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『倒錯パラドックス』感想

 どうもです。

 今回は音声作品の感想になります。音声作品をnoteで取り上げるのは年末のまとめ記事ぐらいでした。が、どうしても感想を書かずにはいられなくなった作品があったので、執筆を始めた次第です。

 そんな感想を書かせていただく作品は、声優浅見ゆいさんの個人サークルButterfly Dreamさんの新作『倒錯パラドックス』です。作品概要及び、スタッフ様は以下の通り(敬称略)。

《作品概要》
罵倒されたい?
褒められたい?
人間を下等生物と言って見下す双子の悪魔、 自分を毛嫌いしている学校の後輩、 無能な部下が大嫌いな会社の上司、 4キャラクターの罵倒トラックと褒めトラックを収録。
罵倒か、褒めか
あなたが求めているのは、どちら――?

《出演》

・ルイ CV:浅見ゆい
・ムイ CV:藤堂れんげ
・後輩 CV:江井みゆき
・上司 CV:ユキト

《シナリオ》
あすきぃきゅーぶ

《イラスト》

ぽかちゅ

《デザイン》
にくじゃが王子

《音声編集・効果音》
うにーん

《効果音素材》
小森平の使い方

Butterfly Dream - BOOTH より

 豪華声優陣ですし、スタッフさんも普段から音声作品を嗜まれる方であれば、ご存知の方も多いかもしれませんね。
 概要通り、4キャラクターからひたすら罵倒され、褒めちぎられる?作品です。でも、イメージしていたよりもずっと奥深いと云いますか、キャラ立ちも良く、ストーリー性の伴った上質な作品でした。どの娘の声もジャケットイラストから想像通り…いや想像以上にピッタリで。演技も距離感が抜群で、すぐに没入できる事間違い無しです。総再生時間は約2時間、物足りなさは絶対に感じません。何なら2時間もあるのに、リピートしたくなる中毒性すらありました。きっとお気に入りの娘も見つかると思います。
 あと、罵倒に抵抗がある方にも是非聴いて欲しいなと思いました。その1番の理由としては、"罵倒"あってこその”褒め”が効いてくるシーンがいくつもあったので。聴きたいトラックだけ聴くのも勿論アリだとは思うのですが、最初は是非トラック順で聴いてみて、キャラの二面性であったり、心に沁みるストーリーであったりを味わって欲しいなと思います。

 作品購入は、BOOTH販売でのパッケージをオススメしますが、DLsiteでも本日5月21日よりダウンロード販売が始まりました。少なくとも1回は下記のリンクからチェックしてみてください。視聴もできますし、ガチでオススメなので!


 では、ここからはネタバレありの感想になります。作品を聴いた方は、一部でも呼んで頂けると嬉しいです。


1.双子悪魔ムイ・ルイ(#1, #2, #3)

 双子悪魔ちゃんは、端的に言ってしまえば""可愛い""、これに尽きましたね。3トラック目まで聴き終わった後は、悪魔と云うより天使だったのでは…と思ってしまう程でした(笑) もしこんな娘達が家にいたら、面倒見てあげたくなりますし、やる気とかが漲ってくるなぁと想像が膨らみました。

 この3トラックで特に良かったのは、信頼関係を築けているのが感じられた事。実際、#2ムイの褒めパートでは、「ムイ達がついている」と言ってくれていますし、#3ルイの褒めパートでは、ルイを家に預けてムイは出かけている設定。信頼していないと絶対に出来ないですね。#1罵倒パートでは、ロリコン扱いされてムイからは割と強気な場面もあり、ルイには絶対に手を出すなと言われる始末だったので尚更。罵倒の日から数週間位経って、双子ちゃんがすっかり懐いてきたのかなぁと想うと、それだけで自然と胸が温かくなるモノがありました。
 #3まで聴き終えた後、#1を聴くと恋人の有無をしつこく確認してくるのは、恋人がいられると生活に困るからだったんだな、と納得して聴く事ができたのも良かったですね(笑)

 また、罵倒では2人同時なのもあってダブルパンチで痛いんですが、ルイが追撃してくる感じが特にグサッときましたね(笑) それでも最後に両サイドからの耳ふーがあるのは素直に嬉しい。褒めでは、双子ちゃん2人の価値観が人間のソレとはちゃんと違くて、しっかりキャラを活かした褒めからの癒しを提供してくれるのがとても良かったです。可愛いらしい彼女達から、大人な発言をされると、確かに思い詰めすぎたな…と思える様な魅力があって。また、ストーリーを絡めて彼女達の為にもしっかりしなきゃ…!と思える流れが出来上がっているのは、先述の信頼関係と繋がる部分でしたね。
 
