博報堂を経てNFTの世界へ 国内大型PJ「わふくジェネ」創設者にインタビュー

こんにちは、クリエイターのためのお金やキャリア、テクノロジーの事例を紹介する媒体・クリエイターエコノミーラボです。

今回は、最近は見聞きすることも増えた「NFT」がテーマのインタビュー企画です。

「よく分からない」「なんだか怪しい」という印象を持たれることも多いですが、NFTによって今までにない形でコンテンツを作り、お金を得ているクリエイターさんの事例は増えています。

この記事では、着せ替えファッションNFT「WAFUKU GEN」(わふくジェネ)を運営するSOLO(ソロ)さんにインタビューを実施しました。

わふくジェネは、大手NFTマーケットプレイス・OpenSeaによれば、2300人以上が所持しており、流通総額が780ETH(※記事執筆時点でのレートで2億円以上)を超えている日本発のNFTコレクションです。

クリエイティブ面を担当するイラストレーター・WAFUKUさんを支援する形で、共同でプロジェクトを開始したというSOLOさんに、いかにNFTの世界へ飛び込み、プロジェクトを進めてきたのか伺いました。

NFTにクリエイターの課題解決の可能性を見出す

——わふくジェネは去年の8月にローンチされました。SOLOさんは去年の2月からNFTの販売を始めたそうですが、どのようなきっかけでその道に進まれたのでしょうか?

SOLO:もともとNFTについては「何かあるんだ」という程度で、一昨年の夏くらいに存在を知りました。何かビジネスをやっていたわけでもなく、当時は会社員でした。

NFTについて知ってからは、クリエイターが作品を作り、それをダイレクトに販売できることや、二次次流通の際にも手数料が作者に入ることに魅力を感じました。

私は人生で、さまざまな小説や映画、音楽に助けられてきたのですが、それらを生み出すクリエイターの方たちが、社会の仕組み上、経済的に苦しんだり、活動を続けることができなかったりという課題があることは知っていて。

NFTのことを知って、その課題の解決につなげられるんじゃないかと思ったんです。実際にNFTを購入し、コミュニティにも参加してみた上で、自分で販売を始めたのが去年の2月です。

「WAFUKU GEN」(わふくジェネ)は11111点のアイテムがあるPFP(※アイコン用画像のこと)コレクション。季節ごとに、着せ替えイベントが開催される。

——NFT関連の活動に至る以前は、自衛隊やリクルート、博報堂などで働かれていたそうですね。これまでのご活動について、詳しく伺えますか?

SOLO:もともとはクロスカントリースキーというスポーツをしていて、大学まで続け、インターハイやインカレで入賞したこともありました。

ただ、プロを目指す夢は叶わなくて、陸上自衛隊に入ったんです。スキーの経験が活きることもありますし、知り合いがいたこともあって、消去法のような感じです。

ただ、消去法で選んだからか、どうしても私自身の性に合わなくて。もっと、 自分自身の活動によって何かを生み出すとか、社会の課題を解決するとか、そういう方面で自分の力を発揮できる場所を探して、リクルートに入りました。

リクルートでは営業として入ったんですけど、そこでやることは、自分がやりたいことと比較して、少しスケール感が小さいという面があって。

もっと大きいビジネスにも携わってみたいなと、博報堂に移り、マスメディアの分野に行ったという感じです。自衛隊には2年、リクルートには4年、博報堂には2年在籍しました。

——では、博報堂で2年間働いていたときに、NFTに可能性を感じたということでしょうか。

SOLO:実は博報堂の後にも別の会社に勤めていたんですが、そこで反復性うつ病性障害という病気になってしまって。その後、休職中にNFTに関する情報を知り、いろいろと活動を始めた感じです。

——会社員から、いきなりNFTのビジネスを始めるとなると、大変そうにも思います。

SOLO:NFTに関しては、皆さんが匿名で、Discordなどでのテキストチャットで仕事が完結することが当たり前なので、個人的にはむしろストレスがとても少なかったです。

