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【和訳】グリズリーズが「レコードで音楽を聴くのをやめた」話

Statmuse.comという、質問(今季1番点取ってるのは誰?みたいな)を投げるとお洒落なグラフィックと共に答えてくれるサイトがあって、今のところ日本では僕とみつヒコさんがStatmuse使いとしてはツートップなんですけど、そこのブログに"Even the Memphis Grizzlies Are Shooting Threes Now"というコラムが載ってて、これまた面白かったので和訳しました。時代に反してグリズリーズが今までどれだけスリーを打ってこなかったか、なぜここにきて打つようになったのか、みたいな話です。
記事中のグラフはスクショなので、16/11/18時点の数字で止まってます。リンク内の数字とは異なると思いますので、予めご了承を。

(元記事 https://blog.statmuse.com/even-the-memphis-grizzlies-are-shooting-threes-now-fd72508a18a4#.cluijbl9d)

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最近のNBAチームが昔より遥かに多くスリーを打っているというのは、もはや常識である。1979-80シーズンにスリーポイントラインが導入されて以来、1試合当たりのスリー試投数は徐々に増えている。90年代半ばに1度ラインがゴールから少し近くなったことで急増したが、ラインが再び後ろに下がっても、大きく減少することはなかった。
2007-08シーズンからロックアウトのあった2011-12シーズンまでの間、だいたい1試合で18本前後だったスリーの試投数は、それ以降爆発的に増えた。平均は20本を超え、さらに毎年増加している。今のところ、1試合の平均スリー試投数は25.9本(史上最多)であり、全チームの合計は60000本を超えるだろう。

https://www.statmuse.com/queries/907dfcdb-b383-4ecf-9852-097f558adca1

だが、皆がトレンドに乗っかりスリーを打ちまくる一方で、1チームだけがそれを拒んでいた。他のチームが「スリーポイント」という高額札を持つ中、メンフィス・グリズリーズは80~90年代を連想させるような"Grit&Grind"のスタイルに倍賭けしていたのだ。
痣ができるようなフィジカルなプレースタイルだった故、他のチームのようにスリーポイントには頼らず、その結果彼らはこのスリーポイント・ブームの時代にスリーの試投数がリーグ最少のチームになった。

https://www.statmuse.com/queries/25b0e744-f91a-4e1e-b574-5c415f63ad92

同じサウスウエスト・ディビジョンのライバル、ヒューストン・ロケッツと比べると、これ以上ないほどにスタイルの差がくっきりと浮かび上がる。ロケッツは一昨年、1シーズンでの合計スリー試投数で記録を2680本で更新したばかりだ。

https://www.statmuse.com/queries/4572cce2-c7c7-4c34-9bf2-08e800522005

同じく一昨年の14-15シーズン、グリズリーズはというと年間で1246本しか打っていない。リーグで下から2番目の少なさだった。

https://www.statmuse.com/queries/a7422d1d-1466-469f-9db4-6c710b399d91

時代に逆行したスタイルは、しばらくの間上手くいった。ライオネル・ホリンズ、デイブ・イェーガーに率いられたグリズリーズは、多くの怪我に見舞われて5割程度に留まった昨シーズンまで、50勝前後を安定して勝ち続けた。12-13シーズンにはウエスタンカンファレンスファイナル進出までした。その年はリーグ最少の13.5本しか打っていなかったにも関わらず、だ。

https://www.statmuse.com/queries/a6e4f25a-643b-4284-aea0-9f74dc038702

現時点では、16-17シーズンはグリズリーズのバスケに新時代が訪れる年になりそうである。新人HCのデビッド・フィズデイルが抱えるこのチームは、メンフィス史上空前のペースでスリーを打っている。

https://www.statmuse.com/queries/cdae89db-f3cd-450d-b443-81a41d211496

マイアミ・ヒートでACを務めていたフィズデイルは、マイアミで成功を収めたのと同じアプローチをメンフィスにも持ち込もうとしている。5月下旬にグリズリーズのHCに就任した時、彼はマルク・ガソルとコンタクトを取り、状況が一変するであろうことを伝えた。
「マルクとの最初の会話で、『ああ、そういや君には1試合に4本はスリーを打ってもらうつもりだけど、分かってるよね?』って言ったんだ。彼、椅子から転げ落ちるんじゃないかと思ったよ」と、ESPNのインタビューで彼は語っている。
「もしクリス・ボッシュがスリーを打てなかったら、今私はHCの職には就けていないだろうね。彼はマイアミで打てるようになった。それと同じことをマルクにも望んでいる。既に彼は狂ったように取り組んでいるさ」

彼の言葉は預言的であった。今シーズンの10試合で、マルクは既に昨季までの合計よりも多くのスリーを決めている。

https://www.statmuse.com/queries/5ce14692-7dbd-49fa-a2bb-8b1f5d12997d

マイク・コンリーでさえ、スリーを量産してきたわけでもないコンリーでさえもが、このスタイルの恩恵を受けている。史上最高額の契約を結んだ彼は、シーズン5試合目にキャリアハイとなる7本のスリーを沈め、2週間以内にまた7本を決めている。

https://www.statmuse.com/queries/c5d69caa-fa0c-4d21-b30e-8ca43aabed41

チーム全体で見ると、グリズリーズは既に2試合で30本以上のスリーを放っている。過去10年で、3回以上それが起きたシーズンはなかった。
さらに、1試合平均25.8本のスリー試投数は、リーグで11番目に多い数である。過去数シーズン常に最下位付近を漂っていたことを考えれば驚異的だ。
ロケッツに追いつくにはまだまだ先は長いーーロケッツは記録を更新しそうなペースでスリーを乱射してるーーが、少なくともギャップは縮まっている。

https://www.statmuse.com/queries/e53b6fa0-53b4-4509-afa1-dcdc9345609b

変化するNBAの中で、グリズリーズは本当に最後まで粘っていた。グリズリーズは皆がとっくにダウンロードやストリーミングで音楽を聴くようになっている中、レコードで聴くことに拘り続けた最後の男達だった。

レコードは近年カムバックを果たしたことだし、もしかしたらグリズリーズの"Grit&Grind"のスタイルも再評価される時が来るかもしれない。でも現時点で主流のスタイルはスリーポイントであり、(あの)グリズリーズがプレーしてるのもまた、スリーポイントなのだ。