 最後にキャラの印象ですが、ムイはプライドと誇りがあって、ちょっとポンコツでも威厳を感じる娘でした。面倒見の良さも出ていました。れんげさんの演技はどこを取っても、可愛いお嬢様な感じが溢れ出ていて素晴らしかったです。特に照れて一瞬言い淀む感じとかが最高でした。あと「変態のロリコンなんかに恋人ができる訳ないじゃない」は、暴論すぎてクスッときちゃいましたね。そして"バニラ"アイスは解釈一致過ぎた…やはり可愛い。
 ルイは雰囲気ふわふわ~としてるのに、実はムイよりもしっかりしてて辛辣で、頭の冴える娘でした。マイペースでちょっと冷たさを感じる話し方も良かったです。ここはもう浅見さんの演技幅に感動すら覚えますし、こーゆーキャラもやっぱ好きだなぁと。後はやはり囁きや吐息…!体全体の力がどんどん抜けてく癒し成分が凄くて、もう流石としか。あとルイは絶対ペンギンみたいなトテトテ歩きでしょう。ムイの後を追っていく姿が容易に想像できる感じがとても良かったです。すっかり人間界に染まってきている2人、これからも100年先までずっと幸せに暮らして欲しいと思わずにはいられない物語でした。


2.後輩(#4, #5)

 後輩ちゃんは1周目から2周目に掛けて、大きく聞こえ方が変わったのがとても良かったです。#5褒めパートで過去の想い出が挿入される事で、罵倒でのあの言動はそーゆー事だったんか!と真意が一気に視えてくるのが最高でした。彼女の魅力もグッと増して。にしても、天邪鬼あまのじゃくすぎんだろ!とは勿論思いましたが(笑)

 初めて#4罵倒パートを聴いた時は、この娘体調大丈夫か…何か色々申し訳なくなってきたし。って感じで心配しながら聴いたのを憶えています(笑) あと、臭いがキツイのは一番しんどいよな、解る、すまん。でも"独特"って云うのが、しっくりこなくて。なんか全体的に気持ちがモヤモヤ~としてて。それが綺麗に回収されたのが#5褒めパートでした。

 中学からの後輩であると云う告白と、それに伴う感情を丁寧に語ってくれてとても良かったです。一度だけ話した事があったり、先輩の小説を欠かさず読んでいたり。きっとその小説を通して先輩がどんな人なのか想像してたのかなとか、をこちらも想像して。彼女の話から先輩がどんな人物なのか想像できる作りになっているのも嬉しいポイントでした。納得感が生まれる材料になるので大事ですし、オタクは解像度上がる瞬間好きよ。
 話を聴く中で、後輩ちゃんは先輩に対して自分と近しいモノを感じ始めていたから、好意を持っていたのかもしれないなと。最初の憧れに加えて。また、そんな想いを中々伝えられずにいた理由の一つは、一度できてしまった先輩に対しての自分のキャラみたいなモノを簡単には崩せなかったからで。余計ヤキモキしていたのかなと、可愛らしく想えました。後半はまさかの抱擁からの包容力!が江井さんの演技も相まってむっちゃ良かったです。そして、ラストの「また明日!」が好きすぎる。

 後輩ちゃんは、ちょっと自己肯定感低めかもですが、それ含め色々意識しすぎなだけで実は強い娘な印象で落ち着いています。内に秘めてる系。反射的に言葉を発してしまう一面があるのも、その最たる例で。また、まるでこちらに非があるかの様に言い包めてくるのが上手でした。例えば、トイレって3回も言わせてはいないんだよなぁ…とか(笑) でも、心の中ではそう思ってても、あーゆーのは男が100%悪い事にしておくのが吉。
 江井さんの演技は、罵倒での弱々しいニュアンスを褒めではそのまま柔らかさに変換した感じ(伝われ)が最高でした。優しい、柔らかくて温かい雰囲気を出せる声、演技が凄い好きなので、ソレを本作でもひしひしと感じる事ができて嬉しかったです。体温が伝わってくる感じと云うか、ガチで身体の内側から温まるんよ(効果には個人差があります)。
 
 最後に改めてまとめると、罵倒→褒め→罵倒→(以下繰返し)と聴きたくなるトラックでした。その中で想いを馳せたくなる様な、甘酸っぱい恋の真っ只中を味わえる物語だったなと思います。


3.上司(#6, #7)

 本作のトリを飾るのは上司さん。罵倒パートは本作の中で一番イメージ通りの、これぞ罵倒!って感じだったのに、褒めパートは癒し成分だけでなく、睡眠導入としての効果を一番感じる事ができて驚きました。要するに、ギャップがエグすぎて最高だったという事。

