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感情を扱うスキルの1つ

突然ですが。
皆さんは、演奏やスピーチなどの本番で、
あがってしまったことはありませんか?

緊張してしまって、本来の実力が出せない状態になる。
そんな経験、誰しもあるのではないでしょうか。

私も例外ではなく。
演奏でも、話すことでも。
どんなに練習しても、いざ、人前に出て本番、となると、
全くもって練習通りにはできないどころか、
練習ではやらなかったミスをやらかしてしまいます。

まあ〜、悔しいですよね!!
何度、涙を流したことか。

今回は、私がつい最近ステージの本番前に経験し体系化した、
「感情の取り扱い方」について、分かち合おうと思います。

今回、例に挙げている感情は、
本番前に「あがる」という現象を呼び起こす感情、
「恐怖」「不安」といったもの。
ネガティブな感情の代表格と言えましょう。

いろんな時と場合に応用できるので、
ぜひ、試していただければと思います。


場数さえ踏めば上がらなくなる?

少し前に、ステージで、
ソロで歌う機会がありました。

歌はものすごく苦手だし、
きっと、練習の成果の20%も出ないんだろうな。
そう思って、ボイストレーナーの先生に、
「本番で、あがらないコツってあるんですか?」
と、質問しました。

そうすると、先生はこのように答えました。
「場数ですよ。とにかく、それしかありません。」


私は正直、ちょっと違うなと思いました。
だって、どんなに経験を積んでいる人でも、
どうしてこんなミスを? ということはある。

プロの演奏家だって、
ステージの冒頭は、音をミスったりしてる。

んーん。きっと何か方法があるに違いない。
質問しておいてなんだが、
私なりに、「もしかして、効果あるのではないか?」
と、思える方法論があったので、
それを試してみることにしました。

1週間後に歌のステージが控えていたので、
とにかく、その日を迎えることに。


さて、私の出番が近づいてきます。
案の定、緊張緊張、上がりまくりの私。
心臓はドクドク、もう逃げ出したい。
あー。こんなこと、やらなきゃよかった。
今からでも遅くはない。脱出口はすぐそこにあるぞ。
と、ライブハウスの非常口を見つめる私。

そんなことを考えていたけれど、。
ふと、思ったのです。

今感じている「感情」に、
「あがってる」という名前をつけたのは私だ。

その「名前」がなければ。
ただ単純に、心拍数が上がっていて、身体が震えている。
ただそれだけのことではないか?


意識と呼吸で、地に足をつける

でも、私の思考は、この感じを、
「あがっている」と解釈して、信じ込んでいた。
恐怖を感じている自分。
まずは、それを認める必要がある。

「落ち着け、落ち着け。」などと、
ありのままの自分を否定し、己をコントロールしない。

「緊張しているね。上がっているね。うん、わかるよ。」
「よしよし、頑張ってるね。いい子だね」

そうすることで、あちこちに飛んでしまっていた私の意識が、
すっと、身体の中に戻ってくるのを感じた。
ステージ袖で、緊張している自分の中に。
ありのままの現実を認め、地に足がついた状態だ。


次に、身体の状態をじっくりと観察してみた。
心拍数は高い。血圧は測れないが、多分高い。
身体が少し震えている。体温はちょっと下がり気味?
足に力が入ってる。

こうやって、自分の体に意識を向けた。
感情は高揚したままで、俯瞰している状態だ。

そうしたら、次は、呼吸に意識を向ける。
吐く息を、ゆっくり長く。
これは、気持ちを落ち着かせるための、基本的な呼吸である。


ネガティブ感情をポジティブに変換

続けて、ちょっとした瞑想スキルなのだが、
息を吸うときに、
身体のあちこちに散らばったネガティブさ、焦り、恐怖などの感情が、
喉のあたりに集まっていくのを観察する。

そして、ゆっくり吐きながら、喉に集まった感情たちが、
胸のあたりに落ちていくのを観察する。


これは昔、ヨーガを熱心に実践していた時に学んだ、
ヨーガの呼吸法をアレンジしたものだ。
意識しなくとも身についているので、
ステージ前という非常事態であっても、自然とそうなっていた。

「あがっている」というのは文字通り、
「気」「意識」が上に上がっている状態なので、
それを、呼吸と意識を使って、下に落としていくわけである。

あちこちに飛びまくっている自分の意識を、
身体の中に戻し、頭から胸、お腹に下ろしていく。

「やだな、怖いな、逃げたいな。」
主に頭の中にあるそんな考え、感情が、
吸う息とともに喉のところに集まる。

そして吐く息と共に、それが胸のところに落ちて、
そしてそれが更に、お腹の方に落ちていった。

そうすると、どんどん、
何か温かいような質感が胸のあたりに生まれる。
次にそれが、お腹のあたりに自然と降りていく。

その、「生まれた、温かい質感」の密度が濃くなっていき、
じわじわと、全身の細胞に広がっていくのを、
ただただ、心地よく感じていた。


ここまでくると、もう、
「やだな」とか「怖いな」とかいう感情は、
完全に「思考」「思い込み」を離れてしまい、
もう、形を保っていられない。

ただの、「温かくて心地よい質感」になり、
気持ちは安らいでいき、緊張は解放されていった。

自然と、身体中に喜びの感覚が満ちていく。
細胞が1つ1つ、ピカピカと光って、細かく振動する感覚がやってくる。

ここで歌えるのが嬉しい!
みんな1つにつながっている。
この世界は愛でしかない。

歓喜に、心臓がばくばくし、身体が震える。

ああ、幸せだ!
嬉しい!

そんな喜びに満たされながら、
無事、ステージを終えたのでした。


感情を扱うスキル

感情って、名前をつけなければ、
ただのエネルギーの塊と捉えることができます。

悲しい、悔しい、腹たつ。
何かしらの感情を感じているときは、
身体にも、何らかの変化があるはずです。

呼吸は速い? ゆっくり? 浅い? 深い?
身体に力が入っている? だとしたら、どこに入っている?
身体はどちらの方向を向いている?
どこか特定のところに、熱が集まるような感じはないか?
苦しくなるような感じはないか? ムズムズする?

いわゆるネガティブな感情を感じている時の身体の感覚と、
嬉しいとか楽しいとか、ポジティブな感情を感じている時の身体の感覚は、
実は、状態としては非常に似通っています。

ああ、幸せ! と、心から嬉しい気持ちになっている時って、
ちょっと、胸がキューっと苦しくなってませんか?
喜びで踊り出しそうなとき、お腹のあたりがムズムズしていて、
黙っていられなくなりませんか?


ステージ本番を前にした私が感じていたのは、「恐怖」。
それを、全身を貫くような歓喜に変えたのです。

呼吸
身体の観察

の、この2つによって。


心を感じて、身体を感じる

今回、ステージ前という特殊な状況で、
やってきたネガティブで強い感情を、
ポジティブに変換するという体験をしました。

確かに、先生の言われる通り、
場数を踏むことで、こういったことを自然にマスター出来るのかもしれません。

でも、自然にわかる人もいれば、
そうでない人もいるでしょう。
また、他の方法もあるかもしれません。


「感情を扱う」ということは、
すでに感じている感情を消して、無きものにするのではありません。
都合のいいように捻じ曲げることでもありません。

かといって、必要以上に掘り下げたり、
「感じろ!」とばかりに、
わざわざ感情を大げさに味わうことでもありません。

ただ、認め。受け入れ。
自分の心を感じ、身体を感じることで、
いろんな感情と付き合い、
パワーに変えていくことができると思うのです。


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