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独占と共有、国家が求めるバランスとは?

一社占有が行きすぎると反発を招く。いつの時代もそういうことを繰り返してきました。

メディアの報道の仕方のせいかもしれませんが、欧州当局も米国司法省もなんのためにやってるのかよく分からない気がしています。ユーザ目線でいうと、アップルやグーグルを便利に使っているだけなのに、そのサービスに茶々を入れて、もし使えなくなったり、アップルが今後低迷して、次のiPhoneが出なかったりしたら困るなーと思ったりします。もはや、スマホは個人にとっても重要なインフラなので、使えなくなったら死活問題という人は多いのではないでしょうか。個人を証明したり、ものを買うときに支払ったり、もはや何を登録しているのかすら把握できなくなっている状況なので、もしこれを取り上げられたら、困ってしまう。
政府当局は個人の利便性を犠牲にして何を実現したいのかが今ひとつよく分かりません。というのが率直な感想なのですが、今回の話はそういうことではありません。

独占と共有の狭間

国家、というよりこの場合は人間と言った方がいいのかもしれませんが、自分じゃない人が市場を独占していると何かと理由をつけて阻止しようとします。今回の巨大ITに対する行動もそういう部分が少し感じられなくはない。独占は良くないから共有しよう、というのは良さそうに思えます。確かに健全な競争が進化を促し、利用者はより便利なモノが安価に手に入るという理屈はありそうです。しかし、これはそのときの正当性を主張するための理屈のような側面もありそうな気がします。
国家は自分が独占だと共有しよう、とはならない。自分が独占している分には問題なく、独占が良くないとは言わない、ダブルスタンダードのようなところがあります。独占と共有のどちらがより利用者にとっていいのかはそのときの状況に左右される、というのが本当のところなのではないでしょうか。

国家であれ企業であれ、独占が続くと、確かに良くない部分が出て来ます。人間サボりたくなるもので、地位が安泰だとそれ以上の改善はしなくなり、進化しなくなるというのが大体のパターンです。それを避けるために独占は良くないということになっているのでしょう。後はタイミングだと思われます。
今の巨大ITは確かにかなりインフラを独占しています。ただ、このタイミングで規制をかけるのが良いのかどうかは微妙な気がします。たとえばスマホに変わるような便利なツールが現れ始めているか?と考えると時期尚早な気もするし、アップルは確かに大きな存在で、個人的にはiPhoneが廃れるとまずい、という状況ではありますが、Androidスマホという選択肢がまだ残っています。グーグルも代替えはあるし、メタも代替えはある。まだ競争環境にあって、巨大IT企業が左うちわか?と言われるとそうでもない気がします。

国家が独占している通貨はいつまで独占が許されるか

一方、国家が独占しているものが一つあります。それは通貨です。法定通貨と言われるモノです。しかし、法定通貨が出てくるようになってすでに100年以上経っています。そろそろくたびれ始めてるかもしれません。今のところ進化は止まっているように見えます。そこに、新たなイノベーションが出て来ました。そう、暗号資産です。特にビットコインがそうです。
これまではデジタル上でいろいろなことが完結する、という時代ではありませんでした。そんなときには現物としての通貨が必須だったわけです。法定通貨の前は金でした。いろいろな生産物をやりとりする仲介としての通貨は共通の誰でも受け取ってくれるモノが必要です。
ところが、様々なことがデジタル上でやりとりできるようになると、逆にモノだと不便です。デジタルじゃないので、デジタルネットワーク上で現金を授受するというのは物理的に不可能です。そこで、現金をデジタル上に変換して使っているわけですが、現実世界、たとえば実店舗においても、もはや現金では無く、キャッシュレスで出来るのが当たり前になってきました。現金を持ち歩くのは逆に面倒くさいし、支払いで小銭を一生懸命探したり紙幣を数えたりするのも効率が悪い。となると、デジタル通貨の方が利便性が高いというわけです。
そこで、法定通貨の存在意義が改めて問われている気がします。デジタルネットワークが普及すると言うことは国境が無くなります。日本からアメリカのサイトに全く意識せずにアクセスできちゃいます。アマゾンで買い物するのにどこの国においてあるサーバかを意識することはないでしょう。今は日本国内では円という意識でいますが、別にドルだっていいわけです。現金だとドル紙幣を調達する必要がありますが、デジタル上は単なる数値であり、ドルを調達するのもネット上で簡単にできます。現物に比べると利用するためのハードルはかなり下がります。クレジットカードであれば日本円で買い物するのとほぼ同じです。今は国家が制限をかけたり、輸送コストがかかったりするので、海外のサイトでドルで買い物はできるものの、トータルで得にはならない場合が多いので余り使われないですが、やること自体はそれほど難しくありません。

そうなると今度は法定通貨間の競争です。円を使うのが得か、ドルを使うのが得か、ユーロが得か、という単なる比較の話になります。今のところ圧倒的にドルが世界的には強いですが、アメリカ以外の国はよく思って無いでしょう。そう、国家は独占したいが、国家間は独占は許さないわけです。そうなると世界統一通貨が必要になる気がしてきます。どこの国も独占できない通貨がよいのではないか?という話になるかもしれません。

アメリカドルの独占禁止をやらなければならないほどドルが強くなるかどうかはこれからの話ですが、その前にみんなが共通に使える通貨が普及してしまうかもしれません。さて、どうなりますか。

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