 罵倒パートは何回聴いても、自然と背筋が伸びてしまう緊張感が漂っているのが凄かったです。ヒールの音とかもむっちゃ良い仕事していて。初めては息が詰まる想いで聴いていました(笑) 単純に棘のある言葉責めだけではなく、急所を確実に突いてくる言い回しも巧みでしたね。問い掛けや誘導が多く、聞き手に自覚させてくる辺りもコレは中々しんどいぞぉ!と(笑)
 また、仕事のミスに対してのお叱りよりも、それまでの仕事態度などに対してのお𠮟りが中心で。これが実は彼女の面倒見の良さを表していたとは、最初は思いもしませんでした。
 
 褒めパートでは膝枕&頭撫でまで付いて、徹底的に癒しと母性を提供してくれる訳ですが、罵倒時の彼女は一体どこへ…と想ってしまう位には優しい。いや、本当に優しすぎて好き…。ってなる。口調も温かくなり、スッと身体に馴染んでいく様な雰囲気になっていました。彼女からも「頬が緩んでるわよ」と言われていましたが、コレは流石に表情和らいでしまうわなと。少なくとも𠮟られてる時とは大違いだったはずです(笑) 
 また、彼女は滅多にしないらしい褒めを魅せてくれた代わりに、逆にこちらも彼女にだけ癒されてる時の恥ずい表情を見せる流れは、"2人だけの"と云う唯一性を感じる事ができたのも魅力的でした。

 彼女の言葉に耳を傾けていると、確かに罵倒時にアドバイスもしてくれてたなと気付く事になる構成も見事。しかも体調まで含めて気に掛けてくれる存在が社内にいるのはこの上なく嬉しいでしょう。何かと真摯に向き合ってくれて感謝しかないと思います。まるで存在しないかの様に、放っておかれるのが個人的には一番しんどいので。

 上司さんは頭の切れる、頼れるお姉さんだったなぁと。きちんと正論を述べ、お手本としたくなる様な立ち振る舞いをしてくれる。彼女との仕事の様子は今回分からなかったですが、容易に想像できる。決して平穏ではないけれど、色んなやり取りを交わしがら仕事をしている事でしょう。あと、彼女みたいな、仕事とプライベートをちゃんと切り離して考えられる人は好きです。見た目もタイトスカートなのは個人的にポイント高い。
 ユキトさんの演技は、罵倒では抑揚や囁きの圧がとても良かったです。鋭い刃の様で。そっから打って変わって褒めでは柔らかく聴き心地が抜群でした。冒頭にも書きましたが、本当にリラックスして眠りにつけると云いますか。また、罵倒と褒めのどちらの彼女でもカッコイイ事に変わりなく、ずっと耳を傾けていたくなる魅力が声や演技が滲み出ていて、好きです。
 
 総じてこのパートはシチュも本作の中では一番リアルだっただけに、中々来るものがあったなと。社会人としては、2人の関係性を通して仕事との向き合い方をリフレッシュするキッカケをくれる物語だった様にも思います。


4.さいごに

 まとめになります。

 やはりこうやって振り返ってみても、素晴らしい内容だったと思います。作品タイトルもなるほどなと。トラック順やシナリオ構成も考えられており、シチュエーションだけでなく、そのシチュでの聞き手の心境もちゃんと違くて。当たり前かもですが、その日の気分に合わせて双子悪魔、後輩、上司と選ぶ事ができ、どの娘も絶対に外せない存在になっていました。

 罵倒から褒めを聴く事で、一度落とされてから、上げられた方がやはり感情の起伏としては大きいよなと改めて感じる事ができたのも良かったです。また、"褒め"と云うよりは、励まして元気が出る側面が強かったのも嬉しかったです。大袈裟かもですが、しんどい時に、傍にいてくれる存在と云うのが、どれだけ有難い事か再確認できる作品でもありました。また、これに関しては、声優さんの演技の温度感等があってこそです。改めて素晴らしい演技でした。元より好きな声優さんだったのも嬉しかったですし。

 音声作品は物語媒体の中でも、一番想像が捗る媒体かなと個人的には思っています。聴いた人それぞれがその人だけの想像をして初めて完成する側面が強いと云いますか。この感想記事が、ほんの少しでもその手助け的な役割になれていたら嬉しいです。

 とゆーことで、ここまで読んでくださった方ありがとうございました。また、改めて制作に関わった皆さん、ステキな作品を本当にありがとうございました。好きな作品の一つになったので、これからも沢山聴きます!

 ではまた!


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