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メイっぽい人によるNight in the Woods 感想と考察

Night in the Woodsとかいうゲームをやった。

友達に勧められてやったのだが、「主人公が君に似てるよ」と言われたので、他人から自分がどういう風に見えるのかが気になったのと、それゆえにどうしても私の感想を聞きたいというので、やった。
結構どんよりしたゲームだと聞いてたのでイマイチ食指が動かず、ダウンロード後もなかなかやらずじまいだったが、3日かけて1周目をクリアした。
実際面白かったかって?面白くなかったらこんなに書くことはない。正直今年やったゲームの中でTOP3に入る面白さだった。

あらすじ

主人公は20歳の猫の女の子、メイ。大学進学を機に家を出たが、なぜか中退して故郷の限界工業都市ポッサム・スプリングへ帰郷してしまう(もちろんちゃんとした理由がある)。バンド仲間と大暴れしたり、街をうろうろしながらニート生活を謳歌していたメイだが…。

※これ以降は壮大なネタバレを含むので興味がある人はプレイしてから読んでほしい。あと、内容の考察については他の人の考察を読んだり友人と内容を議論しているため、もしかしたら誰かの考察などと被っているかもしれない。ご了承をば。

なぜメイは黒い山羊に呼ばれたのか?

最もな理由は「メイがモラトリアムだった」ことである。結局黒い山羊(というか地下組織)の目的は、下の世代を入れ、組織を存続させること、生贄を捧げさせ続けることだった。そのため、精神的に洗脳しやすい状態の若い人間が必要だった。ジャームは前述のように生贄に「される側」だったし、アンガスとビーは精神的に大人だし、グレッグも成長途中であった(それに加えてアンガスという強力なストッパーがいる)。それゆえ消去法で精神的に幼いメイを洗脳しようとしたと考えられる。さらに、精神疾患持ちのメイはメンタルの脆弱性を突きやすかったとも考えられる(そういう意味ではメイが帰ってきたのを見計らって黒い山羊が動いたとも考えられる。さらに、黒い山羊がコズミックホラー的なものだとするならメイの症状再発ですら黒い山羊のせいかもしれない。さすがに考えすぎか)。
また、メイが標的になった理由に、メイが鉱山ガスの幻覚症状にやられていた説もある(一番下の記事参照)。これも恐らく要因の一つとして挙げられる。だから地下組織のメンバーのシルエットにガスマスク的なものが見えたのかもしれない。
また、いつから狙われていたのかについてだが、少なくともディープ・ホロウ・ホララーズが夢に出てきた時点で既に狙われていたと考えられる(ディープ・ホロウ・ホララーズは地下組織と同様、謎の信仰に取り憑かれて最終的に死んでしまった)。だとすると、悪夢の最後に出てくる友人たちのモチーフ(クマ、キツネ、ワニ、鳥)をどう説明するのかという問題が出てくるが、これは黒い山羊がある程度メイの心理状況を把握できる力を持っていたと考えて良い気がする。あるいは前述でメイが本当に幻覚症状にやられていたと考えると、メイの精神状況と黒い山羊の見せた幻覚がミックスされてメイの夢として具現化したとも言える。

ブルースの行方

ブルースはある日「明日俺は故郷に帰る」と言って翌日にいなくなってしまうのだが、彼が本当に故郷に帰ったかどうかについてはかなり疑問を呈する。
というのも、ケイト牧師にその話を打ち明けた時に「そう…」と言ってあまり喜ばなかったためである。本来であればブルースは自分のいるべき場所に帰ったのだから、社会復帰を支援していたケイトの立場からすれば、彼が前に進んだという観点で非常に喜ぶべきことだと思うのだ。
ここで考えられる説は主に下記の3つ。
①一個人として喜べなかった
ケイト個人の感情としては、ブルースに街からいなくならないで欲しかった(ケイトがブルースに好意を抱いていた可能性もある)。また、ポッサムスプリングでは人口流出が著しいため、街を出ずに社会復帰をして欲しかったという意図もあったかもしれない。街を出ない前提であれば、人口を1人でも増やすということで議会を説得する材料にもなったはずだ。
②ブルースに家族がいないことを知っていた
本当に故郷に帰ったが、実は家族にはとうに見放されていて故郷に帰っても自分の居場所がない。仮にそうだとして、ブルースがそれを自覚していたかは定かではない。しかし、いずれにせよ帰る場所がないのにも関わらずこの街を出て行ったことで、彼を支援する手立てを無くしてしまったゆえに喜べなくなってしまった。
③故郷に帰っていない。実は地下鉱山の組織に殺されてしまった
これが最も有力だが、そうするとブルースは自分が消されるタイミングを知って優しい嘘をついていたことになる。彼の予想が当たっていたのか、実は地下組織の存在を知っていて敢えて消されに行ったか、はたまた、自分が消されると感づいて、街を離れたもしくは離れる直前に捕まって消されたか。地下組織のシーンでも「浮浪者」(的な単語)の発言があったところを考えると、結果的には殺されたと思われる。そしてケイト牧師が喜ばなかった理由は、地下組織の存在を知っていた(少なくともメンバーではない。メイが昏睡状態の時に横にいた。まぁ、地下組織が実は全滅していないという説があれば話は別だが…)もしくは本当に故郷に帰ったと思っていて、心理状況としては①、といったところだろう。

ジャームの特殊な立場(個人的ベストシーンオブジイヤー)