私自身がプロジェクトをハンドリングしていることも大きいですが、テキストチャットでほぼ全てが済むことが、性に合っていたのかなと思います。

ビジネスを立ち上げる経験はなく、初めてのことで不安もありましたが、自分の場合は会社員としての働き方よりも、メリットのほうが大きかったと感じています。

「今もやり取りはチャットだけ」匿名コミュニティで働く

——わふくジェネのイラストを描いているWAFUKUさんは、もともと一人で活動されていたそうですね。お二人はどのような経緯で一緒に活動することになったのでしょうか。

SOLO:私も最初は一人で活動していて、そこまで関係性の深くない方にイラストを発注し、私がそれを販売するようなことをしていました。

しかし、よりNFTに対して理解がある人や、NFTの領域でこれまで活動してきた人と一緒にやったほうが融通がきくと考え、WAFUKUさんに声をかけました。

WAFUKUさんももともと一人でNFTを販売していたのですが、その作品を購入したこともあるファンだったのがきっかけです。

SOLO:NFTの企画や販売をクリエイターが一人で全部やるのはとても大変で、特にSNSでマーケティングをうまく行わなければ売れないという課題があるんです。

当時のWAFUKUさんは、絵を描きながらマーケティングも行わなければならない状況に、疲弊しているように見えました。

——もともとどこかで接点があったのでしょうか?

SOLO:SNSやDiscordでWAFUKUさんの書き込みを見て、感じたことですね。

私から、ジェネラティブアート(※素材を機械的に組み合わせることでイラストを数多く生成する手法)として展開したり、コミュニティ作りをしたりする方向について提案しました。

その後、私がマーケティング面をサポートする形で、一緒に活動することになったんです。

——Discordでのボイスチャットや、Zoomでのオンライン会議で話し合ったのでしょうか?

SOLO:いえ、DMでのテキストでのやり取りだけです。それは今も変わりません。

WAFUKUさんは匿名主義で、顔出しもしないし、声も出さない方なんです。

——顔も知らない相手と一緒にプロジェクトを運営しているというのは、面白いですね。

SOLO:NFTの仕事をする上では、顔を知らない相手とのやり取りは珍しくないです。

——一緒にプロジェクトをやることになってからは、どのように進んでいったんでしょうか。

SOLO:WAFUKUさんがクリエイティブを担当し、私がビジネス面を全般的に担当することになり、エンジニアリングの部分については、むなかたさんという方にお願いすることに決めました。

その方とはもともとつながりがあり、CNP Jobsなどのコレクションのコントラクトも書いている方です。

それ以外の部分に関しては、コミュニティのモデレーターやWebサイトを作る人など、さまざまな人たちが後から仲間が徐々に加わってくれるという形でした。

——それはどのように集まっていったんですか?

SOLO:私がわふくジェネをやることを発表した後、Twitterスペースを開催して、そこで「こんなことをやろうと思っています。手伝ってくれる人はいませんか?」と語りかけたところ、多くの仲間が加わってくれたんです。

——Twitter経由で仲間が集まっていったんですね。メンバーの人たちはどのような理由で手伝ってくれるようになったんでしょうか。

SOLO:私たちはわふくジェネというコレクションを通じて、クリエイターがもっと活躍できる社会を作りたいという想いがあるんです。

具体的には、NFTのクリエイターやマーケターが協力して新しい成功事例を作ることを目指していて、そういった部分に共感してくれた人が多かったように思います。

——仲間が増えていくなかで、コレクション運営で気をつけていることはありますか?

SOLO:大事なのは、もともと私たちが決めたことをブレずにやることです。

仲間が増えたことで変わるのではなく、逆にブレないようにコントロールすることに気を使っています。

——NFTの界隈では、怪しい人も多いと聞きます。手伝ってもらう上で、信用してもらうために気をつけたことはありますか?

