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社会人3年目のストレス発散旅 in長野 1日目後半

1日目、松本駅に降り立った私はちょうどやって来た観光列車に乗り白馬へ、そして信州そばを食べてから松本に戻ってきた。
これからは、いよいよ県庁所在地たる長野市へと向かう。

1日目の経路

松本駅に戻ってくると、時刻は夕方に差し掛かっていた。
行きの観光列車で聞いたところによると、ここ直近ずっと梅雨時の雨が続いていてどんよりした天気だったが、今日の長野は珍しく晴れたという。そのせいか、松本駅を行き交う人たちは、久々の晴れ間にどこか浮き足だっているように見えた。
松本からは、1時間ほどかけて特急しなのに乗り長野を目指す。松本駅でしばらく待ち、やってきたしなの号に乗り込んだ。
しなのは、松本からひとつ山を越え、篠ノ井という街に停車してから長野に向かう。その道中、日本三大車窓に数えられる「姨捨(おばすて)」を通過した。

姨捨付近からは山を下るかたちとなる線路は、眼下に広がる千曲川(ちくまがわ)と、その裾野に広がる千曲市を大きく見渡せるようになっている。
写真はあまり伝わらないが、天気も良さも相まって日本三大車窓たる姨捨は実に綺麗に見えた。そんな景色を見ながら飲む酒は実にうまい。

しなのは姨捨から15分程度走り、終点の長野に到着した。

実は長野駅に来るのは人生2回目ではあるのだが、1回目の時はここから少し離れた温泉街で足湯に入っただけなので、ほとんど記憶がない。

長野駅前に出てみると、歓楽街が広がっていて、夕日に包まれた建物はとても綺麗だった。
ここから夕食を取っても良いが、とりあえず一息つきたくて、松本に戻る列車の中で取ったホテルを目指す。ギリギリでホテルを取ったことが災いし、長野市内にあるビジホは全て満室。唯一長野市内で空いていた元ラブホを改装したというホテルを予約した。
「権堂」という場所にあるというそのホテルは、長野駅から2駅の距離にあった。
権堂駅を降り、徒歩10分ほどでホテルに着いた。

フロント

建物も玄関もやたら昭和感の漂うホテルでチェックインすると、早速部屋に案内される。
通された部屋は、なんというか古いホテル特有の、ザ・昭和な香りが漂っており、部屋のインテリアもやたら昭和を感じさせるものだった。

ベッド
洗面所
風呂

「元ラブホを改装したホテル」ではなく、「昭和のラブホテル」だった。今時のホテルではほぼ見られないような壁紙、謎配置すぎて覚えきれない電気のスイッチ、あんまり効かないエアコン。多分ラブホマニアには堪らない部屋ではないんだろうか。
思わず、「見て!今日泊まってる長野のホテルめっちゃ昭和のラブホじゃない!?」と昭和中盤生まれの母にラインを送りかけたが、母と下ネタの一つも会話したことがない私は、酔いもだいぶ抜けてきたこともありギリギリ送らずに耐えたのだった。
電気のスイッチとエアコンにはちょっと辟易したが、部屋は清潔感もあり、ベットも普通にフカフカで眠れるものだし、Wi-Fiも飛んでいたのでそこまで不自由しなかった。
荷物を置いて一息ついてから、ご飯を食べに行くことにする。
権堂という街は長野市内のちょっとした繁華街らしく、近くにアーケードの商店街がある。ここも昭和に満ちたもので、最近ではあまり見られないようなネオンや看板が多くあった。

土曜の夜7時ということもあって飲み屋や飲食店が暖簾を掲げていた。
商店街ということもあり小ぢんまりとした個人経営らしき店が多く並ぶ。せっかく長野まで来たので居酒屋で名物でも食おうと思ったが、一人旅初心者ということもあり、まだ一人で飲み屋に入るほどの勇気が出なかった。
そうして商店街をウロウロしていると、こんな店を見つけた。

刀削麺、手打拉麺という言葉が並ぶこのお店は、何やら雰囲気から老舗感が漂っており、店主と思われる男性が麺をこねているのが見えた。
長野の名物というわけではなさそうだが、中々に良い佇まいに惹かれ、入店した。
店に入ると、田舎らしいのんびりした雰囲気が漂っている。私は名物という千福ラーメンを注文した。
注文を待っていると、目の前で老年の店主が麺をコネ続けている。
「それ、ひとつひとつ手で捏ねてるんですか?」
彼の人の良さそうな雰囲気に思わず尋ねてしまう。
「そうそう、うちの麺はひとつひとつ手打ちなのよ」
と、手慣れた様子で麺を伸ばしていた。

写真撮影を二つ返事で快諾してくれた店主

店主は私に色々と食材のこだわりを話してくれる。
なんでも、使用している小麦は長野県産の小麦で、一日寝かせておくと酸化してしまうため、その日1日分の麺はその日に捏ねるらしい。
すると、「ちょっとこれ食べてみてよ」と、捏ねたての麺を小皿に分けて出してくれた。

麺好きの私はこれまで数えきれぬほど麺を啜ってきたが、これ程に小麦の味が引き出されている麺は初めてだった(もっとも、スープも具もないので当然ちゃ当然だが)。まさに小麦をそのまま食べているようで、本来の麺とはこういうものかと実感させられるものだった。
先週TVの取材が来たせいでお客さん多くて大変だったよーと苦笑しながらも、かなりの熱意を持ってラーメンを提供しているようだった。

そんな話をしているといよいよラーメンが出てくる。醤油ベースのスープに、具は豚肉と野菜が入っているもの。
一口食べてみると、店主の性格に似てか、すごく優しい味がした。濃すぎず薄すぎないスープに、店主が一本ずつ捏ねた麺が絡みつき美味しい。
普段スープを完飲しない私だが、スープまで飲み干してどんぶりをカウンターにあげ、会計の1000円を置く。
「また長野に来た時は是非寄ってよ。」
私が旅の者と知ってか、最後まで優しく声をかけてくれた店主にお礼を言ってから店を出た。

長野に来てまで、まさかラーメン屋の店主とこんなに仲良くなるとは思いもしなかった。適当に寄った店にも関わらずこんな暖かい店を見つけ出せるというのは一人旅の醍醐味である。
長野に到着して以降一滴の酒も飲んでいなかった私は、近くのスーパーで地酒の日本酒とつまみの小魚を購入した後、例の昭和ラブホに戻り、部屋で一人晩酌をした。

これにて、2記事に分かれた長野旅行1日目は終了である。結局信州そばと手打ちラーメンを食べたほかは移動しただけで観光地の一つも行かなかったが、あまり来たことのない長野という土地をかなり堪能したように思える。それは、一人旅でしか得られない醍醐味を十二分に味わえ、1週間のストレスがほぼ浄化されたように思えた。
1日目に続いて、明日行く場所なんて全く決めてない。明日はどこへ行こうか、何を食べようか、それは全て明日次第。明日はどんな1日が待っているか楽しみにしながら、買ってきた日本酒を空にして就寝した。

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