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【和訳】Mind Games by Stanley Johnson

Player's Tribuneにアップされてたピストンズの2年目、スタンリー・ジョンソンの文章が興味深かったので和訳にチャレンジしました。
内容は頭を使ってプレーすること、所謂"バスケIQ"について。ぶっちゃけピストンズの試合をあまり見てない僕は、ぶっちゃけスタジョンを脳筋な選手かなと認識していたのですが、これを機に認識を改め、彼に注目してみようかなあと思いました。
例によって長いのでお暇な時にどうぞ。

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昨シーズンが幕を閉じて数日後、西海岸にサマーバケーションに向かう前に、俺はコーチ・スタンと一緒にパレスにいた。ピストンズの練習施設に入ったその時は、まるで建物の中に誰もいないようだった。コートやロッカーは綺麗に片付いていて、硬貨が落ちる音が廊下の逆端に立っていても聞こえるくらい、静かだった。

だが、コーチのオフィスに近づくにつれ、だんだん声が聞こえてきた。

“Drummond with the rebound.”

“Let’s go De-troit!”

“Stanley Johnson with the pass.”

廊下の角を曲がってオフィスに入ると、すぐそこにコーチがいた。キャバリアーズとのプレーオフシリーズのフィルムを、背中を丸めながら見ていた。俺が部屋に入ってしばらくの間、彼はテレビに釘付けになっていて、アイコンタクトすら寄越さなかった。
彼はゲームから学ぶことに集中しきっていた。選手のミス、コーチ自身のミス、改善の余地のある全てのものから。あまりに集中しているので、キャブスに負けてからずっとこのオフィスにいるのではないかと思ったほどだった。机の上のフォルダから、プレーオフでつけたボックススコアやメモがあちこちにはみ出しているのが見えた。最終的に俺の存在に気付いたコーチは、夏の間に俺個人が達成すべきゴールと、チームが来シーズンどのような方向に進むべきかについて、話し始めた。

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その数日後、俺はカリフォルニアに向かう飛行機に乗った。3万フィートの上空で、窓を閉めると同時に、コーチ・スタンとの会話がまだ続いているかのような、深い思索に耽った。
彼の細部への拘りと気付きには信じられないものがあった。彼は本当に休みなく働いている。

とても感銘を受けたので、カリフォルニアに到着し、落ち着いた後、俺はフィルムをいくつか見ることに決めた。最終的に、俺は全ての試合ーープレシーズンからプレーオフまで、全てーーを見た。

その中で、ある試合、さらに言えばあるプレーが、俺の目に留まった。

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キャブスとの第4戦、1点リードで1Q終了間際、俺はトップでボールを持っていた。リチャード・ジェファーソンがスクリーンによってスイッチしていたため、この時俺を守っていたのはケビン・ラブだった。彼は俺の少し左側を守っていて、クロックは終了間近、イマン・シャンパートがレーンを塞いでいたので、ドライブは選択肢から消えた。そこで俺は、次なる選択肢に切り替えた。ジャンプシュートだ。これは上手くいった。なぜなら、ケビンのポジショニングを見て最初に、彼が踵に体重を乗せていることに、気付いたからだ。

だから、準備のためにいくつかビートを刻んだ。

ドリブルを1つ。

2つ。

3つ。

ラブは足をシャッフルさせ、重心が後ろに寄った。6~7フィートの距離が2人の間に空いた。何をすべきかはもちろん分かっていた。プルアップジャンパーだ。

決まった。やったぜ。

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バスケットボールのことを流れに身を任せるゲームだと考えている人もいる。しかし、バスケットボールを絶えず変化するパズルのようなものだと考えるようになって以来、俺にとって全てが変わった。あのフィルムを見る回数を重ねるにつれ、よりマッチアップやフロアスペーシングのことを考えるようになっていることに気が付いた。
ディフェンスが自分からどれだけ離れているか、またディフェンスがどれだけリングから離れた位置にいるかを計算に入れて、自分が何をすべきか判断する。ドライブするか、シュートを打つか、はたまたパスをするか。全てはどれだけ自分がフロア全体の動きーーディフェンスの位置がどうで、それは俺がリングに向かう角度にどう影響するのかーーを読めているかに依存する。

こういったコート・アウェアネスは、多くのプレーヤー、特に1年目から2年目に移行する若手には、見過ごされている要素だ。
だが、あのフィルムが全てを変えてくれた。俺はコート・アウェアネスを習慣付けたいと思った。そのために多大な努力が必要なことは分かっていた。

NBA選手にとって、夏の過ごし方は重要だ。特に1年目、2年目の若手にとっては。だから俺は時間を無駄にしたくなかった。体育館が俺を呼んでいた。

ドリューリーグで優勝したとか、故郷で恩師と一緒に1日2回練習したとか、そういうのはどうでもよかった。体育館が空いていたら、自分のプレーを解剖して基礎からやり直す、それだけだった。シュートフォームを確かめたり、ディフェンスの原則を学んだり、何時間もフィルムを見たりと、あらゆる面で改善に努めた。だがその中でも、最も力を入れたのがコート・アウェアネスだ。

