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マニラで入院してみた ー HOW TO BE HOSPITALIZED IN MANILA -

先日、激痛に耐えきれず、セント・ルークス入院しました。
この際、闘病記と病院事情を書き残したいと思います。
下の病気だったので、その辺り気になる方はスルーしてください。

<激痛発症>

8/11 マニラもようやくロックダウンが緩められ、近くのSPAから営業開始の案内がきたので早速行ってみました。
お客さんが少ない中、2時間1000ペソが基本料金で指圧マッサージをお願いしました。
家に籠っていたので、体がガチガチだったんです。

でも、これがまずかった。
施術中に両脚に強烈なストレッチを掛けられ、左脚を痛めた模様。おしっこもしたくなり、家に帰ってトイレに行ったら、いきなりペニスに凄い激痛です。

その後、急激に頻尿になり、2時間とおかずに尿意を催すのですが、おしっこをする度に激痛がやまず、一方肝心のおしっこはあまり出ず。
朝までろくに眠れないまま、「これは何かやばい」と思っていました。

8/13翌朝、マニラで一番の病院セント・ルークスジャパニーズヘルプデスクに診察依頼をしましたが、コロナの影響で当日診察は無理。
翌日の予定を見てもらいましたが、これも空いておらず、オンライン診断ならということになりました。

*ジャパニーズヘルプデスクはルークスやマカティ・メディカル・センターといった大手病院に事務所を置く日本人向けの医療サポート会社です。

しかし、激痛が激痛なので、オンラインだけでは不安で、結局、コンドミアムの2階にあるHealth First Clinicへ行きました。
ここも、ケソンにも診療所がある薬品会社系の一流の診療所です。

<これが診察?>

診療所に行くと、簡単な問診と血液並びに尿検査がありました。
ともに異常な数値がなく、抗生物質と痛み止めを渡され、「来週月曜日に来てください」と言われました。

「いやいや、もうちょっと見てよ」と正直思いました。
こちらは性病に掛かるようなことはしてないし、どこか異常があるように感じます。
たぶん、日本なら患者の問診から必要なら他の専門医に回ることになるでしょう。
でも、フィリピンは病院代を払える人も多くないので、診断して処方箋を渡すことが多いようです。

支払いは通常クレジットカードが使えますが、物によってはキャッシュになりますので、ある程度は持っていきましょう。
特にパスポートなどのIDは必要ありません。

*フィリピンも病院で薬を出すことはなく、処方箋を持って薬局に行きます。
大手のMercury Dragが便利です。

<激痛発生>

さて、抗生物質と痛み止めを飲んで過ごした週末でしたが、頻尿は一向によくならず、痛みは続くばかり。
しまいにおしっこに血が混ざるようになりました。
「雑菌じゃないよ、これ」と思いました。
しかも、間の悪いことに、マッサージで痛めた左脚の付け根が死ぬほど痛みます。

夜中眠れず痛み止めでなんとか凌ぐ週末を過ごして、8/17翌月曜日に再び診療所に。
ここまで1週間過ぎていました。
「日本ならもう本格的治療が始まってるだろうになあ」という考えが頭をよぎりました。

朝一で診察を受けに行ったところ、前回の担当の先生はこちらの病状が改善しないという話を聞き、
「では、午後から泌尿器科の専門医が来るから、1時に予約してください」
といいます。

おい、あんた、専門医じゃないのかよ!というツッコみはおいといて…

「もう、この痛みを直してくれるなら別の先生でもいいさ」とあきらめて予約を入れ、午後1時に再び訪問。

ところが、医師が出勤してきません……
看護師に聞いても誰もわからない。
医師が出勤して来たら連絡をするようにお願いして、一旦部屋に帰りました。
その後、3時になっても連絡がなく、「忘れているのか?」と思って見にいってみると、見事に診療所は閉まっていました。

日本では考えられませんが、ホントの話です。
このあたり、フィリピンのいい加減さは医療にかかわる部分でも発揮されています。

<セント・ルークス再び>

これでFirst Health Clinicが当てにならないことがわかりました。
これから先は風邪や下痢くらいの軽症の時のみ使います。
部屋に戻ると、間髪を入れず、再度、セント・ルークスのジャパニーズヘルプデスクに連絡しました。

今回は運よく、8/19翌々日に予約が取れ、診察を受けることができました。

当日10:30待ち合わせで家を出ます。
僕の住むマンダルヨンからBGCのルークスは案外近く、Grab Carで20分弱で到着します。
車代も200ペソくらいです。

ルークスの入り口でコロナの問診を受け、中に入ります。
ラウンジでヘルプデスク担当の守さんに待ち合わせて頂いて、医師のもとへ向かいました。

フィリピンのシステムで面白いところは、総合病院でも医者は独立してオフィスを構えていることです。
いわばテナントとして病院内で仕事をしています。
病院は入院病棟や薬局を抱え、医師の診断に応じて処置を対応します。
そのため、医師への報酬、入院費、薬代は別会計になります。

