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米津玄師「海の幽霊」を聴きながら

北海道、十勝にも少し遅い夏が来た。

米津玄師は『STRAY SHEEP』というアルバムを出し、その中には「海の幽霊」という曲も含まれている。

シンプルに解釈すると、まあ、盆の歌だ。帰ってくる魂とのひとときの邂逅。米津玄師というひとの言葉に多い、『喪ってしまったひとへの歌』だろう。

この曲を聴くと思い出すひとがいる。

EMMA "HAZY" MINAMI。

ほんの少しだけ存在した、もういない、VTuberである。

テレビ局が入ったオーディションでデビューした彼女は、歌姫の多いVTuberの中にいても目立つような、もう少し嫌味な言い方をすれば『プロっぽい』シンガーだった。様々な思惑とブームに振り回された彼女の生き様、について多くを語る気はない。どうせ多くの部分は僕の妄想に過ぎないし、あまり楽しいものではないからだ。

正直に言おう。僕は米津玄師が歌う「海の幽霊」の百倍は彼女が歌ったものを聴いた。

米津玄師は今回のアルバムを作成するにあたり、『(前作から)三年も待たせてしまい、このアルバムを聴くことができなかった人も居たと思う』といった旨の発言をしている。

「海の幽霊」が発表されてから『STRAY SHEEP』に収録されるまでに、彼女はいなくなってしまった。

VTuberの引退なんて日常茶飯事だ。そりゃ、あれだけいるのだから、毎日だれかが増え、減っていく。数字になっていく。

ちょっとだけ資本が大きかったエマも、そのプロジェクトの大きさ、或いは小ささ故に出来ることと出来ないことの間で悩み、引退してしまった。

「海の幽霊」、という楽曲を、あたかも米津玄師が『自分はボカロPだった』と強調するかのようにデジタルな加工で歌うのを聴きながら、エマの歌声を思い出す。

エマ、EMMA "HAZY" MINAMI。彼女も、もう彼女じゃない彼女も、どこかでこの曲を、アルバムを聴いただろうか。きっとそんなこと感じちゃいないだろうが、このアルバムは、貴女『にも』捧げられたアルバムだ。

エマ、君の目が眩むくらいに、そこは豊かだろうか。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。