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バイオグラフィーワークについて

バイオグラフィーワークは、ルドルフ・シュタイナーの考え方をもとに作られた大人のための自己教育のプログラムです。


ルドルフ・シュタイナーは、日本ではシュタイナー教育で知られていますが、彼が始めた人智学は教育、農業、建築、医療など、様々な分野に渡っています。

バイオグラフィーワークは、その中の医療分野でシュタイナーの考えを元に後継者たちが治療を目的として発展させたものです。

この様な手法が必要とされた背景として、二つの大戦を経て人々の繋がりが薄れ、周りの人を理解するのが難しくなったことや、人生の意味や生きる実感を見つけにくくなったことがあるとされています。

なんだか今の時代みたいですね。

世の中は便利になり、科学の発展により、人間は今までになく長〜い人生を送ることになっています。

日本にいる限り、(海外と比べて)比較的安全に暮らすことができ、選択肢はたくさんあるし、物質的には恵まれている。。

けれども日本人の幸福度はとても低いという話を聞いたことがあります。

どうしてでしょうか?

バイオグラフィーワークでは人生を7年周期で振り返ります。

それぞれの七年期にテーマがあります。

そのテーマに対し、自分の人生のどの様な場面が思い出されるのか、粘土や水彩などの芸術的手法を使いながら振り返っていきます。

最初の七年期は0〜7歳ですから、なかなか思い出せないと言うこともよくあります。

それでも「描いているうちに思い出してきた」とか、「忘れていた記憶が、次々と出てきた」と言うことがよくあります。

または、私がそうだったのですが「あまり覚えてない」ということもあります。

七年期によって、クレヨン、水彩、粘土など場面を再現する素材を変えます。

粘土は特に記憶とつながりがあるようで、手を動かしていたら記憶が蘇ってきたという感想をよく聞きます。

面白いですね。

グループでシェアをする。

こうやって場面を再現した後、思い出した場面について2〜3人のグループでシェアをします。

バイオグラフィーワークの形には様々あり、海外ではグループワークではない個人セッションが盛んに行われているところもある様ですが、日本で私たちはグループワークを用いています。

グループワークの体験を何度も積み重ねていくと、グループでのシェアがワークの体験を豊かなものにしていることを実感します。

記憶を言語化することも大事なプロセスで、ぼんやりとしていたものに輪郭ができる様な感覚を覚えます。

また、周りの人の話に耳を傾けていると、全く違う場所で、全く違う時を生きてきたはずの隣の参加者の言葉に不思議と親近感を覚えることがあります。

逆に、他の参加者とは全く違う自分の人生にしかない特徴を見つけることがあるかも知れません。

これらの体験は1人でのワークでは決して得られないものです。

シェアのルール

シェアが豊かな体験となる様、グループシェアの場は安心した場である必要があります。

話し手は無理せず話せることだけを話し、聴き手は話し手の言葉を判断せず、そのまま受け取る。出来るだけ反応せずに聴く。ワークで聞いたことは他言しない

。。。など、基本的なルールを確認した上でシェアをします。

これを意識して人の話を聞くと、いかに普段自分が他人の言葉にすぐに反応して、反感や共感の気持ちを持って(つまり少し色のついた眼鏡で)人の話を聴いているかと言うことに気づかされます。

反応しないで人の話を聞くと言う体験自体が面白い経験だと言う感想をよく聞きます。

「まるでドキュメンタリー映画を見ているようだ」

と表現された方がいます。確かに、そうですね。

「自分を知ることは世界を知ること、世界を知ることは自分を知ること」

これはシュタイナーの言葉ですが、バイオグラフィーワークを実践していると、この言葉の意味が実感として伝わってきます。

自分のこと、そして他人や世界のことを本当の意味で深く理解し、受け入れることができたとき、人生はより深みを増し、より豊かなものになることでしょう。

また、その様な深い理解のもと作られる人間関係は、人との繋がりが希薄になりつつある現代において、新しい社会のあり方を示唆するものに成り得るものです。




バイオグラフィーワークの連続講座を開催しています。
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。


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