医師に病状を説明しましたが、医療専門用語にはわかりにくい言葉もあり、守さんがいてくださって大変心強かったです。
その日はさっそく、血液と尿の再検査、翌日にCT-SCANを行うことになりました。
(精密検査をしてほしいと思っていたのでほっとしました)
薬は痛み止めをもらいました。

因みに診察代、ヘルプデスクサポート代、各1500ペソです。

<セントルークスでもフィリピン流>

翌日木曜日にCTーSCANまで済ませました。
こちらの気持ちとしてはさっそく検査結果を聞いて、一刻も早く治療を始めたいところです。
(それくらい、頻尿とペニスの痛みが続いていて、体力的にもきつかった)
ところが、検査結果を聞くために日程を設定したところ、次の診察は翌週8/27とさらに1週間後です。

本音は「なんでそんなに掛かるの?」ですが、フィリピンではどうもスムーズにことが運ばないようです。

そして、恐れていたことが…

週末、いきなり強烈なめまいに襲われました。
数年前にメニエール病にかかったことがあったので、そのぶり返しです。
たぶん、2週に渡る睡眠不足と緊張で自律神経が悲鳴を上げたのでしょう。
その場はなんとか、トラベルミン(乗り物酔い止め:めまいに効きます)を飲んで切り抜けましたが、8/25火曜日にはとうとう尿が止まりました。

これはマジにきつかったです。
強烈な尿意はあるものの、ペニスに痛みばかりで尿は出ず。
たまに白濁した液がでます(あとでこれが膿とわかります)一方、膨張した膀胱に圧迫されて便もでません。

<即時入院>

2日間、死ぬ気で堪えて8/27に再びルークスへ。
既にCT-SCANの結果も出ているはずです。

幸いSCANの結果、腎臓や膀胱、直腸等に問題はなし。
他の臓器も大丈夫でした。
しかし、尿がでなくなっているということで即入院。
ジャパニーズヘルプデスクの小野寺さんのサポートで、手続きをしてそのまま病室入りです。
(この辺り、ヘルプデスクさんがいなければ入院手続きも時間が掛かり大変なことになっていたはずです。感謝しかありません)

部屋は一般の個人病棟に空きがないということで、デラックスルームになりました(一晩、7000ペソ弱)
どんな豪華な部屋かと思いましたが、広さ以外はいたって普通の部屋でしたね((笑)
付き添いのご家族等がいる場合はいいと思います。

昼頃に入院して、その後、カテーテルを尿道に入れます(これがまた死ぬほど痛い!)
これによって、膀胱から尿を出すことができて一息つきました。

<最悪の可能性>

入院後に知ったのですが、今回の入院にはもう一つ意味がありました。
血液検査の内、PSAという前立腺から出る数値が異常に高かったのです。
これにより、CT-SCANの他、MRI(磁気共鳴画像診断)でより詳しく調べる必要が生じ、その日の深夜に検査となりました。

入院してやることがないとできることといったら、スマホでネットを見るくらいです。
PSAを数値と前立腺の病気の関係を調べると、僕の数値では60~70%の確率で前立腺癌とでました。

しかし、案外、まったく動揺しませんでした。
もともと、父系が癌家系で、いつか自分もなるだろうと思っていたこと、幸い前立腺癌は早期なら完治が可能なこと、そのことからこの先どうすれば最善か?とそれを考えていました。

「治療のために実家に一度帰るか?」
「いい機会だから、嫁とちゃんと籍を入れて、少なくともフィリピンにある財産は残してあげたい」
「母親には言いにくいなあ」
「会社や仕事はしまわなければいけないかな」

いろいろと頭の中でシミュレーションしました。
人生に危機が来て、自分が処理していなかったことに気づく訳ですが、僕は自分がうろたえるより次善の策を探ろうとする人間だと改めて思いました。

担当医ともその数値を元に「たぶん、癌じゃないですかね?」という会話をしましたが、医師は「MRIの結果がでないと、何もまだ言えないよ」というだけでした。

<入院生活>

入院生活は日本の病院とそれほど変わりません。
食事は一日3食。
ごはんに野菜と肉がメインでスープと果物が付きます。
味は薄味ですが、おいしかったです。
コーヒーが朝食のみでそれ以外は水だったのはちょっと辛かった。

シャワーとトイレは部屋についているので、カテーテルに慣れてきた3日目には自分でいってました。

数時間毎に尿の廃棄と点滴の交換で看護師さんがきます。
看護師というと日本ではまだまだ女性のイメージですが、フィリピンでは普通に男性の看護師さんも多かったです。
むしろ、気になったのは人によってちょっとムラがあったこと。
こちらがリクエストしたこと(水を持ってきてほしいとか、シーツを替えてとか)を忘れちゃう人もいました。
患者へのアテンションが低いことが丸わかりです。

気を付けた方がいいことは、病院内にサリサリのような売店がないことです。
僕はいきなり入院で携帯電話のチャージャーを持ってきていなかったので少し焦りました。

バッテリーが切れたらだれとも連絡ができないですから。
幸い嫁の従兄がマニラに住んでいて、フルーツと一緒に届けてくれたので助かりました。
フィリピンで欠かせないファミリーの絆!