SOLO:二つのポイントがあります。一つ目は、私自身が去年や一昨年からNFT関連の情報発信をしており、多くの人とつながりがあったことです。

コミュニティでの影響力や、事前に築いたコネクションが信用を獲得する上で大切な要素でした。

二つ目は、音声で発信していたことです。テキストだけでは人間性が伝わりづらいですが、スペースで頻繁に自分の想いを伝えることで、反応がまったく変わってくると感じています。

——音声での発信をよくやっていたんですね。

SOLO:スペースは平日昼に毎日のように開催していました。リアルタイムで数十人くらい参加してくれますし、録音も残しているので、それを後で聞いてくれる人もいます。

音声コンテンツの発信が重要

——わふくジェネは楽曲付きのNFTコレクションですが、これはどういった経緯で作られたのでしょうか?

SOLO:音楽については、最初は付ける予定はなかったんですが、企画が進行する中で、「入れよう」という考えになりました。

担当してくれている作編曲家兼ギタリストのyokodoriさんについても、私がもともとファンで、彼の作品を購入していたつながりがありました。

音楽を付けたいと思った際に、yokodoriさん以外には考えられなかったので、彼に決めたという感じです。

——わふくジェネについては、SOLOさんがファンだったクリエイターさんと一緒に物作りをしているんですね。

SOLO:そうですね、自分が好きなクリエイターさんと、新しいものを作っていけるのはとても楽しいです。

——ローンチは8月だと思いますが、いつ頃から準備を始めて、どのくらいの時間でローンチまでたどり着いたのでしょうか?

SOLO:去年のゴールデンウィーク頃にやることが決まったと思います。

そこから準備には結構時間がかかりました。やろうと思えばもっと短くできましたが、最終的には8月末頃に発売しました。おおよそ3ヶ月半くらいです。

当時はノウハウがなかったので、慎重に進めていましたが、私もいろんな事例を見てきているので、今なら3ヶ月あればローンチできると思っています。

——ローンチ後の反応や感想はどのようなものでしたか?

SOLO:ローンチ直後は、想定していた以上に注目されました。イケハヤさんに言及してもらったこともあり、発売する瞬間は盛り上がっていました。

しかし、NFTは発売から1ヶ月ぐらい経つと、だんだん人がいなくなっていくことがあって。

私たちのコレクションもまさにそういう感じで、9月くらいには最初の盛り上がりから比べると人が少なくなってしまっていましたが、最初に決めたことをずっとやり続けていました。

現状では再注目されている感じもしており、やはり続けてきて良かったと思います。

NFTはローンチ後が本当の始まりだと思います。ジェネラティブ作品においてはクオリティが重要ですが、それだけでは飽きられてしまうので、ユーティリティ(※NFT保有者に提供される付加価値のこと)やコミュニティの熱量など、他の要素を充実させていくことが重要です。

今後もうまく展開していけるといいなと考えています。

——再注目されるまで、何が重要だったと考えていますか?

SOLO:マーケティングですね。これをちゃんとやり続けることが一番大事だと思っています。

発売後、ホルダー数がだんだん減っていくプロジェクトもあるんですけれど、私たちの場合は、徐々に右肩上がりになってきていて、今は2000人ちょっとくらいです。

思い返すと、やはり音声での配信が非常に効果的でした。スペースだけでなく、Voicyというプラットフォームでも配信していました。

NFT関連の人たちは音声コンテンツを聴く習慣がある人が多く、ファウンダーである私が日々何を考えているかを喋ることが大事だと思っています。

国内のNFTマーケティングにおいて、毎日発信し続けることはかなり重要だと感じています。

他にもいろんなことを、コミュニティの力を使ってやってきました。

——クリエイターさんの中には、作品を作ること以外は苦手という方も多い印象があります。自分で作品を作りながら、一人で発信活動もするとなると、かなり大変でしょうね。

SOLO:そうですね。私とWAFUKUさんは互いの強みを活かす関係で取り組めています。もちろん私は絵を描けないので。

NFTの魅力の一つは、このような取り組み方が可能であることだと思います。

どんどん失敗できるクリエイターが有利

——NFT市場の現状については、どのようにお考えですか?

SOLO:参入自体は難しいと思っていますが、同時にチャンスが狭まっているわけではないとも考えています。

NFTを利用してビジネスや作品販売を始めるタイミングについては、あまり気にする必要はないと思っています。

盛り上がっているからといって、今すぐに参入しなければならないとは思いません。

ただ、早くから勉強しておくことで有利に働くこともあるでしょう。そんな感じです。
——ありがとうございます。実際にクリエイターさんから相談を受けることはありますか?

