デシマ・フェスティバル:キューバの即興詩文化

6月6日〜10日、第5回デシマ・フェスティバル(Festival de la Décima)がキューバで開催された。
フェスティバルのタイトルは、”Toda luz y toda mía”(トダ・ルス・イ・トダ・ミア)。

開催地のサンクティ・スピリトゥス県には、たくさんのデシマ作曲家や研究者が集まった。
これら参加者は、キューバの伝統音楽であるデシマの普及に携わっている人たちだ。

6日〜10日、フェスティバルには、キューバ国内外から参加者が集まった。
希望する参加者は、自身のオリジナル曲のコンテスト、デシマの朗読、即興対決、デシマの学術発表などにそれぞれ参加した。

このフェスティバルは、デシマのアーティストを一堂に介し、交流を深めることを目的としている。

イベロアメリカ・デシマ・即興詩文研究所(Centro Iberoamericano de la Décima y el Verso Improvisado)の所長、
ルイス・パス(Luis Paz)さんは、フェスティバル開催の目的をそう語る。

イベント参加者は、キューバの農村部で盛んなデシマに関する理論やスキルの継承に強い意欲を示している。
デシマには、真面目な歌詞もあるが、ユーモアに富んだ歌詞も存在する。

今回のフェスティバルでは、次世代の若者向けのワークショップ、
デシマに造詣の深い作家、パフォーマーの横のつながりを深めるイベントも行われた。

2010年9月、設立10周年を迎えた、デシマ研究所(略称:CIDVI)。
デシマ普及活動の一環として、次世代の若者の即興能力を呼び覚ますことに特化したワークショップを行なっている。

以前は、即興能力は生まれつき才能がある人間にしかできないものと決めつけられていた。

しかし、アレクシス・ディアス・ピミエンタ(Alexis Díaz Pimienta)さんが、
体系的な理論に沿って教われば、誰でも即興を身につけられる可能性があると説いた。

アレクシスさんの理論が、キューバの高等芸術学院(Instituto Superior de Arte)に認められたことがきっかけで、
デシマ研究所は設立に至る。


他のラテンアメリカ諸国にもデシマの愛好者がいる。

初めて生でキューバ人歌手の即興を見たというアルゼンチンからの参加者は、
キューバ人デシマ歌手の即興能力に舌を巻いたと興奮していた。

専門家は、デシマをキューバのアイデンティティのひとつに挙げている。
キューバが国として成り立つ頃から、デシマはキューバの偉大な詩人が好んで使っていた文学表現スタイルだ。

デシマは、8音節からなる1文が10個ならぶ、スペイン語文章のスタイルだ。

日本人には、"5-7-5-7-7" に当たるものと言えば分かりやすいだろう。

スペイン語の上級者でも、デシマの歌詞の意味を捉えるのは難しい。

ただ、そんな難しいデシマは、何百年にも渡ってイノベーションが繰り返されてきた、洗練された表現なのだ。

だから、共感を呼ぶ歌を作詞したい。
そう願う人間にとっては、インスピレーションの源泉になり得ると思う。

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