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無料公開⑥ 女子プロ野球リーグを創る

2007年夏に女子硬式野球の試合を見てからまもなく。

私のもとに不思議なご縁が舞い込んできました。


私の母校である、福知山成美高校から、

「学園再生のお願いをしたい。理事長になってくれないか」

という打診があったのです。


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「名前を貸してくれるだけでもいい」

とも言われましたが、私は母校に恩を感じていたので、学園側がよければ無報酬で構わないし、実際の活動や金銭的支援をしたい、と伝えたところ学園側は「是非」ということでしたので、2009年1月から正式に理事長の仕事を引き受けることとなりました。


そして、学園再生の一環として

私は迷わず女子硬式野球部設立を提案しました。

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全国大会が開かれる丹波市の隣町にある学校が、

女子硬式野球人口増加の足がかりになるのであれば、

こんなに素晴らしいことはない。そう思ったからです。


全国に5つしかない高校女子硬式野球部を、この学園からもっともっと増やしていこう、と考えました。



しかし、その道のりは楽なものではありませんでした。



教育委員会、教員、保護者、その他もろもろ、いろいろな人物や団体と折衝をしていきましたが、

反対の声ばかりだったのです。

女子野球反対


ましてや私はもともと門外漢。教壇に立ったことすらありません。

学校側からすれば、よそから急にやってきた理事長が

「女子硬式野球部を創設するから協力してほしい」

と言っている。

気分がよくない人もいたでしょう。



それでも私は日々の仕事の隙間を縫い、睡眠時間を削り、

土日もなく、私財を投じ、あちこち走り回っていました。



誰に期待されているわけでもなく、誰に頼まれているわけでもありません。

全くどうなるかもわからないまま、とにかく行動し続けていました。



そんな姿を評価してくれたのかどうかはわかりませんが、少しずつ、協力してくれる人が増えていきました。



そしてなんとか、その年のうちに

「福知山成美高校 女子硬式野球部」

が正式に発足しました。


最初の部員はたったの2人。

併設の福知山女子高の子たちを加えて、4人でのスタートでした。

部員4名

グラウンド整備、ダッシュ、キャッチボール。

シンプルで退屈な運動ばかりなのに、みんなは楽しそうに、嬉しそうに練習をしていました。


「なんでそこまで嬉しそうに練習するの?」


と聞いたところ、

「だって、春夏甲子園に4回も出場した男子野球部と同じユニフォームやもん! それだけで感激です!」

と、まっすぐな瞳で彼女たちは答えました。

この子たちのためにも、私が頑張らねば、と気持ちが引き締まりました。

野球楽しい


またそのころ、女子硬式野球部設立の「営業活動」は難航していました。

どの学校も珍しがって話は聞いてくれるものの、いざ「設立」となるとみんな同じような反応を示しました。

「校庭が狭いですからねぇ。どうしても男子野球部が優先になるかと……」
「硬球は危ないのでは? 女子たちが怪我をしたらどうするんですか?」
「前例がないから難しいですね」

帰り際に「頑張ってくださいね」とか「応援しています」と言われるのがとても苦痛でした。

応援しているなら女子硬式野球部をつくってくれ、と心の中で叫ぶこともしばしばありました。

女子硬式野球部設立の提案をし続けていると、中には私の想いに共感して、行動してくれる人もいました。

しかし、それでもなかなか実現しませんでした。

いろいろと理由はありましたが、いつも最終的には、

「あまりにも将来性がない」

と、異口同音に言われるのです。

仮に高校で野球をしたところで、就職に有利になるわけでもない。

女の子は草野球をする場所もない。

クラブチームもほとんどない。



青春を懸けて野球を頑張る女の子はいても、

大人たちが、環境が、それを終わらせてしまう。


また、「人生を懸けて野球をやりたい」と思う女の子がそもそもいない。

だから競技人口も少ない。だから部もできない……。


どんなに女子硬式野球部を増やしても、

2007年に丹波で見た、女の子たちの涙をなくしてあげることができないのです。


図1


はじめて女の子が野球をする姿を見た日からすでに考えはありましたが、

現実を自分の目で見て、肌で感じ、気持ちが固まりました。



───「女子プロ野球リーグをつくる」───**

**

日本女子プロ野球リーグ

これが、私が「女子プロ野球リーグ」をつくると決めた瞬間でした。

ここから、10年以上に渡る物語が始まりました。

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Note版 特別コメント

現在、U-18女子日本代表監督も務め、福知山成美高校女子野球部で監督もなさっている

長野恵理子さん

にお話を伺いました。


「福知山成美高校に女子野球部が創設される」

と聞いた時は、 鹿児島の神村学園高等部か、関東の高校でしか野球を続ける環境がなかったので、

「これで関西圏で野球を続ける環境ができる!」

「大好きな野球をやめなくていい子どもたちが増える!」

と思いましたね!

とにかく、これで関西の女子野球、女子野球界が盛り上がる!

と思いました。

実は当時クラブチームで仲間を増やすことに苦労していたんです... なので余計に感動したことを覚えています!

福知山成美高校女子野球部の監督に就任してからは、チームが勝つことも大切ですが、

「あなた達が野球をする事で、もっと日本の女子野球の発展に繋がるんだ!」

ということを伝え続けました。

成美高校から女子野球を広めようと思っていましたよ!

2010 年に女子プロ野球が誕生してからはものすごいスピードで女子野球は発展していますよね。

「女子野球も他の競技のように夢や目標を持てる競技になってきたんだ」

と思うと、未来がとても楽しみです。

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女子プロ野球リーグ

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人生は蒔いた種のとおりに実を結ぶ。

いつかこの想いが届きますように―――。