メイがボロボロでグレッグとアンガスの家に帰還した後、もう帰るね…という話になった時のこと。ジャームが「メイの本名なんていうの?」と尋ねるくだりがある。その時にメイが「マーガレット。ジャームは?」と答え、ジャームが「ジェイミー」と答える。その後「気をつけてね、マーガレット」「ありがとう、ジェイミー」(会話うろ覚え)と、本名を呼ぶ部分があるのだが、このゲームで最も私が推すシーンがここである。
あだ名で呼び合う相手に本名で呼びかけるという行為は、2人の関係が特別なものであったと暗に示しており(それが恋愛関係かは別)、少なくともジャームがメイを特別な存在だと思っていたと考えて良いだろう。ちなみにこのシーン、ジャームの実績を解除した時に発生したのだけど、実績解除してなかったらこのシーンないんかな?
あと、一番下で紹介している方の記事にもあるが、ジャームは4人の輪の中には入れず、ジャーム自身もそれをわきまえているためこの発言に至ったという考察が素晴らしく刺さり、ますますジャームが好きになった。最後に近所の井戸から先にメイが脱出した時、ジャームがひょっこり現れた時の安心感たるや。私は一生ジャームを推します!(ほんまかいな)

そういえば、ジャームは過去に地下組織に狙われたところを命からがら逃げたエピソードがあるが、彼が狙われた理由はそこまで難しくない。
①よそ者かつアウトローな人(旅人やパンクス)とよくつるんでいる
②一人で行動していることが多い
以上の理由より、ケイシーと同様「この街にとって不要で、消しても問題のない人間」と判断されたと考えられる。

グレッグについて

なぜアンガスでもビーでも推しのジャームでもなくグレッグなのか。感想に挙げた理由として、私にはグレッグのような、一緒におもろいことをやってゲラゲラ笑うような友達が多いためである。それゆえ、グレッグのイベントが最も身近に感じられた。
彼にはアンガスという恋人がいて、メイが大学に行っている間に二人で他所へ引っ越そうと計画していた。そのためぶらぶらするのをやめて、真面目?に働くようになったのだが、メイが帰って来たことで少しずつ昔の自分に戻ってしまった(このことに対してアンガスは快くない感情を抱いていたが、それはまた別の話)。しかし、グレッグは自分が昔の状態に戻るとアンガスと二人で決めた計画が倒れてしまうことも薄々感じており、そこでメイにドーナツ屋の駐車場で「前に進ませてくれ」という発言をした。これによって過去の自分と決別したのである。
ただ、これはメイ的には結構つらい話だと思う(本人はあんまりそう思ってなさそうに見えるけど)。
メイが街に帰ってきた時、ビーは自分の親の店で働いていた。ビーはその過程で精神的に成長したため、メイからすると変わったように感じた。また、ビーから見てもメイが成長しないままでいることに違和感を抱いていた印象がある。これは、メイが酔い潰れた日の帰りのイベントでなんとなくわかる。
アンガスは2人と比べると距離感が少し遠い(イベント分岐で幽霊探し以外はアンガスの選択肢が出ないことがそれを物語っている)し、ケイシーはいなくなっている。変わらずにいてくれたのはグレッグだけのように感じたと思う。しかし実際はそんなことはなく、グレッグの精神も成長しており、昔のままではいられないと言われてしまう。唯一自分に一番近い状態でいたと思う人間にも置いていかれてしまうのは結構辛い。
自分の話になってしまうが、私はちょうどメイみたいな感じで、自分が故郷の外の大学に行っている間に、友人は働き始めたり結婚して子供ができたりした。みんなで集まろうという話が出た時に、自分だけ「いつでも空いてるよ!」という回答が虚しく、他の人は「仕事が…」「家が…」という理由でなかなか集まれない。もちろんそれは何も悪いことではないのだが、個人的に「あぁ、みんな大人になったんだな」と感じさせられることがある。そして「それに比べて自分は全然変わってないな…」と自己嫌悪のような感情を抱いてしまうのである。
なので、変わってない仲間だと思っていた友人が変わってしまうというのは裏切りにも似たものがあってつらい、と思う。何度も言うが他人が変わってしまうことは何も悪くない。受け手の問題である。
ちなみに、同日にグレッグではなくビーと過ごす方を選択すると、ビーの本音を知るイベントが発生する。こちらは最終的に色々あるけどメイとビーはずっと仲良し、という結論で終わるため、グレッグが前に進んでいくイベントと対比していると個人的に思う。

おわりに

私の感想と考察は以上である。細かい部分の感想を挙げるともっと色々あるがキリがないのでこのあたりにしておく。
主人公と自分の立場が似ていることもあってか、かなり色々と考えさせられるゲームであった。また、メイの日記がペンギン・ハイウェイよろしくノートになんでも書きたい欲を掻き立てられるものであったため、このゲームは感想をメモしながら進めていった。これが結構楽しかったので、騙されたと思ってお試しあれ。他のアドベンチャーゲームでも応用できると思う。

おまけ

そういえば、私とメイの共通点は確かにいくつかあった。女性で、ベース弾きで、闇堕ちしがちで、破壊衝動が強くて、お酒に弱くて、人間関係には恵まれている。大きく違う部分と言えば、私は万引きもしないし、バットで蛍光灯も割らないし、元彼の前で泥酔してマーライオンになるようなヘマをするような人間じゃない。

また、このゲームの感想と考察についてはこの人がすごい熱量で書いているので興味があればどうぞ。私よりずっとすごい。


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