このリーグでは、IQを使ってプレーすることが必須だ。オフェンスとディフェンスの両方でフロア全体を読めるようにならなければいけないし、ミスマッチに気付くことや、どうすれば自分の能力を最大限活かせるのか理解することも、できるようにならなければならないことだ。
例えばコービーは、ミスマッチを認識したりディフェンスの穴を見つけたりすると、そっち側のサイドでオフェンスを開始するように仕向ける。
これはオフェンスでの話で、ディフェンスにおけるケビン・ガーネットの嗅覚は尋常ではない。敵チームがオフェンスを始めた瞬間には、どんなプレーを相手がしようとしているのか彼には分かっているようだった。スクリーンやオープンになっているオフェンスを大声で知らせ、チームメイトに指示を出して正しいスポットに向かわせる。
自分の目の前だけではなく、コート全体を見て理解する能力、これこそが偉大な選手と平凡な選手を隔てているものだ。

そして俺は、平凡な選手に留まりたくはない。

コート・アウェアネス、すなわち相手のディフェンス戦略を把握し、攻撃のチャンスがどこにあるか予測する能力は、非常に解析的な能力だ。だがそれは、芸術家がブラシをキャンバスにつける前から、絵画の完成像を視覚化しているのとも色々な点で類似している。

実際に描き始めるより先に、芸術家は全てを視覚化している。何を描こうとしているのか、何色を使って彩色するのかを。コートの上、特にボールを持っている時にも、同様の状況にある。相手がある種のゾーンディフェンスを敷いているのであれば、その弱点はどこか把握し、どうやってアドバンテージを取ろうか計画を立てるだろう。ディフェンスでも同様だ。もし相手がフロアの一方から得点を重ねているのであれば、それを止めるために正しいディフェンスのポジションはどこかを見極めなければならない。要するに、視野を広く持ち、目の前の状況からチャンスを生み出すことが重要ということだ。

だから俺は夏のワークアウトで、シーズン中俺が迎えるであろう、ありとあらゆる状況をトレーナー達にシュミレートしてもらうようにした。トレーナー達がディフェンスで俺をカバーし、俺はそれを読み、次に何が起きるか予測する、といった具合に。ディフェンダーがマンツーマンで左に誘導するように守ってきたなら、ディフェンダーがリングからどれだけ離れているかを頭に入れ、そのまま左にドライブをするのか、それともポンプフェイクを入れて相手のポジショニングを崩して右にドライブするのか、即座に判断しなければならなかった。
俺にとって、バスケはアングルが全てになった。状況判断を自動的に下せるようにまでなった。トレーナーはあらゆるシチュエーションをぶつけてきたが、それらをパズルを解くように解決できるようになるまで、そう長くはかからなかった。

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これらはあくまで学習の過程だ。7月半ば、ラスベガスでアメリカ男子セレクトチームとして過ごした時間は、いわば卒業式のようなものだった。
リオオリンピックに先立ち、アメリカ男子代表とスクリメージを行う、それがセレクトチームの仕事だった。明けても暮れても、バスケ界で最も才能に恵まれた若いプレーヤー達と共に、バスケ界最高のプロフェッショナル達を相手していた。それ故、練習に望んでいた全員の闘争心の凄まじさに驚く事はなかった。練習中のどの瞬間にも、俺はリーグ屈指のフォワードプレーヤーをガードしていることに気付いた。

カーメロ・アンソニー。
ドレイモンド・グリーン。
ジャバリ・パーカー。

彼らはそこにいた素晴らしい選手達のほんの一例だ。彼らと一緒にプレーしたことで、フロア全体を理解することの重要性が殊更に強く感じられた。フォワードにとっては特に重要だ。
機会がありさえすれば、俺は毎回メロやドレイモンドにアドバイスを求めた。ドレイモンドはピック&ポップで立つべき最善のスポットをいくつか教えてくれたし、メロはチームメイトをオフェンスに絡ませることと自身の得点機会を生み出すことの両立について語ってくれた。
だが、俺が最も恩恵を受けたのは、コーチ・ポポビッチからかもしれない。俺は彼がどうやって彼のシステムをチームに浸透させているのかを見ていた。

彼のスパーズでは、パワーフォワードがコート上のコーチだと考えてよい。ティム・ダンカンを例に取ろう。ひとたび彼がボールを持てば、オフェンスを動かし、試合のペースをコントロールする彼の能力が、普通のフォワードと比べて図抜けて高いことが分かる。彼にはチームメイトがどこから攻めれば良いのかが見えている。
だが、ダンカンが持つ最も素晴らしいスキルは、彼のボーカルリーダーとしての能力だ。そしてコーチ・ポップの下でプレーするには、このスキルは必需品だ。ダンカンは最上級のコミュニケーターであり、人々は彼の中のその才能を見過ごしがちだ。

『コート上で価値ある選手になるための鍵』としてコーチ・ポップが常に強調するのも、この能力だった。ラスベガスでの練習のどの瞬間にも、とりわけスクリメージの際には、サイドラインから彼が叫ぶ声が聞こえた。「お互い声をかけろ!」「自分のマークを確認しろ!」「今やってるディフェンスは何だ?」
練習中ほとんどの間、コートで1番声を出している人間の1人がポップだった。貴重な経験だったし、まだまだ俺にやるべき事は残されてるのだと実感した。

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ここから先は「せっかく頑張ってプレーオフ出たのにキャブスにスイープされたのめっちゃ辛かったけど、キャブスのパレード見てデトロイトのために俺達も頑張ろうと思ったわー」「『プレーオフが目標』なんてちゃんちゃらおかしい、それって出さえすればあとは負けてもいいってことっしょ、俺達が目指すのは優勝だけだよ」「そのためには何でもするし、毎試合頑張んなきゃね」みたいな来季への豊富が綴られてました。スタジョンとピストンズの今シーズンに期待ですね!