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青ブラ文学部#合わせ鏡『鏡の扉』

私は幼い頃から妄想癖があり
自分の理想的未来を
夢の中で思い描いていた
そう、私の集中力は恐るべきもので
夢をも操ることが出来たの

私は独りぼっちの女の子
姉弟もおらず、近所の同い年の子からも
変わった子って見られてた

学校が終わり帰ってからの遊び相手は
複数の自分
三面鏡の中を覗き込み
ずっと自分の眼を見つめる
瞬きはしない
微笑み禁止

暫く じーーっと眼を見つめていると
異世界への扉が開かれ
複数の自分が現れる
1枚目の自分はこんにちは!って語りかけ
2枚目の自分は今日の友達との会話を詰る
3枚目の自分はその時の気持ちを問いかけ
4枚目の自分は何故そんな事をしたかと責める
段々怖くなって
私は1枚目の自分に視線を戻した

自分に嘘はつけないもの
誤魔化したって
いつも鏡の中の自分はお見通しだった

私は独りぼっちのまま大きくなり
ある日、可愛い少女に出会った
見た目はまだあどけなさの残る
車椅子の女の子
その子は人懐っこく私に喋りかけてきた

「ねぇ、お姉さん。『ペトリコール』と『ゲオスミン』って知ってますか?
何だかぺトリコールの匂いがしますね。もうすぐ雨が降り始めますよ。」

「へぇー、言葉よく知ってるね。でも、その匂い私も分かるよ。私、この匂い好きなの。」

所謂『ペトリコール』は“雨の降り始めの匂い”
であるのに対して、“雨上がりの匂い”といえるのが、『ゲオスミン』である。

その少女とは通勤通学の電車が同じで、何度か顔を合わすと、いつの間にかLINE交換する程の友達になっていった

屈託のない笑顔を見せる一方
プライベートを明かす事はなく
その少女もいつもひとり車椅子で
多くの大人にまみれて生きていた

私には  笑顔の裏で
硬い鎧を被り、暗い悲しみを纏いながら
虚勢を張っているように見えた

私が何とかしてあげたい…

真っ直ぐに少女を見つめて
彼女と向き合ったけど無理だったわ
ある一定の距離が縮まる事はなく
むしろ反感を買うようになってしまった

落ち込む毎日が続いたある時
何処からか、ふと一人の男性が現れた
「鏡の正面に立っていませんか?」
「鏡はずらして下さい」

私はハッとした
少女と真っ向から向き合おうとしたけれど
少し離れて斜め後ろから  そっと寄り添う事も出来たはず
と気付かされた


そして同時に私は、もう一度ハッとした
その時の男性は、私が幼い頃に夢見ていた人にそっくりだった
そうだったわ、忘れてた!三面鏡!
鏡はずらして見なくっちゃ…

急いでお家に帰って
私は三面鏡を覗き込んだ

ずっと自分の眼を見つめる
瞬きはしない
微笑み禁止

昔の儀式を思い出した

すると異世界への扉が開かれ
複数の自分が現れた
1枚目…2枚目…3枚目…4枚目…

だんだんと私の真相に迫る自分に近付くはずなのに
奥の方で微笑みかける人がいる
「わたし…?じゃなくて…あなた…貴方だわ」

その後、私は現実世界で素敵な男性に出会った
もう私は独りぼっちではなくなったの

貴方は、いつも私の心を支え守ってくれている!
いつも一緒に笑って
いつも一緒に泣いて
いつも一緒に悩んで
応援し合う
何故いつも感覚が同じなのかしら!

「それは、私とあなたは合わせ鏡。
運命共同体ですから♡」

[完]


1階和室前の扉と左右に向き合う鏡

お家を建てた時に、私が着物を着る時、帯を結ぶ際に『合わせ鏡』にして後ろを確認できるように…と鏡を掛けたもの。
ところが!何という事でしょう😣💦
真ん中に自分が立つと、後ろは全く見えない!
という事に気付いたの😭
鏡は斜めにずらして設置しなくちゃ‼️
この鏡、可動せず、バッチリ壁に張り付いてます…。
我が家の七不思議の1つ😅

山根あきらさんの『合わせ鏡』のお題が出た時に、これは何か書かねば!と思ってお話を書きました🤭
楽しかったです🎶
いつも色んな角度からのお題を投げかけて下さり、ありがとうございます^^


最後まで読んで下さり、ありがとうございました(*´˘`*)♡

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