看護師さんに聞いてみたら、彼女らもいったん勤務が始まると外には一切出られないそうです。
仕事をするか、食堂でご飯を食べるかというところでしょうか。
けっこう閉鎖的空間で不自由なので、入院が決まったら必要なものは全部持ち込む準備がお勧めです。

必要に応じて、担当医も病室に寄ってくれて、こちらの病状を確認してくれます。
セント・ルークスだからかもしれませんが、これはとても心強かったです。


<ミラクル起きる!>

当初、担当医は9/1(火)にMRIの結果を踏まえて最終診断をしましょうと話していました(8/31は祝日)
そこで、前立腺癌のステージ状況を聞くというのが僕の心構えでした。

ところが、8/31(祝)に突然担当医が若手の医師を連れてやってきました。
(あれ、今日は休みじゃないのかよ???)

いきなり来て言うには、「調子はどう?いいニュースとあまりよくないニュースがある」
(あ、そうなん?)

「いいニュースは、癌じゃありませんでした!!!!」
(ええええええ、そうなの?あの数値は何よ!!!!!!)

医師がいうにはMRIで詳しく確認したけど癌は見つからなかったそうです。
その代わり、病名は前立腺膿瘍
どうやら前立腺内に膿の溜まった袋ができ、そこから膿が漏れ出てきたようでした。
そのため、PSA数値も一時的に大きく上振れしたのだそうです。

「あまりよくないニュースはこれから1か月薬を飲んで月末再検査だぞ」
(いやもう、OKっす)

「明日朝カテーテルを抜いて、おしっこができるようだったら帰っていいよ」

こんなふうにあっさりと退院が決まったのです。

<退院と精算>

翌日9/1朝、カテーテルを抜きました。
「4時間経ってもおしっこができなかったら、またカテーテル入れるから」
といわれましたが、無事快尿。

さあ、「これで退院じゃあ」と思ったのですが、そこからが意外と長かった。
まず、だれも退院手続きに来ません(笑)
しかも、退院時刻も教えてもらえません(笑)(笑)
そうしているうちにいつものように昼食が配られて、「これじゃもう一泊するのか?」と思いました。

そこで、こちらからナースステーションに
「退院手続きお願い。先生からは帰っていいと言われたよ」
と自己申告です。
「あっそう、じゃあ手続きするわね」
と言われたのが午後1時。
そこから、診療報酬+検査費+病室代の計算が始まり、請求書が出てきたのが午後3時でした。
なお、清算にはクレジットカードが使えて、病室まで清算に来てくれます。

そして、清算後、自分で服に着替え、荷物をまとめて部屋を後にしたのでした。

実際はどうだったのかはわかりませんが、手続きが遅いと思ったら、積極的に聞いてみることですね。
フィリピンでは自分から声を掛けないと何も起こらないことが度々あります。

さすがにセント・ルークスは安くなく、各種検査・治療と5日間の入院でヨーロッパまでのビジネスクラス航空券往復くらい掛かりました。
もちろん、旅行保険があればこの大半はカバーされたと思いますが、コロナでロックダウンされた特殊な状況では文句は言えません。

むしろ、適切な治療と快適な入院生活でルークスには感謝しています。
たぶん、次になにか大病した時にもまたここを選ぶことでしょう。

<まとめ>

振り返ると2月くらいからおしっこの出が悪くなっていたので、その頃から膿が少しずつ溜まり始め、きついマッサージとストレッチでその膿瘍が破れたんだろうなあ、と今になって思っています。
調子が変わったなと思ったら早めに検診をしましょう。

フィリピンで病院に掛かる時に大切と思われることをいくつかまとめておきます。
お役に立てれば幸いです。

1)重い病気と思ったら、迷わず大病院へいく。小さな診療所だと正確に診察してもらえないこともあります。
2)受診手続きや病状の説明で日本と違って戸惑うこともあるはずです。日本語通訳のある病院がお勧めです。(ジャパニーズヘルプデスクさんはイチオシです)
3)大きい支払いはカードで大丈夫ですが、キャッシュ払いも必要なので、現金の用意を。
4)病院内に売店はないので、必要なものは持ち込みましょう。
5)旅行保険は忘れずに。
6)良い医者を信頼して治療に身を任せましょう。

日本の医療体制と健康保険は改めて世界最強だと実感しますが、海外に住めば治療には自己責任で対処しなければならないことも度々です。
そんな時にも冷静に心強く対処して行ければと思います。

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