SOLO:実はあまりないんです。ビジネスサイドの方からはよく相談を受けるのですが、クリエイターの方からはあまりありません。

もしかしたら気が引けるのかもしれないですね。個人的にはクリエイターの方からどんどん相談してほしいと思っています。

——SOLOさんが、NFTに向いているクリエイターの特徴について、思い当たることはありますか?

SOLO:どうでしょうね。向いている人は、自分の作品に対して柔軟な考えを持ち、すぐ動ける方だと思います。

クリエイターさんの中には自分の作品に対して神経質になり、なかなか一歩踏み出せない方もいらっしゃいますが、どんどん失敗して繰り返し新しいことにチャレンジできるような方が成功しやすいと思います。

例えば、WAFUKUさんやyokodoriさんはまさにそういう方です。

——そろそろ時間なので、わふくジェネに限らず、SOLOさんの今後についての展望を伺えますでしょうか。

SOLO:はい。まず、当初の目標であった、クリエイターの選択肢としてNFTを広めることは引き続きやっていきたいと思っています。

わふくジェネは、クリエイターが限られた工数の中で売り上げを最大化する事例を作りたかったということで、これはある程度、皆さんに結果を示せたかなと思っています。

まだまだこの切り口でのやり方は続けていきたいと思っています。

また、わふくジェネのコミュニティがあり、そこでは自然発生的に和の文化に携わる人たちが増えてきています。

例えば、着物を売っている方や、琴の奏者の方や、伝統工芸を現代的に解釈して作品に落とし込んでいるアーティストの方などです。

そういった和の文化を新しく、Web3の文脈で世界に広めていくことができたらいいと思っています。これは一つの目標です。

最後に、テキストでのコミュニケーションで完結する、DAO的なコミュニティで働ける人を増やしたいという考えがあります。

私自身がこの働き方で、非常にサステナブルに仕事に取り組めていますし、病気にかかっても会社を立ち上げられるくらいのストレスのなさでやっていけているわけです。

これは多くの人にとって、新しい選択肢になるのではないかと思っています。

これを私たちの一つの売りにして、DAO的なコミュニティをきちんと成立させたいと考えています。

——わふくジェネの運営において、コミュニティに参加しているホルダーの方にもいろいろ手伝ってもらっているのでしょうか?

SOLO:かなりたくさんあります。私以外にもわふくジェネのマーケティングをやってくれている人がいたり、積極的にスペースで喋ってくれる人がいたりします。

あとは、リアルイベントを開催する際に、場所取りを担当してくれたりとか。企業とのタイアップなどを企画してくれる方もいらっしゃいます。

また、わふくジェネは二次創作をかなり自由にできるようにしていて、商用利用も許可しているんです。

実際によこやまひろこさんという方が、二次創作として、「NAGOMI- WAFUKU Kids -」という七五三をテーマにしたジェネラティブコレクションを販売されていたりします。

そういった形で参加してくださるクリエイターさんもいらっしゃいます。

——有志で手伝ってくれる方が多いコミュニティなんですね。最後に、何か言いたいこと等があればお願いします。

SOLO:そうですね、言い方が難しいんですけれど、NFTはどういう情報を得ているかによって、最終的な着地が大きく変わってくるものだと思います。

これから参加したいというクリエイターの方は、その辺りをうまく気をつけて学ばれると良いかなと思います。

一応、わふくジェネのDiscordサーバーや、私のTwitterのDMなどで、すごく簡単な質問などでも受け付けているので、よかったら連絡をください。

——本日はありがとうございました。

ということで、SOLOさんのインタビューでした。

クリエイターさんがNFTというよく分からないものを理解する上での一助になれば幸いです。

さいごに

話を聞いた人

SOLO 「WAFUKU GEN」(わふくジェネ)Co-Founder。陸上自衛隊、リクルート、博報堂などでの勤務を経て、2022年8月にわふくジェネをローンチ。

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